第64話 三学期は勝負時


 三学期に入って二週が過ぎた。皆がピリピリしているのが分かる。塾も大学共通試験対策一色になっている。


 そして一月の第三週の土日に大学共通テストが有った。前から準備をしていたとはいえ、大変な量だ。


 準備していた解き方に沿って解答したけど一問当たりに使える時間は少ない。それでも全問解答した。ちょっと自信のない所も有ったけど。


 そんな感じで二日間をやり終えた時には体も頭もバテバテだった。幸いというか俺の受けた試験会場に知って人は誰も居なかった。居たとしても余裕が無かったんだろう。


 家に帰るとお母さんが

「和樹、お疲れ様。どうだった?」

「量は多いし、問題は難しいし大変だったよ。でも全問解答した」

「そう、それは良かったわ。今日は頭の疲れを取る夕飯用意するから」

「ありがとう、お母さん」


 俺は二階の自分の部屋に行ってバッグを一度置くと一階の洗面所で手洗いをした。鏡を見ると結構疲れた顔をしている。自分で笑ってしまった。



 翌日は、学校で自己採点が有った。流石のこのクラスでも悲鳴が聞こえたり笑っている声が聞こえる。


 ちらりと須藤さんを見るとまずまずの顔だ。浅井さんの方を見ると難しい顔をしている。良くなかったのかな?


 俺は、全教科八十パーセント以上の正答だからまずまずと行った所だ。そんな感じでホッとしていると須藤さんが声を掛けて来た。


「東雲君、どうだった」

「まあまあです」

「まあまあか、という事は良く出来たって事?」

「だからまあまあです」

「教えてよ。私のも教えるから」

「うーん、言わないで下さいよ」


 そう言って彼女の耳の傍で小声で言ったら、何故か彼女の顔が赤くなっている。どうしたんだ。


 東雲君が私の耳元で小声で話してくれている。彼の息遣いが耳に入って来て…。悶え死にそう…。

 聞き終わると一度机に顔を伏せてしまった。


「須藤さん?」

 何故か、俺が出来を教えたら顔を赤くして机に伏せてしまった。


 俺の息臭かったのかな?少ししてから起き上がって、今度は彼女が俺の耳元で

「平均で七十パーセント位」


 彼女が顔を赤くした理由が分かった。彼女の息遣いが耳の中をくすぐるんだ。俺もそうだった。


「良いじゃないですか」

「東雲君の方がいいよ」


 そんな事言っていると神林の前座る加藤さんが

「あーっ、また京子だけ狡いー。後で教えなさいよ」

「教えないって約束したから駄目」

「ふふっ、今の内よ京子」


「須藤さん、約束守って下さいね」

「うん!」


 本当かな。まあこの三人なら良いか。それから神林、小岩井さん、堀川とも自分達の出来具合を話した。


 みんなそれなりの出来のようだ。小岩井さんが

「佳織、どうだった?」

「うん、まあまあ良かったかな」

「そう、なら大丈夫そうね。あそこはこの成績も評価するからね」

「うん」


 花蓮が、声を掛けてくれた。多分東雲君と自分達の話に私を入れようとしてくれている。でも東雲君は無反応。


 左隣の須藤さん達とはあんなに明るい顔で楽しそうに話をしているのに、右隣りの私とは全然話してくれない。

 

 私が悪いのは分かっている。でも…。やっぱり寂しい。でもこの出来なら彼と同じ大学に行けそう。そうすれば。




 次の日曜日、この学校の入学者選抜試験が有った。俺と浅井さんは、その手伝いで学校に来ていた。


 メアリーには二週連続、テレビ電話出来ないと怒るとじゃあ土曜日でも良いと言われて、結局土曜の午後七時、向こうだと午前六時位だけど一時間だけ話した。


 そして来週は絶対に日曜日ゆっくり話すからと約束させられた。入学試験が近くなったけど仕方ない。



 この私立菅原学院高校は、都内でも有数の進学校だ。それだけに頭の良さそうな中学生が来ている。


 俺は、昇降口に立って教室の案内をした。彼女は補助試験官として教室の後ろに立っているはずだ。


 昼食は学校が用意してくれた。当然浅井さんと一緒だったけど、他のクラスからも手伝いが出ているので、特に気を遣う事は無かった。

 

 俺は午後からは補助試験官として教室の後ろに立っている。俺は転入試験は受けたがこういう形での入試を受けた事が無いので、こんな感じでやったんだとちょっと感心しながら入試を解いている中学生を見ていた。


 最後のチャイムが鳴って前に立っている試験監督の先生が、

「最後に名前と受験番号が書いてあるかもう一度確認して下さい」


 そう言って終りになった。俺は、受験生が誰も居なくなった教室で解答用紙を試験官監督の先生と集めて、俺が集めた分を先生に渡すと


「東雲君、今日はご苦労様でした。大学入試も頑張ってね」

「ありがとうございます」


 先生は1Aの時の担任だった御子柴先生。いつもながら綺麗な先生だ。ちょっと恥ずかしくなってしまった。



 全てが終わって、他の先生達からも俺を言われて帰宅になった。浅井さんが何か言いたそうだったけど。こちらからはあえて声は掛けなかった。



 

 そして帝都大学の入試、二日前に試験会場までの経路確認と所要時間の確認の為に受験時間と同じ時間に電車で行って見ると想像以上に電車が混んでいる。


 自宅からは乗り継ぎも含めた安全マージンを考慮すると結構早く出ないといけない事も分かった。


 やっぱり確かめておいて良かった。試験会場の予定場所には他の受験生らしき人も結構いて…あれ、須藤さん達だ。あっ、見つかった。


「東雲君、君も経路確認?」

「ああ、確かめに来て良かったよ。思ったり乗換えとかに時間が掛かる。空いている時とは全然違う感じ」

「そうだよね。私達も同じ感じ」

「ところで須藤さん達もここ受けるの?」

「うん、大学共通テストの結果で先生と話したら、行けるんじゃないって言っていたから。勿論文系だけど」

「そうか、お互い頑張ろうか」

「「「うん!」」」


 そうは言ったもののこの子達が大学に入ったら全く知らない人達と新しい人間関係を作るって構想が…。まあ、キャンパス広いし問題ないか。一、二年次は教養学部だけど大丈夫だろう。


 そして二日間の大学入学試験が行われた。


―――――

次はエピローグです。

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。


次作品を投稿を始めています。本作品同様読んで頂ければ幸いです。

「女の子救ったからって恋愛出来る訳じゃない」

https://kakuyomu.jp/works/16818093083728472736

宜しくお願いします

  

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