第32話 なんでこうなっている


読者様の中にはグアムに行った事ある方もいらっしゃると思います。生徒達の行動にあれっ?て思う所が有るかもしれませんが、それについてはご配慮の程お願いします。


―――――


 俺達私立菅原学院高校二年生は、羽田空港の団体客専用の出発ロビーに集まった。


 参加生徒数二百十名、担任先生と補助要員、学年主任、生徒指導、それにPTAからの支援父兄を合わせると二百四十人の人間が航空会社との話し合いで二機に分かれてグアムに行くことになった。十五分差の出発だからほとんど同時と同じだ。


 機内での並びは、小岩井さんと須藤さん、如月さん、神林を順番で外が見れる様にして俺は真ん中シート通路側から二席目に座る事になった。


 どうせ途中は雲か海だけだ。グアムに行くのは初めてだが、あまり飛行機には興味無い。


 向こうでは父親の休みの時に行ったボストン-フロリダ間は日本の路線バス感覚で乗っていた。丁度羽田―グアム間と同じくらいの時間だ。



 団体客専用の出発ロビーからぞろぞろと機内に入ると皆緊張しているのが良く分かる。

 須藤さんが

「東雲君、慣れているね」

「そんなことないけど」

「だって、東雲君だけだよ。学校にいるみたいな平気な顔してる。他の人はドキドキワクワク顔なのに」

「俺だって楽しみだから」

「そう?」



 クラス担任が全員乗った事を確認した後、CAがシートベルト確認をしている。そしてタキシングロードから滑走路に出て一度止まると、凄い轟音と共に背中がシートベルトに押し付けられ、目の前のスクリーンに滑走路が映し出されてフッと体が軽くなった。離陸したんだ。


 皆目を丸くして緊張している。

「東雲は慣れているな」

「そんなことないよ。飛行機乗るの一年ぶりだし」

「俺なんか初めてだよ。流石に緊張する。これ本当に落ちないよな」

「あははっ、流石にそれは大丈夫だろう。でも分からないか」

「おい、脅すな」


 雲の上に出てシートベルト着用サインが消えると皆ホッとした顔になる。その内段々慣れて来て機内が騒がしくなったが、俺は朝が早かったからせっかくなので寝かせて貰った。



 神林の声で起こされるとシートベルト着用サインが出ている。もう着くのか。空港で後続便を待ってバスで移動した。


 ただし、人数が多い為、三つのホテルに分散して泊まる事になっている。幸い2Aと2Bは一緒のホテルだ。


 佐那とも会える可能性があるけど、浅井さんとも会ってしまう可能性がある。静かでいてくれると良いのだけど。


 グアム時間でまだ午後二時半だ。ホテルに着いて、学年主任の先生からホテル内における注意事項を聞いた後、自分のスーツケースを持って部屋に入った。午後五時まで二時間以上有る。自由行動だけど、今日はあくまでホテル周辺のみの行動しか許されていない。


 行動は全て班単位だ。部屋は俺と神林が一緒。小岩井さん、須藤さん、若菜が一緒だ。だけど階が違う。女性が上の階だ。


 部屋に入ってカーテンを開けた。 

「おーっ、砂浜が見える」

「本当だ。結構人が居るんだな」

「東雲、まだ夕食集合迄二時間ある。どうする?」

「海岸周りでも散歩するか?」

「いいな。花蓮達に連絡するよ」


 女子達は色々あるのか、結局ロビーに集まれたのは午後三時半近くだった。だけど…何故か浅井さん達のグループが居る。偶然なのか?そしてその中に何と堀川もいた。あいつ2Bだったのか。


「あっ、東雲君。偶然ね。花蓮に聞いたわ。浜辺に散歩に行くんですって。私達も一緒に良いかな?」

「東雲、偶然だな」

「ああ、驚いているよ。神林どうする?」

「まあ、特に他班と一緒に行動してはいけないという決まりは無いし良いんじゃないか。誰も反対ないよな?」

「じゃあ、決まりだ。神林、東雲行こうぜ」



 私、浅井佳織。花蓮が神林君達の修学旅行中の行動計画表を教えてくれた。勿論、私の班で反対する人はいない。堀川君なんか東雲君と一緒に回れると言って喜んでいた。もう一人の男の子も同じだ。


 私、須藤京子。まさか、浅井さんの班と一緒に浜辺に行く事になるとは。今回の件で東雲君との距離を詰めようとしたのに。飛んだ強敵が現れたわ。



 十人という少し多い人数になってしまったけど、みんなで浜辺迄降りた。白い砂浜と遠浅の海で、午後三時半も過ぎたというのに、多くの海水浴客がいる。しかしここの海は綺麗だな。


 サンダルなので、ちょっと海水を足に触らせるととても気持ちいい。

「ふふっ、綺麗な海ですね」

「ええ、透明な色が水色になり緑色になり紺色になっていく。とても素敵な海ですね」

「いずれ、二人だけで来たいですね」

「……………」

 この人何期待しているの?


「東雲君と佳織お似合いだよね」

「そうだけどな。今はまだ無理だな」

「それは仕方ないよ」


 私、如月若菜。悔しいけど和樹と浅井さんが並ぶととても様になっている。何処から見ても素敵なカップルといった感じだ。でもまだ修学旅行は始まったばかり。今回は偶々一緒になっただけのはず。


「神林、東雲って今うちのクラスの上条さんと付き合っているんだよな」

「そのはずだけど」

「なんかあの二人見ていると滅茶似合っているんだけど」

「俺もそう思うよ」



 俺達はゆっくりと砂浜を歩いたり少し休んだりして、午後四時半過ぎにホテルに戻った。


 夕食は先生から渡されているチケットを見せれば、ホテルの中のいくつもあるレストランを利用可能だ。


 俺達五人は、文句なくタヒチアンダンス付きのBBQに行った。だが、何故かそこでも


「あら、東雲君。偶然ね私達もここで食べようと思っていたの」


 確かにうちの生徒は他にもいる。単なる偶然だろう。だけど俺のテーブルには、右に浅井さん、左に須藤さん、前に若菜だ。どして?


「神林、東雲はいつもああなのか?」

「まあ、もてる男のさがだよ。それよりお前彼女いたよな?どうして一緒じゃないんだ?」

「ちょっと事情で今冷戦状態。本当は一緒の班だったんだけど」

「ぷっ、堀川君がさつきと冷戦中?あんなに仲良いのに」

「まあ、色々有ってな」

「あっ、焦げないうちに食べようぜ」

「おう」


 BBQをしながらタヒチアンダンスも見たけど、あの腰の動きは凄いな。だからあんなに細いんだ。


 お肉、野菜取り放題、ジュース飲み放題だったが、流石にお腹が一杯になり、早々に部屋に戻って、風呂でシャワーを浴びて寝た。何故か今日は色々疲れた。


―――――

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします

  

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