第46話 久しぶりのUSの友人
七月に入って直ぐに一学期末考査が有った。結果は俺が一位、浅井さんも同一位だ。浅井さんが俺の顔を見て何か言いたそうだったけど。佐那は三十五位だ。良く成績順位表に残れたものだ。
成績順位表が張り出された後は毎日午前授業になる。俺は一人で塾通いと自室での勉強をした。
もう行く大学も決めてある。俺と同じ大学の同じ学部に来る偶然なんて無いだろう。
大学に行ったら全く別の新しく出会った人達と新しいキャンパスライフを楽しめばいい。高校も実質十二月までだ。
私、浅井佳織。東雲君が完全に心を閉ざしてから二ヶ月が経った。口を開くのは朝の挨拶とクラス委員としての仕事の時だけ。その時も感情が全く入っていない言葉遣い。
なんとか話すきっかけを作りたくても彼が拒否している。塾に行って隣に座っても全く無反応だ。
もうすぐ夏休みになる。去年の事が本当に夢のようだ。偶然が何回も重なって楽しい日々を過ごせた。
あの時、東雲君と私は縁が有ったのかもしれない。恋の神様がチャンスをいつも差し出していてくれたのかも知れない。
でも私の思い上がりと油断が上条という女の子に彼に付け入るスキを作らせてしまった。でもそのままだったらまだチャンスが有ったのかも知れない。
しかし、あの子は別に付き合っていた男子が居た。それが今回の状況を生んだ元凶。あの女さえいなければこんな事にはならなかったのに。
夏休みに入れば、一ヶ月以上彼との接点が無くなる。もう去年の様な偶然は無いだろう。どうすればいいか全く分からない。
強いて言えば、塾の夏合宿。これは彼も申し込んでいたから知っている。でもあの女も申し込んでいた。
彼はもうあの子とよりを戻す気は無いだろうけど、あの子が何をしてくるか分からない。もうこれ以上彼の心を乱すような事はさせない。。
私、上条佐那。和樹に喜之助の事がバレて以来、口も利く事が出来なくなった。渋山の事は、運が悪いなんて思いたくない。どうやったか知らないけど絶対にあの女が仕組んだんだ。
でもそれが事実だとしても和樹のあの女に対する態度は、私の勘違いだったような気がして来た。
彼があの女も拒否しているからだ。クラス委員の仕事は一緒にやっているけど笑顔なんて全くない。機械的に処理しているだけの様な気がする。
塾であの女が彼の隣に座っても口も利いていない。もしあの二人が付き合っているとしたら分かるはずだ。
夏休み、和樹と会えるのは塾と夏合宿だけ。でも今のままでは何も解決できない。何とかしないと。
夏休みに入った。俺は去年と同じ様に夏休みの宿題を七月中に終わらせる事にした。八月一日にメアリーが来日する。二年ぶりに会う。楽しみで仕方ない。早く宿題を終わらせたい。
そして八月一日。
今、成田空港到着ロビーにいる。飛行機は午後二時半過ぎに着いたけど荷物受取や入国審査が混んでいるのか中々出て来ない。時間は午後三時を少し過ぎたところだ。
到着ロビーのドアを見ているとメアリーが出て来た。直ぐに分かった。少し背が伸びたようだ。
背中の途中まで有る綺麗な金色の髪の毛、お婆ちゃん譲りのブルーの瞳、しっかりとした体格で胸とお尻が大きくなった様だ。
もっともミドルの時はまだお互い子供だったからな。彼女のお父さんは背が高く目立つ。彼女の直ぐ傍に居た。
メアリーは俺を見つけると駆け出して、いきなり飛びついて来た。俺は飛び込んで来た彼女を体で受け止めると
『』は英語です。
『カズキー!』
『メアリー久しぶりだな。一段と綺麗になったな』
『ふふっ、嬉しい。ねえ、カズキ。身長延びてない?』
『ああ、あれから十九センチ伸びて百九十一センチになった』
『えーっ!私なんかまだ百七十五センチだよ』
『あははっ、十分大きいよ』
『カズキ、久しぶりだね。』
『スタンフォードさん、お久し振りです』
『カズキと私の仲だ。堅苦しい挨拶は抜きにしよう。それより早速、ホテルに行こうか。詳しい話はタクシーの中で話そう』
その後、俺とメアリーそれにスタンフォードさんと一緒にタクシー乗った。二人の荷物が大きかったので、大型のタクシーだ。
都内にある帝都ホテルに向かいながら
『今回は病院の理事達と日本の先進医療を視察に来た。それを娘に話したら絶対に君に会いに行くって聞かないんだ。
私は滞在期間中、視察や会議で忙しい。こっちにいる間、メアリーを頼むよ。カズキが一緒なら安心だ。
私は午前九時にはホテルを出てしまう。だからその後は娘を頼む。メアリー、午後六時にはホテルに戻りなさい。そうだカズキ、今日一緒に食事はどうかね?』
『ありがたいお誘いですが、家の都合もあるので』
『そうだな。流石に無理か。こっちにいる間にご両親とも一緒に食事をしたい。都合を聞いてくれるか?』
『分かりました』
道路は空いていて、一時間半でホテルに着いたが、時間は午後五時半近いので俺は明日、午前九時にホテルのロビーにメアリーを迎えに来る事を約束して別れた。
「ただいま」
「お帰り、和樹。メアリーちゃんとスタンフォードさん元気だった?」
「うん、思い切り元気だった。明日から一週間、メアリーと一緒に東京観光して来る」
「羨ましいわね。どこ行くの?」
「一応、スカイタワーと深草、渋山と江戸神宮、時間余ったらまた別の所考えるつもり。そうだ、スタンフォードさんが一緒に食事したいから都合教えて欲しいって」
「うーん、私はこの一週間は難しいな。急すぎるし。あなたは?」
「私は、都合つきそうだ。スタンフォードさんも仕事の都合あるだろうから先に都合を聞いてくれないか。それで調整してみる」
「分かった」
―――――
話中に記載されていますスタンフォード大学、およびスタンフォード大学病院とは何ら関係がありません。ご理解の程お願いします。ちなみに実在するこの病院はCAにあります。
次回をお楽しみに。
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感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
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