第48話 偶然とは重なるもの
次の日、俺は帝都ホテルにメアリーを迎えに行ってから深草に連れて行った。地下鉄から地上に出ると直ぐに深草寺の門がある。
門の傍には凄い数の外国人が居て日本人を探すのが大変な位だ。ここは外国でも有名だからな。
メアリーが入り口の大きな提灯を見て
『凄いなぁ、これ。日本に来る前にSNSで観光スポットとかを検索して知っていたけど本物はやっぱり全然違う』
『ああ、俺も見るのは初めてだ。とても大きいな』
『何て書いてあるの?』
『かみなりもん』
『雷?サンダーの事。じゃあここはサンダーゲートか。すっごいな。両脇にある凄い顔している奴はなんなの?』
『ふうじんとらいじんだ。この門の守り神だ』
『風と雷?ウィンドとサンダーのゴッドに守られているのか?』
何となく違う様な気もするが、俺も詳しくは分からないからそうしておくか。
二人で門をくぐるとやはり外国人だらけだ。仲見世通りと呼ばれている本堂までの道の両脇にある土産物屋に群がっている。凄い光景だ。
『カズキ、ここは日本だよね』
『俺もそう思っているんだけど』
その後もお店を見ながら本堂の近くに来ると
『カズキ、あの煙はなんだ?匂いがするけど』
『香炉と言ってお香を焚いているんだ。あの煙を体の悪い所にかけると治りが良くなると言われている』
『さすが東洋マジック!』
俺も良く分からない。それから本堂の前に行ってお参り…。
『カズキ、皆手を叩いて頭を下げているけど…』
『取敢えず真似をしておこう』
他の神社ではお参りの仕方が書いてあるが、ここは無いし、みんなばらばらだ。もっとも外国人ばかりだけど。
メアリーはおみくじという物を知らないらしく、そのまま仲見世通りの方に戻って行った。
俺もあれを引くのは好きじゃない。紙きれと言っては失礼だけど、あれを引くと精神的に左右される。
そのまま、歩いて行くと、えっ?!なんで?
前から浅井さんと友人が歩いて来た。俺達を見つけると一度止まって
「東雲君、偶然が二回も続きましたね」
「そうですか」
なるべく関わらない様にそれだけで通り過ごそうとするとメアリーが
『カズキ、紹介してよ』
えっ、なんでそんな事言うの?仕方なく
『メアリー、こちら昨日も言ったけど同じ高校の同級生の浅井佳織さん。浅井さんこちら俺のUS時代の友人でメアリー・スタンフォードさん』
『浅井です。宜しく』
『カオリ。カズキは私のステディな人よ。覚えておいて』
「「えっ?!」」
流石に俺と浅井さんが驚いた。
「東雲君、どういう事かしら?」
「いや、…あなたには関係無い事です」
「関係あるわ。私はあなたを諦めていない。だから彼女の事ははっきり説明して」
「佳織…」
隣にいる友達も驚いた顔をしている。
「説明する義務は有りません」
『カズキ、この人何言っているの?』
『気にしなくていい。メアリー行こう』
『スタンフォードさん、いずれまた会うでしょう。ではご機嫌よう』
それだけ言うと浅井さん達は本堂の方に歩いて行った。
『カズキ、私、あの子嫌い』
浅井さん、何であんな事言ったんだ。あの人がメアリーと二度と会う訳無いのに。それにしてもあの人は…。
門まで来ると
『カズキお腹空いた』
『そうだな。何を食べようか』
『昨日は蕎麦を食べたから他の物がいい』
『じゃあ、天婦羅にしてみるか。昨日も付いていたけど、また違うかもしれない』
『カズキに任せる』
スマホで近くのお店を探して行ったのだけど、昼食時間に重なった所為か結構並んでいる。お店の人に聞くと三十分位待つと言われた。それメアリーの言うと
『構わない。せっかく来たのだから。それにカズキと一緒だから大丈夫』
メアリーが俺を信頼しているのはよく分かるが、さっきのステディとはどう言う意味で言ったんだろう。浅井さんに対するカウンターワードなんだろうけど。
お陰で、浅井さんの心に火をつけた様な気がしたのは気の所為か。でも俺は、もう高校では彼女は作らない。あの人だってあれだけの器量だ。裏ではどうだか分からない。
三十分より少し並んだが、店の中に入って見るとメアリーが
『凄い。これがてんぷらの匂いなの?』
結構しっかりと店の中に匂いが付いている。しかし、ほとんどが外国人だ。店員さんも結構英語で応対している。凄いな。
店員がメニューを持って来て
『お決まりになりましたらお声がけください』
と言って店員が俺達の席を離れるとメアリーが感心して
『へーっ、やっぱり慣れているんだね』
俺とメアリーは旬の天婦羅盛り合わせのセットを頼んで食べたのだけど彼女が美味しいを連発していた。相当気に入ったみたいだ。
その後は、遊覧船で川下りをした。遊覧船の中でアイスクリームが売っている。一緒に食べながら
『ボストンとは随分景色が違う。日本というか東洋の文化というのは、西洋とは随分違うとこの二日で少し知った気がする』
『そうか、それは良かった』
『カズキ、お父さんの仕事とはいえ、あなたがボストンを離れてからとても寂しかった。だから今回はパパに行って連れて来て貰ったの。もう戻って来る事は無いの?』
メアリーの言っている事は何となく分かる。でも俺一人ではどうにもならない。
『難しいな。両親がUSに行く事は仕事では有っても、前の様に長期という事は無いだろうし』
『そう。でも大学なら。スタンフォードに一緒に行こうよ』
『今の高校はIBじゃない。だから直接受ける事は出来ない。スタンフォード行くには日本でもメジャーな大学に入ってから留学という形をとるしかない』
『それでもいい。カズキ、来て』
『メアリー…』
そんな話をしているとあっという間に降りる停泊所に着いてしまった。俺はメアリーを帝都ホテルに送って行きながら、メアリーの提案にそれも有りかと少しだけ思ったけど、両親と離れて向こうで一人暮らしはきつい。
スタンフォードさんの所にホームステイという訳にもいかない。やっぱり無理だろうと思った。
―――――
話中に記載されていますスタンフォード大学、およびスタンフォード大学病院とは何ら関係がありません。ご理解の程お願いします。ちなみに実在するこの病院はCAにあります。
次回をお楽しみに。
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