第34話 落着かない休日


 私、浅井佳織。修学旅行では、花蓮のお陰で東雲君とほぼ一日中一緒に居る事が出来た。彼女に感謝です。そして色々な意味で彼と仲を深められた。


 上条佐那は、思慮が浅く、思考が短絡的だと良く分かった。あんなグラビア女がいつまでも東雲君の傍に居れる訳がない。こちらから無理をしなくてもいずれ破局する。それまで待てばいい。


 だけど、色々な場面で私とグラビア女のどちらが東雲君に相応しいかしっかりと見せつけて彼女の短絡的思考を煽るのもいいかもしれない。




 私、上条佐那。修学旅行では、どうやったのか知らないけどあの黒髪女がやたらと和樹の班と一緒に居たらしい。


 私が居ない間に和樹に色目を使って気を引こうとしていたんだ。彼は優しいから仕方なく、本当ーに仕方なく紳士的に対応したんだろうけど、本当に頭に来る。


 私が和樹の正カノだって知っていて彼に色目を使うなんて。最低な女だ。絶対に渡すものか。


 和樹だってあんな女嫌いに決まっている。グアムでは内心では嫌でも我慢していたんだ。


 こんな事考えていたら和樹に会いたくなった。まだお昼だ。今からでも十分に会える。連絡してみよう。



 修学旅行の次の日は振替休日となり休みだ。俺は一日中家でのんびりしていようと思っていたが、昼位になりスマホが震えた。画面を見ると佐那からだ。


『はい』

『私、佐那。今何している?』

『のんびり休んでいる』

『ねえ、会わない』

『今日?』

『うん、駄目?』


 流石にちょっと今日はゆっくりしていたい。

『明日、午前中授業だから午後から会えるだろ』

『今会いたい。一時間でも二時間でもいい、会いたい』

 そこまで言うなら仕方ないか。


『どこで会うの?』

『私の家。家族誰もいないから』

そういう事。余計疲れそうだな。


『佐那、ごめん。俺やっぱり疲れている。今日は止めて、明日思い切り遊ぼう』

『えーっ、でもう。遊びたいー!』

『佐那、ごめん』

『もう仕方ないなぁ。分かったぁ。じゃあ、明日は思い切りだよ』

『うん』

 意味合っているのかな?



 俺は、その日は一日中家に居てゆっくりとした後、次の朝登校した。教室に入ると須藤さんと早瀬さんが朝の挨拶をして来た。そして須藤さんが


「東雲君。今日のLHRで修学旅行の班レポート纏めるから」

「了解」


 神林の方を見ると同じ反応している。昨日休んでいる間に粗方は纏めてあるので今日は各自のレポートを一緒にすればいいだろう。



 予鈴がなって担任の琴吹先生が入って来た。先生少し焼けている気がするのは気の所為かな?


「皆さん、おはようございます。修学旅行は事故も問題も起こらず素敵な旅行を全員で楽しむ事が出来ました。校長先生も喜んでいました。

 今日の最後の時間は修学旅行の感想文を班毎にまとめる時間です。しっかりと皆さんの感じた事をレポートにして提出して下さい」

 問題もなくか?俺は随分に賑やかだったけど。



 午前中の三限は普通の授業が有り、四限目がLHRだ。四限目が始まると琴吹先生が

「班毎に纏まって、レポートを完成させて下さい。完成したら私の所に持って来るように」


 ガヤガヤと席を移動して神林の周りに集まった。

「皆、粗方出来ているんだろう。その上に班のまとめレポを書いて出来上がりとしようか」

「それで良いんじゃないか」


 流石だ。小岩井さん、須藤さんも若菜もしっかりと纏めて来ている。俺も神林に渡すと、

「じゃあ、ちょっと待ってくれ。十五分も有れば出来るから」


 そう言うと班のまとめレポをあっという間に書き上げた。やっぱり神林はこういう立場にはピッタリの人間だな。


「よしで来た。皆、さっと読んでくれるか?」


 小岩井さん、若菜、須藤さん、俺の順で神林が書き上げた班のまとめレポを確認すると皆OKを出した。

「じゃあ、これを上にして、下に皆のレポを添えてクリップ留めしたら先生の所に持って行く」


 俺達が一番早いみたいだ。



 どこの班も問題なく班レポートを書き上げて終りとなった。放課後、昇降口に行くと佐那が待っていた。

「和樹、帰ろ」

「ああ」


 ふん、今の内よ。上条さん。でもあの二人が仲良く手を繋いで校舎を出て行く姿は気に入らない。早くどうにかならないものかしら。



「和樹、私の家に来て。昼食作るから」

「おう、悪いな」

「いいえ」


 佐那の家は学校の最寄り駅の隣駅。直ぐに着いた。歩いて五分。佐那の家に上がるのも慣れて来た。


 洗面所で手を洗うと佐那は、制服の上着だけ脱いでエプロンを付けた。とても可愛く見える。


 しかし慣れているんだな。手早くケチャップライスを作った後、オムレツを作ってケチャップライスの上に乗せる。


 その後、レタスを洗ってハムを数枚乗せた。

「和樹、これテーブルに持って行って。直ぐにスープ作るから」

「了解」


 ふふっ、和樹とこうして居ると一緒に住んでいるみたい。でも必ず実現させるんだ。


 佐那がスープカップを持って来ると

「食べましょう」

「「頂きまーす」」


 オムレツの乗ったケチャップライスを口に入れて咀嚼すると

「美味い。佐那のご飯は本当に美味しいな」

「えへへっ、照れちゃうな」

「ほんと、美味しいよ」

 

 お世辞抜きで美味しい。よく噛んで完食すると食器をシンクに片付けた。

「サッと洗うから待っていて」

「分かった」



 佐那が食器を洗い終わると

「部屋行こう」

「うん」



 二階に在る佐那の部屋に入ると俺に抱き着いて来た。

「ねえ、思い切りして。修学旅行であの黒髪女が和樹と一緒に居たのが頭に残って悔しい。思い切りして忘れさせて」


 やはり思い切りの意味はこっちだったか。俺の顔をジッと見上げる佐那の顔に俺の顔を近付けた。



 嬉しい。あの黒髪女は、いくら和樹に近付いたってこんな事して貰えない。これをして貰えるのは私だけ。和樹もっと…。



 今日の佐那は激しかった。こっちが焦る位に積極的だった。だからという訳では無いだろうけど、俺の横で目を閉じている。


 顔に付いている髪の毛を横にずらして彼女の顔を見ている。見慣れたと言ったら失礼な表現だが、本当に佐那は可愛い。そして胸はとっても大きいけど決して横にずれたりしていない。

 つい触ってしまった。あっ、目を開けた。

「和樹」


 そのまま口付けされると

「もう一度」


 

 結局、午後五時位まで佐那の部屋にいた。こんな小さな体で良くこれだけ体力があるものだな。俺、もう明日は一人でゆっくりしていよ。


―――――

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします

  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る