落ち込んだ時にひたすらヨシヨシしてくれる年下彼女が尊いんですけど。

南 コウ

第1話 頭撫でてヨシヨシしてあげる

(インターフォンが鳴る音、数秒後に玄関の扉が開く音)


「お邪魔しまーす。鍵開いてたから上がるよー? ……あれ、返事がないや。まあ、いっか、上がっちゃおう」


(靴を脱いで廊下を歩く音)


「おーい、寝てるのー? ドア開けるよー?」


(部屋の扉を開ける音)


「あ、なーんだ、ちゃーんといるじゃん。留守だったらどうしようかと思ったー」


「ねー、着替えもしないで、ベッドで横になってたらシワになっちゃうよー? いいのー?」


「……んー? もしかして寝てる? おーい、背中つんつん」


「あ、起きてた。くすぐったいからやめてって? ごめん、ごめん」


「ベッドに座るよー。よいしょっ」


(ベッドの上に腰掛ける音)


「急に『会いたい』なんて連絡来たからびっくりしたよ。珍しいね、そういうこと言うの」


「……んー? 全然迷惑じゃないよ。むしろ嬉しい。私も会いたかったから」


「……あれ? もしかして元気ない? 何かやなことあった?」


「大丈夫って……そんな風には見えないけどなー。……んー? そりゃあ分かるよ。好きな人が落ち込んでたらさ」


「やっぱり何かあったんだー。どうしたの? 私で良かったら話聞くよ?」


(数秒の沈黙)


「あー……やっぱ話さなくていいや。私じゃ気の利いたアドバイスとかできそうにないし……」


「そうだ! その代わりイイコトしてあげる。膝の上に頭乗せて」


(膝を叩く音)


「……何って? ふふふっ、頭撫でてヨシヨシしてあげる」


「恥ずかしがらなくてもいいよー。いつもは私が甘やかされているから、今日はお返し」


「ほーら、こっちおいでよー。そんな離れていたら頭撫でられないじゃん」


「年下に甘えるのは恥ずかしい? そんなの気にしなくていいのにー。落ち込んだ時は、甘えたっていいんだよ? 私、彼女なんだし」


「はい、膝に頭乗せて。遠慮しなくていいよ」


(ベッドが軋む音と、衣擦れの音)


「そうそう、ゆっくり膝の上に頭乗せてー」


「ふふふっ、この位置から見下ろすのって、なんか新鮮。いつもは私が膝の上で甘えてるからさ」


「やっぱり恥ずかしい? ちょっとー……逃げようとしないでよー。恥ずかしかったら、目瞑ってていいからさ」


「うん、そうそう。それじゃあ、頭触るよ? いい?」


「失礼しまーす」


(頭を撫でる音)


「ヨシヨシ、いい子、いい子」


(頭を撫でる音)


「大丈夫、大丈夫」


「……え? 馬鹿にしてるだろって? そんなことないよー」


「いつも頑張ってるんだから、今日くらい甘えたっていいじゃん。たくさん頑張っている分、今日はたくさんヨシヨシして褒めてあげる。たまにはそういう日があっても良いでしょ?」


「……え? 全然頑張ってないって? そんなことないと思うけどなぁー……」


そばで見てたから分かるもん。いつも頑張ってること。それを見て、凄いなー、私も見習わないとなーって思ってたんだよ?」


「上手くいかないこともあるけどさ、その頑張りを見ている人は私以外にもちゃんといるから」


「今日くらいはさ、やなこと全部忘れて、いっぱい甘えて? ね?」


「ヨシヨシ。いい子、いい子」


(頭を撫でる音)


「大丈夫、大丈夫」


(頭を撫でる音)


「いつも頑張ってて偉いね」


「……ん? カッコ悪いとこ見せてごめんって? そんなの気にしないでよ。むしろ嬉しいんだよ? 信頼されてるみたいで」


「落ち込んだ時はいつでも頼ってね。いっぱいヨシヨシしてあげるから」


「ヨシヨシ。いい子、いい子」


(頭を撫でる音)


「大丈夫、大丈夫」


(頭を撫でる音)


「私はいつでも味方だからね」


「ん? ちょっと元気出た? なら良かったぁ。でも、まだ足りないんじゃない?」


「今日はいっぱい甘やかしてあげるから。ヨシヨシお家デートだよ!」


「そうだっ! お腹空いたでしょ? 今日は私がご飯作ってあげる」

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