第2話 ご飯食べよ

「今日は私がご飯作ってあげるね! 頑張って美味しいの作るから!」


「……ん? 食欲ない?」


「えー……落ち込んだ時って食欲湧かないけどさー、何も食べないっていうのは心配だなぁー……。ご飯食べないと元気出ないよー?」


「うーん……それじゃあ、とりあえず作っておくから、食べたくなったら食べて? それならいいでしょ?」


「……え? 料理できるのかって? 失礼だなー、それくらいできるよ! 私これでも、料理得意なんだよ?」


「あー、疑ってるでしょー。よーし、じゃあ今日は私の料理の腕前を見せてあげよう!」


(キッチンに移動する音)


「何を作ろうかなー。冷蔵庫開けるよー」


(冷蔵庫を開ける音)


「えーっと、どれどれ~。玉ねぎとピーマン、ウインナー、卵、冷凍ご飯もあるね。この材料ならオムライスが作れそう! それでいい?」


「うん、じゃあオムライスに決まりね。手、洗ってくるー」


(洗面所に向かう音)



「よし、準備オッケー。引き出しに入ってたエプロン借りるねー。そう、いつも着てるベージュのやつ。ふふっ、私が着るとカフェ店員みたいだねー」


(ガチャガチャと調理器具を出す音)


「じゃあ作るねー。最初は野菜から切っていこう」


「玉ねぎを縦半分に切ってー、横に切り込みを入れてから、みじん切りにしてー」(歌うように)


(シャク、シャクと玉ねぎを切る音)


「あ~、やだっ。玉ねぎが目にしみるっ! うう……涙出てきた。ティッシュ! ティッシュ取って~」


(ティッシュを取る音)


「ありがとう。……あー、だんだん収まってきた」


「ん? 心配だから後ろで見てるって? 平気だって。手、切ったりしないよ~。どんだけ信用されてないの、私? もーっ!」


「ほら、ちゃんと包丁握れているでしょ? 大丈夫だから」


(シャク、シャクと玉ねぎを切る音)


「はい。玉ねぎはこれでオッケー」


「次はピーマンを縦半分に切ってから、タネを取ってみじん切りにして~」(歌うように)


(トントンとピーマンをみじん切りにする音)


「そういえばさ、私昔はピーマン嫌いだったけど、今は普通に食べられるようになった。……ん? 一緒? 偉いじゃん。ピーマン食べられるようになって」


「ヨシヨシ、いい子、いい子」


「ふふっ、手が離せないからエアヨシヨシ。今はこれで我慢して?」


(ピーマンをみじん切りにする音)


「よし、ピーマンもオッケー」


「次はウインナーを一口大に切って~」(歌うように)


(トントンとウインナーを切る音)


「おっけー! 食材を切り終わったら、フライパンで炒めよう。今のうちに冷凍ご飯をチンしてもらえるかな?」


(ガスコンロに火をつける音)


「油をひいてー、玉ねぎ、ピーマン、ウインナーを入れて~」(歌うように)


(ジューッとフライパンで焼く音)


「塩コショウして、よーく炒めましょ~」(歌うように)


(ジュ―ッと焼く音)


「玉ねぎの焼けるいい匂い~。……ん? 音と匂いで食欲湧いてきた? なら良かったぁ。もうちょっと待っててね~」


「ご飯も解凍できた? ちょうだーい。あとケチャップもー」


「玉ねぎが透き通るまで炒めたら、ご飯とケチャップを入れて~」(歌うように)


(ジュ―ッと焼く音)


「うん、いい感じ。味見してみよっか」


「まだ熱いかな? ふー、ふー……。大丈夫かな? はい、あーん」


「塩加減平気? 美味しい? 良かったぁ」


「そしたら卵も焼いちゃおっか」


「卵を割ってー、菜箸でよーくかき混ぜて~」(歌うように)


(卵を割る音とかき混ぜる音)


「牛乳とマヨネーズを取ってもらっていい。……ん? なんでマヨネーズって? マヨネーズ入れるとふわふわになるんだよー」


(卵を混ぜる音)


「卵はこれでおっけー。そしたら、フライパンで焼きましょう!」


(ガスコンロに火をつけて、卵をジュ―ッと入れる音)


「焦げないように中火でね~」(歌うように)


(卵がジュ―ッと焼ける音)


「固まってきた。これでよしっと。そしたら卵の中心にケチャップライスを乗せて、そーっと包んでー」


「あー、怖い怖い! 破けないで~。うー……よしっ! 綺麗に包めた! 私天才! お皿に盛るねー」


「ん? ヨシヨシ、いい子、いい子って? もーっ、今日は私がヨシヨシする番なの! 勝手に取らないでよー」


「そうだっ! オムライスの上にケチャップでお絵描きしよ。……え? LOVEとか書かないよ~。恥ずかしいもん」


「えへへ~。何を描こうかな。あ、そうだ! ふんふんふーん♪」


「できた! 何を描いたかって? 見れば分かるじゃん。猫だよ、猫。……え? ナスカの地上絵かと思ったって? むー……それどういう意味?」


「まあ、味は美味しいはずだから、食べて、食べて! ローテーブルに運ぶねー」


(移動する音)


「隣座るね。よいしょっ」


「……ん、距離近い? だって、くっついてないとヨシヨシできないじゃん」


「ほーら、冷める前に食べて、食べて~」


(オムライスを食べる音)


「どう? ……卵がふわふわで美味しい? お店に出せるレベル? えへへ、それは褒め過ぎだよ~。でも、喜んでもらえて良かったぁ。たくさん食べてね」


「私が作ったご飯を食べてもらえるの、すっごく嬉しい。作り甲斐があるなぁ」


「リクエストがあれば何でも作るよ! カレーでも、とんかつでも、筑前煮でも。好きなの何でも作ってあげる」


「ん? 次はハンバーグが食べたい? おっけ! 次、来た時に作ってあげる!」


「ふふっ、本当に美味しそうに食べるねー。さっきまで食欲ないって言ってたのが嘘みたい」


「ヨシヨシ、いい子、いい子」


(頭を撫でる音)


「ん? 急にどうしたって? ご飯食べられて偉いねのヨシヨシ」


「そうだ、あーんで食べさせてあげよっか?」


「馬鹿にしてないって~! 今日はいっぱい甘やかしてあげる日だからいいじゃん」


「え? させてくれるの? やった!」


「はい、あーん。……ふふっ、餌付けしてるみたいで可愛い。ヨシヨシ。よく食べられました」


「美味しそうに食べてるの見てたらお腹空いてきちゃった。私も食ーべよっと」


「ご飯食べ終わったらさ、お風呂入っておいでよ。ゆっくり湯舟に浸かったら、疲れも取れるよ」

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