第63話 冬休みは静かに過ぎて行く
俺は、浅井さんから貰ったクリスマスプレゼントを開けていなかった。箱の中に何が入っているのか分からないけど、開けない訳にはいかないだろう。
机の上に置いてある箱を包んでいる可愛いリボンを解いて、包装紙を開くと素敵なピンク色の可愛い箱が出て来た。
何だろうと思って開けて見ると、えっ!どういう事なんだ?
中に入っていたのは…。台座に乗った綺麗なクリスタルで作られた桔梗(ききょう)の花だった。
どう言う意味だ。彼女の事だ。多分花言葉を意味しているのだろうと思って調べて見ると
『花言葉の「永遠の愛」や「誠実」は、キキョウ《桔梗》が恋人の為に一生涯、ただ待ち続けた若い娘であったという物語に由来』と書いてあった。
俺を一生待ち続けるというのか。俺は既にメアリーとエンゲージすると約束した。一生待ち続けても意味はない。
しかし、彼女はそこまで俺の事を……。どうしたものか。よく考えて対応するしかない。
翌日月曜日。一人で学校に登校した。教室に入って席に着くと神林達や須藤さん達から朝の挨拶をした。そして浅井さんにも
「おはようございます。浅井さん」
「おはようございます。東雲君」
彼女はちょっとだけ俺を見つめて微笑んだ後、問題集に目を向けた。大学共通テストまで時間はない。皆も同じ雰囲気だ。
この日は、特に何事も無く終わった。塾も正月特訓とかがある所為か、クリスマスの所為かは分からないが休み期間になっている。
明日は大掃除、そして今週水曜日が終業式だ。これで今年も終わり。これなら静かに過ごせるだろう。
東雲君は私のクリスマスプレゼントを当日開けてくれなかった。でも日曜日は開けてくれると思っていた。
そして月曜日何らかの対応…断わる、勝手にしろ、待ってみればとか色々考えたけど、何かしらの返事をくれると思っていた。結局してくれたのは朝の挨拶だけ。
対応する価値も無いという事のなのかしら。でもあれは大学卒業そしてそれ以降も有効な気持ち。だから待つしかない。
もうこれ以上こちらから何か言う事はしない。今迄の過剰反応が今を作ってしまった以上、その冷却には時間が必要。
花蓮と話した次の日から私は、東雲君から一歩引いた行動をとっていた。そしてクリスマスパーティのチャンスがあった。でも直ぐには行動しない。
私の気持ちは変わらない事を彼に伝えられればいい。だからクリスタルで作られた桔梗の花をプレゼントした。
そして彼は残りの時間、クラス委員として笑顔でやって行こうと言ってくれた。大丈夫。時間が解決してくれるはず。
今度、話しかけるとしたら一通りの試験が終わった後だろう。その時には彼の心の負担も軽くなっているはず。私も同じだ。
終業式があり二学期が終わった。家に帰ると昼食を摂ってから勉強した。今年最後の日曜日の朝もメアリーからテレビ電話が有った。
先週の話で気持ちが落ち着いたのか、少し先の話もした。俺も落ち着いている。年末年始は塾で勉強、新年の気分なったのは、元旦のちょっとだけだった。
正月特訓後も家でずっと勉強。朝午前六時に起きて勉強開始。朝食、昼食、午後三時そして夕飯とお風呂以外は午後十時までずっと勉強した。
そんな中でも一月五日の日曜日はメアリーと話す事で気分を切り替える事が出来た。
向こうは新年は一日だけだ。どちらかと言うと十二月半ばから始まるクリスマス休暇と言われる長期休暇を楽しんでいる。
話の中で一月十九日日曜日は大学共通テストが有るからテレビ電話出来ないと言ったら、何故か素直に聞いてくれた。
そしてあっという間に三学期になり今年初めての登校をすると教室の中も結構ピリピリしていた。
いつものメンバーも簡単に挨拶しただけで皆机に向かっている。このクラスはこの学校でもトップの成績を持っている人達だ。やはり第一志望校合格が最優先なのだろう。
私、如月若菜。もうあれ以来、和樹とは口も利いていない。男子からは何人か声を掛けられたが、この学校の生徒は私の事を知っている。
だからもうこの学校に居る間は恋愛はしない。勉強だけに打ち込んで志望大学に入って新しいキャンパスライフをするんだと決めた。
多分、和樹も同じ大学。でももう彼とは関わらないつもり。もし関わるとすれば彼から声を掛けて来た時だけど、それはあり得ない。でもそれでいい。
でも判断間違えたな。後藤と付き合っている事をはっきり言った上で円満解消すれば、今頃和樹と仲良く出来ていたかもしれないのに。
私、上条佐那。高校卒業したら和樹と会う事はないだろう。私は彼と同じ大学に行くだけの学力は無い。
お琴は続けている。喜之助とは別れたけど、お母さん曰く、それがお琴を止める理由にならないと言われた。
週一回のお琴も受験が終わるまではお休みにしている。だから喜之助と会う事もない。もう彼はこちらの大学ではなく地元の大学に行くだろう。
そして私は都内の私学に行く。勿論狙っているのは有名私立。私はまだ十八だ。まだいくらでもやり直せる。
和樹とは一時とはいえ、楽しい時間を過ごした。和樹から振られた後、私が彼に復縁を迫る度に浅井さんが異常に反応した。
何故だか理由は分からないけど、あの人も和樹を好きだったんだろう。でも馬鹿な人。普段の冷静さを保っていれば、今頃和樹と付き合えていたかも知れないのに。
あの人の今後の弱点になるのは見えている。人間夢中になると何も見えなくなってしまうからだ。
まだ和樹を追いかけているみたいだけど、彼は彼女を相手にしていない。見ていれば分かる。あんなに過剰反応した所為だ。ちょっとざまあみろ気分。
男女は打算的でいいんだよ。いくら燃えても、残りかすに二人を繋ぎとめる物が残っている位が丁度良い。
燃えすぎて残りかすに何も無くなってしまっては元も子もない。燃えるのも計算の内にしないといけないんだ。
もうすぐ、大学共通テスト。この結果次第では面白い事が起きるかも。
―――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
本日より次作品を投稿を始めました。本作品同様読んで頂ければ幸いです。
「女の子救ったからって恋愛出来る訳じゃない」
https://kakuyomu.jp/works/16818093083728472736
宜しくお願いします
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