第60話 十二月は大切な季節
学校も後二週間と少しで二学期が終わってしまう。いよいよメアリーとの関係をはっきりする時が来た。
俺は、両親がいる日に俺の考えを話した。
「お父さん、お母さん。俺はメアリーとエンゲージする。彼女はとても可愛いし、明るくて活動的で、ちょっと我儘だけど、俺はそういう所が大好きなんだ。
家事は出来るかって彼女に聞いたら今は全然出来ないけど大学に居る間に覚えると言って来た。
ちょっと笑いそうになったけど、出来なかったら二人でやって行けばいいと思っているし、こっちに来ている間にお母さんから料理を教えて貰う時間もあると思っているから。
後、マリッジは俺が彼女を一人で養えると判断した時だともはっきり言うつもり。どうかな」
「和樹、エンゲージメントする事の意味は簡単じゃないぞ。メアリーちゃんに対する責任もお友達や恋人レベルではない。将来を正式に約束した関係になるという事だ。意味が分かるか?」
「俺のメアリー以外の異性に対する行動も制限されるという事?」
「そうだ、大学に入れば、新しい環境の中で新しい人間関係が生まれる。その間には当然、お前を好きになる人もお前が好きになる人も現れるかも知れない。でもそれはもう許されない。行動をとても制限されるという事だ。
お前は、さっきメアリーちゃんの事を彼女は可愛くて明るくて活動的でちょっと我儘だけど、俺はそういう所が大好きなんだと言ったけど、それは外見的な事。心の中で真に好きという訳ではない。まだ愛しているという所までまだ行っていない。
その状況の中でエンゲージするというのは、大変な心の拘束をされるという事だ。出来るのか?」
「それは…」
確かに俺は、メアリーの外見だけを見ていた。彼女の事を本当に愛しているのかと言えば、残念ながらとてもそこまで行っていない。
友達としての好きという範囲を出ていない。もし、俺が心の底から本当に愛していると思う女性が出来たら…。
「和樹、私もお父さんの考えに賛成だわ。本当に心の底から愛している。この人とならどんな所でもどんな事が有ってもずっと一緒にいられる支えられる位の気持ちが無いと駄目よ。あなたにはその気持ちが見えないわ」
「お母さん…」
「和樹、今の気持ちではお父さんもお母さんも二人のエンゲージには賛成できない。あと少しだが時間はある。よく考える事だ」
俺は自室に戻るとお父さんやお母さんから言われた事を反芻した。確かに物理的な事を気にしても、それ以前の問題として俺はメアリーを心の底から愛している、愛する事が出来るかという事だ。
そもそも俺自身が、メアリーにいつも側にいて欲しいと思っているのか。
俺の考えは好きだから一緒に居るという子供の考えだ。でもいつも一緒に居たい訳じゃない。
どうする。こんな事で俺はメアリーを愛する事が出来るのか。愛し続ける事が出来るのか。……分からない。
学校に行っても、メアリーの事が頭に浮かんでくるようになった。授業はもう午前中だけで内容も消化モードだ。でもクラス委員としての仕事はある。面倒だけど仕方ない。
最近、東雲君が悩んでいる顔をしている。私の右隣りに座っている彼は、窓の外を遠くでも見る様な目で見ている。
浅井さんとは、全くのドライな関係になった様だ。お互いがお互いに最低必要限の会話しかしなくなった。浅井さんがとても変わったからだ。はっきり言ってそんな事どうでもいいんだけど。
でもあの時の様に相談に乗ってあげるという雰囲気でもない。何か有ったのかな?もしかしてUSの友達の事?…まさかね。
メアリーとは毎週日曜日テレビ電話で話をしている。彼女は俺の事を愛していると口で言っているけど俺のどこを気に入ってそんな事言っているのだろうか。
最も今更こんな事聞くとは出来ない。それこそ形変って今直ぐここに来るとか言い出しそうだからな。
もう十二月末まで二週間を切ってしまった。
いつもの様に教室に行くと神林が
「東雲、来週の水曜日が終業式だ。今年のクリスマスイブは火曜日で皆も用事があるだろうから今度の土曜日、駅前のカラオケで午後三時から一緒にやらないか。メンバーは今の所、俺と花蓮、堀川に浅井さんだ、どうかな。もう集まるのはこれが最後になるだろうし」
えっ、私は参加するなんて言ってない。まさか花蓮が…。
あそこのカラオケ屋はあまりいい思いが無いが今度は意味が違うからな。それに来年になれは直ぐに自由登校になってしまうし。でもこの人数では。
このメンバーだと堀川が居るとは言え、浅井さんと話すきっかけが多くなる、ここは須藤さん達に参加して貰ってその機会を減らすのが得策だ。
「いいよ。参加する」
-えっ!東雲君が参加するの?!
-これは何とか参加したい。
-でも無理じゃない。あのメンバーじゃ。
彼が、参加すると言った。本当に最後のチャンスかも知れない。でも今までの事もある。断る事も出来るだろうけど…。どうしよう。
「神林、須藤さん達が良いと言ったら参加して貰っても良いか?」
「えっ、良いのか?」
「ああ。須藤さんどうかな?」
「い、い、いいに決まってます。参加します」
「私も」
「私も」
そういう事か。東雲君はあくまでも私との接触時間を少なくする方法を取るんだ。
―――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします
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