第40話 絶対に負けないもん
和樹がクラス委員長になった。そしてあの黒髪女がクラス委員。そして何かにつけて彼をクラスの仕事だと言って誘っている。
でもお昼は和樹と一緒に食べるし、登校は学校最寄り駅から一緒だ。放課後は仕方ない時がある。
大体があの女から仕事を言って来る。わざと先生から仕事を引き受けているんじゃないかと思う位。
でも毎日じゃないし、塾に行く時はこちらを優先して調整している。今日も学校の最寄り駅で待ち合わせして一緒に登校している。
「和樹、今日は塾が有るけど、明日は土曜日。朝からずっと一緒に居よう」
「うん、そうしようか」
始業式以来、佐那は相当にイライラしている。理由は単純。俺がクラス委員長として浅井さんと一緒に居る事が多いからだ。
だから明日は佐那の望む事をしてあげようと思っている。来週月曜日に模試があるが、二年までの復習レベルだろう。
学校に着いて昇降口で履き替えると教室に向かった。最近は教室に入るまで佐那が手を握って来ている。多分彼女なりの主張なんだろう。
教室に入って佐那と別れると早速、須藤さんと浅井さんが挨拶をして来た。
「おはよ、東雲君」
「おはようございます。東雲君」
「おはよう、須藤さん、浅井さん」
神林や小岩井さん、それに堀川も挨拶してくれる。しかし皆登校早いな。それとなく須藤さんに
「須藤さんって何時位に教室に来るの?」
「そうだなぁ、恵子や多佳子と一緒で三十分前には来るよ。色々やる事有るし」
「そうなんだ」
「私も三十分前には来ますよ。東雲君」
聞いていないのに浅井さんが応えて来た。
「これから一緒に来ますか?」
「一緒に?」
「はい、駅で待ち合わせして一緒に来るんです」
「いや、それは」
「ちょっと、浅井さん、何飛んでも無い事言っているのよ。和樹は私の彼よ。登校は私と一緒に決まっているでしょう」
まあ、こうなるわな。
「あら、別にいいじゃない。あなたは一人でゆっくり登校すれば。全然構いません事よ」
「何ですって!」
なんで浅井さん、こうも佐那を煽るんだ?
こんな話をしている内に予鈴がなって田村先生が入って来た。
お昼になり、佐那と一緒に学食に行って定食を食べていると
「和樹、あの黒髪女気に入らない。わざと仕事作って和樹と一緒に居る様にしているみたい。
朝だって、和樹と一緒に登校しようなんて言って来ている。頭に来る」
「そんな事は無いよ。今週は入学式も有ったし、オリエンテーションの手伝いも有ったし、仕方ないよ。朝の登校の話はあの人の冗談だって」
「それは分かるけど…」
「佐那、心配するな。俺は佐那以外見て無いから」
「そう言ってくれるのは嬉しけど、あんな事言われると悔しいよ」
一週間でこれでは本当に一年間、佐那が精神的に持つのか心配になって来る。俺が気持ちのフォローをするしかないけど。
放課後になり、俺と佐那は塾があるので直ぐに帰ろうとすると
「東雲君、田村先生から言付けです。来週月曜日は模試が有ります。テスト用紙の配布とかあるので三十分早く来て下さいという事でした」
「分かりました」
校舎を出ると
「あの女、わざと先生から仕事受けたんだ。許さない!」
「いやいや、学校でやる模試はいつもクラス委員が早めに来て先生を手伝っていたじゃないか。おかしくないよ」
「そうだっけ?」
週中の塾は午後四時半に始まって午後七時に終わる。学校が午後三時半迄なので余裕だ。早く行くと教室は開いていないので自習室で直前まで勉強してから教室に入る。
塾が終わると佐那を家まで送って行ってから自分の家に帰るんだけど
「和樹、明日は午前九時半に来れる。その時間には家族誰もいないんだ」
「分かった」
いつもより三十分早いけど仕方ない。
次の日、午前九時半少し前に行ってインターフォンを鳴らすと直ぐに玄関のドアが開いた。
「和樹、上がって」
「うん」
玄関を上がると引っ張られる様に佐那の部屋に連れて行かれて抱き着かれた。
「和樹、一杯して。私の心を安心させて。あの女の気持ち悪さを追い出して」
佐那は、積極的だった。口付けもあっちも。午前中だけで二回もしてしまった。流石に疲れた。
「どう?心安心出来た?」
「まだ、でも全然良くなった。でももう一回」
結局昼ご飯を食べずに午後二時になってしまった。
「佐那、流石に疲れたよ」
「ごめんなさい。でもあの女の事考えると悔しくって。和樹にこうされていると忘れる事が出来るから」
「そうか。佐那、浅井さんの言葉にいちいち気にしない方がいい。あの人何の目的があるのか知らないけど、意図的に佐那を煽っている感じがする。多分、佐那がそれを気にして何か失敗でもする事を狙っているんじゃないかな?」
「えっ、ほんとに。だとしたら変な事言われても適当な事言って聞き流せばいいのかな」
「当分そうしてごらん。その内諦めるかも知れない。あまりひどいなら俺から注意する」
「分かった」
それから一度起きて簡単な昼食を摂ってから、またベッドの中にいた。佐那は、肌が触れているだけでも安心すると言っていた。
次の週の金曜日、健康診断が有った。俺の身長はなんと百九十一センチになっていた。去年百八十七センチだったから一年で四センチ伸びた。もう止まるだろう。
「和樹、大きい。私なんか百五十八センチだよ」
「佐那がとても可愛く見えるからいいんだよ」
「ふふっ、そう言ってくれると嬉しい」
-あの二人ここ何処だと思っているのかしら?
-さぁ?
-ところでさぁ、私達、まだ彼居ないよね。
-まあ、ちょっと予定狂ったし。
-まさかの冗談狙ってた?
-まさかぁ。(心の声:でも何とかなると思っていたのにな)
佐那に言った言葉が功を奏したのか、今週は浅井さんから何言われても軽く受け流していた。
お陰で佐那の気持ちも落ち着いたみたいで塾に行っても集中して聞いていた。そして土曜日はいつもの事をして、日曜日は佐那は琴のお稽古に行った。これでいい。もうすぐGWだ。二人だの時間も増える。
日曜日、お琴の稽古が終わり佐那は喜之助の部屋にいた。
「佐那、GWに東京に行ってみたい。佐那案内してくれ」
「えっ?」
「なんで驚いている?」
「だって、喜之助がそんな事言うなんて思っても見なかったから」
「俺も大学は東京の大学にしようかと思っている」
「喜之助、地元の国立じゃなかったの?」
「東京の大学に行けば佐那ともっと会えるし」
「お琴の稽古は?」
「佐那と一緒に来ればいいさ」
まさか、喜之助がこんな事考えているとは。計画が狂ってしまう。何とかしないと。
―――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします
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