第39話 新学期は爽やかに始まりたい
二年生も終り春休みになった。宿題の出ない休みは良いけど、そろそろ大学受験を考えなといけない。
佐那と相談して学校の最寄り駅の傍にある桜井塾を選んだ。有名塾の系列で講師陣が全員有名国立大出身という事で人気のある塾だ。入塾試験は、俺も佐那も合格。四月から通う事にしている。
佐那とは日曜日を除いて毎日会った。学校は春休みでもお琴の稽古に春休みは無い。この頃になるとテレビ放映の事も忘れていた。
学校の時は土曜日午後する事が多かったけど、春休みという事で佐那は週中にしたいとい言って来た。勿論週一は崩さない。佐那はしたがっていたけど。
そして一学期を迎えた。始業式は入学式の一日前の月曜日。俺は三年生になった証の藍色のネクタイを着けて制服を着ると家を出た。
学校の最寄り駅で佐那と待合わせして登校する。佐那はリボンの色が変わった藍色に金色の線が入っている。
直ぐに手を繋いで来て
「和樹、いよいよ三年生だね」
「ああ、一年の九月に転入して来てあっという間に一年半が経った感じだ」
「そうかぁ、もうそんなに経つんだっけ」
そんなたわいもない話をしていると学校に着いた。昇降口で新しい上履きに履き替えて中央階段横に行くと人だかりが出来ている。新しい二年生と三年生だ。
俺達も三年生のクラス分けが張り出されている所に行くと3Aのクラスの所に名前が載っていた。
「有った。和樹と一緒だ」
「うん」
早速、3Aに行くと見知った顔が一杯いる。俺達が入って行くと早速例の三人組、須藤さん、早瀬さん、加藤さんが挨拶して来た。
「「「おはよう東雲君、上条さん」」」
「おはよう須藤さん、早瀬さん、加藤さん」
「これで三年間一緒のクラスだね。嬉しいわ」
「ああ、俺もだ」
「あっ、東雲君。そういう風に言えるようになったんだ。成長だぁ」
「そうだっけ?」
こんな話をしていると神林、小岩井さん、堀川がやって来た。
堀川が
「東雲、同じクラスになったぜ。楽しみにしているよ」
「楽しみ?」
「あはは、あそこにいる綺麗な人見て見ろ」
そっちを向くと浅井さんが俺の方を見て思い切りの笑顔になった。俺も笑顔で返すと佐那がいきなり俺の目の前に来て浅井さんが見えなくなった。
「おう、早速見れたぜ。今年一年宜しくな」
はぁ、一日目からこれかよ。
そんな話をしている内に予鈴がなった。そして女の人が入って来た。
「「「「おーっ!」」」」
男子が驚いている。肩まで有る綺麗な黒髪にフレーム無しの眼鏡をかけ、白いジャケットとタイトスカートを着ている。スタイルはもう抜群としか言いようがない。佐那も顔負けだ。
「私が今年一年間、皆さんを担当する田村洋子(たむらようこ)と言います。挨拶は後にします。体育館で始業式が始まるので全員廊下に出て下さい」
ガタガタと皆で廊下に出ようとすると浅井さんが近付いて来て
「東雲君、一年間宜しくね」
と言ってウィンクして来た。参ったな。俺も
「こちらこそ」
と返したけどそれを見た佐那が、怖い顔して
「和樹、こんな女と喋らないで早く廊下に出よう」
と言って手を引っ張られた。
ふふっ、そんな事言っているのも今の内よ上条さん。
体育館では校長先生のお話と二年生、三年生の学年担任のお話、それと生徒指導の先生からのお話が有った。勿論明日の入学式の事も。
一通りの話が終わると俺達は3Aに戻った。席に着いて待っていると少しして新しく担任になった田村先生が教室に入って来た。箱を抱えている。多分あれだな。
「皆さん、改めて挨拶しましょう。私がこの3Aの担任になりました田村洋子です。こう書きます」
黒板に向かって自分の名前を書いている。後姿も抜群だ。腰はしっかりと括れていてお尻もしっかりしている。とても魅力的な先生だ。こっちを向くと
「早速ですが、席替えをします。この箱の中に席順が書かれたカードが入っています。一年間座る場所です。気合を入れて引きましょう。では廊下側先頭から順に前に出て来て引いて下さい」
面白い事を言う先生だな。佐那が先に引いて直ぐに俺の顔を見た。そして俺の番になった。前に出て箱から一枚カードを取出して番号を見た。
うーん、中々のくじ運。窓側から二列目一番後ろだ。全員が引き終わるのを待って
「はい、皆さん引きましたね。それでは席移動して下さい」
ガタガタと皆一斉に動き出した。俺は引いた席に移動して座ると直ぐに佐那を探した。彼女は廊下側から三列目前から三番目だ。大分離れてしまった。
そして俺の左側には須藤さん
「東雲君、また隣になったね。もう君の隣にずっと居たいよ」
「あはは」
笑うしかない。
「東雲君、一年間宜しくね」
声の方、俺の右側を見るとな、なんと浅井さん。これはちょっと。
「宜しく」
更に俺の前には小岩井さん、彼女の左隣が神林で右隣りが堀川だ。そして加藤さんは神林の前、早瀬さんはちょっと離れて廊下側二列目一番後ろだ。なんか俺からすると凄い布陣だ。皆から挨拶された。
「皆さん、席に着いた所で早速クラス委員を決めましょうか。自薦他薦どちらでも良いですよ」
するといきなり浅井さんが、
「先生、クラス委員長に東雲君を推薦します。私はクラス委員に立候補します」
「「「「おおーっ!」」」」
「「「「ええーっ!」」」」
「浅井さん、なんで?」
「良いじゃないですか。成績順位でも同位の二人がやるんです。何か問題有りますか?」
「先生、クラス委員に私も立候補します」
佐那が立候補した。気持ちは分かるけど…。
「「「「おおーっ!」」」」
「「「「ええーっ!」」」」
-これは凄い事になったわ。
-真っ向から勝負ね。
-うんうん。
場所は離れても話出来るのか、この三人?
「他に立候補する人いますか?」
「先生、俺クラス委員長したくないんですけど」
「うーん、他に立候補が居なければ君にやって貰うしかないわ。決まりよ」
「先生、クラス委員長は神林が良いと思います。彼はリーダーシップに長けていますし適任です」
「東雲、俺はやらない。駄目だ」
逃げようがないのか。
「分かった」
「いないようですね。それではクラス委員に立候補している浅井さんと上条さんの投票をして頂きます。最初に浅井さんが良いと思う人……。東雲君と上条さん以外全員ね。
では、クラス委員は浅井さんに決まりました。クラス委員長の東雲君、クラス委員の浅井さん、前に出て来て挨拶をした後、他の役割も決めて下さい」
俺は、佐那の顔を見たが、泣きそうな顔をしていた。不味いな。
役割を全部決め終わると
「今日はこれで終わりです。東雲君と浅井さんは伝える事が有るので職員室迄来て下さい」
俺が、起立、礼を言って下校になった。直ぐに佐那が来て
「和樹、終わるまで教室で待っているから」
「どの位掛かるか分からないから今日は先に帰ってくれ」
「でも」
珍しく、浅井さんが何も言わない。佐那がグズっていると浅井さんが
「東雲君、早く行かないと」
「そうですね。佐那、気を付けて帰れ」
それだけ言うと俺は浅井さんと一緒に職員室に向かった。
悔しい、浅井さんにやられた。まさかこんな手で来るとは。でも和樹は絶対に渡さない。
―――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします
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