第3話 お風呂入ろ
「お風呂沸いたよー。冷めないうちに入っておいでー」
「ちょっと良い入浴剤も入れておいたから。……ん? そんなのどこにあったんだって? ここに来る前に雑貨屋さんで買ってきたんだ~。いつもお世話になってるから、プチギフトってことで!」
「香りはラベンダーだよ。よーく眠れるようになるんだってー」
「……ん? 一緒に入ろうって? もうっ、何言ってんの? そんなの絶対無理だから! 恥ずかしいもん。却下です!」
「何をいまさらって? うー……それはそうかもしれないけどさー、やっぱり明るい所だと恥ずかしいじゃん……。私、あんまりスタイル良くないし……」
「……そんなの気にしなくていいって? 気にするよっ! 好きな人の前では綺麗でいたいじゃん!」
「とにかく、一緒に入るのは駄目です! 一人で入ってください!」
「もーっ、そんな顔しないでよー。無理なものは無理だもん」
「……うーん、しょうがないなぁ。じゃあこうしよう。頭洗ってあげるから、それで許して?」
◆
(シャワーの音)
「入るよー? いいー?」
(浴室の扉が開く音)
「ううー……なんか恥ずかしい。直視できない……」
「ん? ああ、この服? Tシャツ借りた。そのままだと濡れちゃいそうだったから」
「そう、彼Tシャツ。どう? 萌える?」
「私、背ちっちゃいからさ、ワンピースみたいになっちゃうね。ちょっと丈は短いけど」
「……って、ねーえっ! 裾
「もーっ、そういうことするなら頭洗ってあげないよ? ん? もうしませんって? 約束だよ?」
「はい、頭洗うから前向いてー。後ろからシャワーで流していくねー」
(シャワーで流す音)
「最初にお湯で予洗いすると、シャンプーの泡立ちが良くなるんだってー。頭皮までしっかり流していくねー」
(シャワーで流す音)
「よーく濡らしてー。……これくらいで大丈夫かな? そしたらシャンプーで洗っていくねー」
「あ、このシャンプー私も好きー。いい匂いだよねー。私も同じの使ってるよ。お揃いだねー」
(シャンプーのボトルを押す音)
「はーい、じゃあ失礼しまーす。ごしごし洗っていくねー」
(シャコシャコと頭を洗う音)
「指の腹でごしごしごしー……」
「力加減大丈夫? もっと強くしてとか要望があったら遠慮せずに言ってね」
「ごしごしごしー……」
「どうかな? 気持ちいい?」
(シャコシャコと頭を洗う音)
「耳の後ろもごしごしごしー……」
「痒いところはありますかー?」
(シャコシャコと頭を洗う音)
「ここ? 気持ちいい?」
(シャコシャコと頭を洗う音)
「あ、この体勢だとさ、ヨシヨシし放題だね。シャンプーしながらヨシヨシしてあげる」
「ヨシヨシ、いい子、いい子」
(頭を撫でる音)
「大丈夫、大丈夫」
(頭を撫でる音)
「あんまりさ、自分のことを虐めないであげてね?」
「たまにはさ、甘えたり休んだりしても良いと思うよ? だってずっとは頑張れないもん」
「頑張ってる時も、そうじゃない時も、傍に居るから安心して?」
「ヨシヨシ、大丈夫だよー」
「そろそろシャンプー流そうか。泡が入らないように目、瞑っててね」
(シャワーの音)
「大好き」(耳元で囁く)
「ふふっ、びっくりした? 今、身体びくんってなったね」
「急に好きとか言われてびっくりした? ドキッとした? それなら作戦成功だぁ」
「……え? 仕返しだって? どゆこと? ちょっと待って!」
「やだやだっ! シャワーかけてこないでよ! Tシャツびしょびしょになっちゃうじゃん!」
「ほらー……もう、びしょびしょだよー。着替えないとー……」
「もう、おしまい、おしまいっ! 私、出るからねっ」
(浴室の扉を開ける音)
「あ、そうだ。お風呂出て、髪乾かしたら、マッサージしてあげる」
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