第33話 女の子の嫉妬は怖い
読者様の中にはグアムに行った事ある方もいらっしゃると思います。生徒達の行動にあれっ?て思う所が有るかもしれませんが、それについてはご配慮の程お願いします。
―――――
次の日は、バスで観光地を巡った。全クラスが一緒の行動だから観光地は俺達が着くと何処も
観光地毎に当然一時間位の自由行動の時間はある。必ず班単位で行動するのだけど…。何故か浅井さん達も同じ動きをする。ここまで来ると流石におかしいと思って神林に
「なあ、俺達の行動計画、漏れてないよな?」
「それは無いだろう。月曜日に琴吹先生に提出しただけだし。まあ先生が漏らすなんて無いと思うし」
「そうだよなぁ」
それにしても行く先々で浅井さん達が同じ動きをする。そして必ず
「ふふっ、いつも一緒ですね東雲君♡」
「そ、そうですね」
この時、神林と小岩井さんが含み笑いをしている事に気付かなかった。
そして最後の観光地に着いてバスから降りてスポット巡りをしようとした時、
「あっ、和樹」
「佐那か」
「偶然だね。やっぱり、私達繋がっているよね」
「そうだな」
そう言って、俺の腕に絡みついて来た。
言い方が何故かいつも同じ行動をとる誰かさんに当てつける様に言っている気がする。
チラッと浅井さんを見ると、えっ!こ、怖い。佐那より俺を睨んでいる。どして?
結局、俺達の班、浅井さんの班、そして佐那達の班と一緒の行動になった。本当は良くないのだろうけど、佐那が俺の腕を離さない。
「なあ、佐那。班単位の行動なんだから」
「良いじゃない。行くとこ同じでしょ」
このグラビア女。わざと見せつける様に東雲君の腕に絡みついている。彼も彼よ。スパッと腕を放せばいいのに。私がここに居ながら。許せないわ。
-あちゃー。武夫。プチ修羅場。
-ああ、声は出ていないけど、相当あの二人、戦っているな。
-東雲君、可哀そう。
聞こえてますよ。お二人さん。出来れば仲介に入って欲しいのですが。
結局、ここは三十分の自由行動だったけど、腕に伝わる佐那の柔らかい胸と背中に突き刺さる視線で何とも言えない気持ちだった。
須藤さんは、心の中で
はぁ、この旅行で東雲君と距離を縮めようとしたけど、結構厳しいなこれは。この二人の間に入って行く勇気なんかないよ。
この後、俺達が乗ったバスは午後三時半にホテルに着いた。部屋に入ると
「東雲、明日は終日自由行動だ。予定としてはホテルから出ている周回バスでアウトレットに行ったりする予定だけど、他になんかないものかな」
「うーん、本当はシューティングしたかったんだけど大人いないし、あそこは周回バスは行ってないからな」
「えっ、そんなとこあるの?」
「ああ、ここは日本じゃない。だからピストルやライフルもお金出せば撃たせてくれるんだ。でも子供だけじゃ出来ない」
「面白そうだけど、残念だな。琴吹先生一緒に行ってくれそうに無いし」
「それに行動計画表に入れて無いから許可されないよ」
「そうか」
二人で椅子に座って景色見ながらそんな話をしていると神林のスマホが震えた。
「花蓮からだ。なんだ?」
神林が出てしばらく話をしていた。そして通話状態のまま
「花蓮達が、今日の夕食は、浜辺に隣接しているレストランでトロピカルなジュースとか飲みながら食事したいそうだ」
「へぇ、俺は全然構わない」
「じゃあ、そう伝える」
小岩井さんとの話が終わると
「午後五時にロビーで全体集合が有るからそれから行きたいって」
「分かった」
そして、その夕食も…なんで浅井さん達がいるんだ。勿論うちの他の班もいるけど。ちょっとここまで来ると
「ふふっ、また会いましたね東雲君。もうここまで来ると偶然じゃなくて必然ね。私達が一緒になるのは必然よ。運命の定めだわ」
「……………」
俺はなんて返せばいいんだ。
しかし、まさかのまさかが起きた。俺達が食事を丁度始めた時、背中に痛い程の視線を浴びた。
なんと佐那達の班も来たのだ。確かにおかしくは無いのだけど。タイミングが悪かった。
「あっ、和樹だ」
「あら、上条さん。あなたの座る席は無いわ。向こうに行って下さい。東雲君と私はここで一緒に食べていますので」
完全に佐那を煽っている。この人どういうつもりだ。佐那が歯をギシギシしながら怒っている。不味い。
「佐那、仕方ないよ。班の人達と一緒に食べてくれ」
「でも和樹…」
佐那と同じ班の子が
「上条さん、あそこの席が空いている。結構一杯だから早く座ろう」
「…うん、分かった」
あの黒髪女、私の和樹に色目なんか使って。許さない。
「上条さん、早く」
「あっ、ごめん」
堀川が
「すげえ、東雲って一緒に居て飽きないな。俺、来年絶対に東雲と同じクラスになる」
「だろう。堀川」
「神林、堀川。俺の身にもなってみろ」
「「なれないから」」
「「「「「あははっ!」」」」」
一緒に座っている他の人達が皆で笑っている。全く!
浅井さんの挑発と佐那の怒りで賑やかだったけど、その後は楽しい夕食になった。
色とりどりのトロピカルドリンクを飲みながら色々な種類の大きなソーセージやステーキやハンバーグを食べる。
皆で別々のものを注文してシェアしたから色々な物が食べられて楽しかった。水平線に沈む夕日を見ながらの食事は最高の雰囲気だ。浅井さんが、
「綺麗ですね。またこのサンセットを二人で見に来たいですね」
なんて事言って俺の背中に痛い視線が飛んで来た。
そして三日目。今日はホテル前から出るアウトレットやお店を回る周回バスに乗ってお土産や自分が欲しい物を買う予定だ。
そして午前十時にロビーで女子達と待ち合わせしていると何故か小岩井さん達と一緒に浅井さん達が降りて来た。どして?
「あら、また東雲君と一緒なんて。私達、もう運命としか考えられないわ」
「……………」
またまた、返す言葉が無い。
バスに乗ったのは良いけど、俺の隣は何故か別班である浅井さんが横に座った。ここまで来ると計画的としか言いようがない。偶然を通り越している。
しかし、誰だ、俺達の行動計画をこの人にもら…。あっ、忘れてた。小岩井さんは確か浅井さんと幼馴染で家が傍。
なんて事だ。気が付かなかった。しかし、流石にもう遅いか。後ろに座る神林と小岩井さんを見ると、何故か含み笑いをしながら視線を外された。間違いない。
俺は佐那という彼女が居るんだぞ。もう。
アウトレットは広いけど必ず班単位の行動だ。ここのアウトレットは大きくて三階建て。二階部分には有名なデパートにも繋がっている。一階は主に飲食店が占めている。
俺は、両親へのお土産と佐那への可愛いポシェットを買うつもりだ。二時間位かけてゆっくりと回ってそれぞれが別々のショップで好きな物を買い終わると午後十二時半。
「そろそろ、お昼にするか」
「そうだな」
「堀川たちも一緒で良いか」
「勿論だ」
一階に降りると
「今日は何食べる?」
「現地料理とか」
グアムの現地料理って確か
「それは止めた方がいい。グアムの現地料理はフルーツこうもりのスープだぞ」
「「「えっ!」」」
「お、おれ、ホットドッグ」
現地料理を言い出した堀川は流石に引いたようだ。あれは見た目も結構インパクトがある。
ホットドッグとかハンバーグとか売っているお店に入ると…なんと佐那の班が居た。勿論うちの他の生徒もいたけど。
俺はもうこれは佐那と浅井さんの運命だと思った。もう逃げだしたい。
「あっ、和樹」
「佐那」
「あら、上条さん達もここでお食事ですか。では私達は、こちらのテーブルに座りましょうか」
完全に佐那の視線を意識した言葉だ。
「和樹、こっちのテーブルで食べようよ」
「駄目です。全て班単位の行動です」
「だったら、あんただって和樹と違うテーブルに座りなさいよ」
「それは関係ありません。運命で一緒ですから」
「何ですって!」
「おい、二人共止めなさい。他の客に迷惑だ」
「「ごめんなさい」」
「なあ、神林。自由行動の報告書にこの二人の事書くか?」
「いや、止めとくよ。この二人から要らぬ恨みを買いたくない」
「そ、そうだな」
「何の話をしているのかしら神林君、堀川君」
「「い、いえ。何にも」」
「そう、良かったわ」
なんか今回の佳織怖い。好きな男は絶対に渡さないというオーラ全開だわ。でも今、東雲君は上条さんと付き合っている。どうなることやら。
修羅場の昼食?を食べ終わった後は、周回バスで他のお店にも行ったんだけど、本当に偶然らしく、佐那達の班、浅井さん達の班、俺達の班は一緒の行動をすることになった。どんな修羅場かはもう皆さんの想像で。
そして俺達は、次の朝ちょっと早い時間だったけど無事事故など無くグアムの空港から羽田に飛び立った。
とても思い出深い修学旅行になったよ。
―――――
グアムの現地料理と言うとチャモロ料理が一般的ですが、フルーツこうもりの料理もあります。まあ、食べるか食べないかはググってみてください。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします
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