第26話 文化祭は不参加にしたい


 次の日の六限目のLHRは琴吹先生が言った通り文化祭の催し物決めとなった。

「皆さん、去年経験しているので手順は分かっていると思いますが、今配ったプリントに従って話を進めて下さい。では文化祭委員の決定からですね。どなたかやりたい方いますか?」


 今年も神林と須藤さんがなった。この二人なら去年の時の事を考えればそつなくやって貰えそうだ。


「文化祭委員の神林武夫だ。宜しくな」

「同じく須藤京子よ。宜しく」

「では、最初に催し物から決めよう。皆の意見を挙げてくれ」


-唐揚げ屋

-クレープ屋

-うどん屋

-焼きそば屋


「外の模擬店ばかりだけど?」


-じゃあ、地域文化紹介

-喫茶店

 それは止めて。

-執事喫茶

 それも駄目。

-輪投げ


「まあ、色々出たから多数決を取るぞ」


 どう考えても喫茶店系はやりたくない。今年は外の模擬店でも良いんじゃないか。でも模擬店と言ってもなぁ。どれがいいんだ。


 考えている内に模擬店の最後になってしまった。俺は焼きそば屋の所で手を挙げた。



「決まったな。焼きそば屋だ。これを挙げた人。具材の手配とか心当たり有るか?」


 焼きそば屋を挙げた男子は、自分の家がスーパーをしているので具材の調達は容易だと言っていた。鉄板とガス台の用意も出来るらしい。


「では、役割と班決めだな。フロントで焼きそば作り、盛り付け、会計、後ろで野菜切り、肉切りと後、学食の冷蔵庫の使用許可も必要だ。運搬もな。そうすると一斑、六名体制が必要だから席の列単位で良いか?」


 流石だ。神林はこういうリーダー的役割にはぴったりだな。あっという間に計画書が出来上がった。

「じゃあ、須藤さんと二人で生徒会に出してくる」


 二人が帰って来るのを待って下校となった。計画案は通った様だ。しかし、人数的にはピッタリだ。これでは文化祭を休む訳にはいかないな。


「東雲君」

「なに、須藤さん?」

「いま、良からぬ事考えていなかった?」

「えっ、どういう意味?」

「何となく文化祭休みたいなんて考えていなかった」

「あははっ、そんな事無いよ」

 この人ヤバいな。なんで考えている事分かるんだ。


 今回は模擬店の為、飾り付けとはほとんど必要無く、残りの一週間で作る事になったので俺は少し遅れたけど図書室に行く事にした。


 図書室迄行こうとした時、

「東雲君」

「あっ、浅井さん」

「ちょっと話せますか?」

「今から図書室に行くのでその後なら」

「分かりました。それでは私も図書室に行って宜しいですか?」

「それは構わないですけど」

 何となく嫌な予感。


 案の定、図書室に入ると上条さんが俺を見てニコッとしたけど、隣に浅井さんが居るのを確認すると怖い顔になった。何となく思いは分かるけど。



 東雲君がいつもより遅れて図書室に来た。夏休みで彼との距離は大分縮まっている。

 だから彼が座った隣に行こうと思ったらなんと浅井さんが一緒に居る。一体どういう事?彼女と東雲君の接点なんて無い筈なのに。


 やはり東雲君の隣に座っている。二人共何も話さずにただ勉強をしているだけだ。帰りはどうなんだろう。


 予鈴がなるとやはり二人は一緒に図書室を出て行った。何か帰りに話でもするのかな。しょうがない、今日は一人で帰るか。


 

 俺は浅井さんと一緒に図書室を出て昇降口まで行き履き替えると校舎を出た。彼女もぴったりと横に付いている。


「浅井さん、何か?」

「はい、特に何も無いのですけど、東雲君と一緒に駅まで帰りたいと思いまして。でも話しがあるからと誘ったので、何か話さないといけないですね」


 そういう事?俺と駅まで帰るというのは良いけど、この人噂では学院一の美少女とか言われているよな。そんな人と一緒に帰るとまた変な噂たてられそう。


「浅井さん…」

「はい」


 困ったな。一緒に歩きたくないなんて言えないし、そんな気持ちも無い。だからと言って…。

「あの、浅井さんの様な綺麗な人が俺なんかと一緒に歩いていると迷惑にならないですか?」

「言っている意味が分かりません。誰の迷惑になるんですか?」

「浅井さんの」

「全く無いです。迷惑どころか嬉しくて堪りません」

「そうですか」

 ちょっと意味違うけど。細かく言うのも面倒だし。駅までだから良いか。


 駅に着くと彼女は

「東雲君、また明日」

「はい」


 彼女が帰るホームは俺と反対方向だ。そう言えば俺の知合いで俺と同じ方向って誰もいないな。



 不味いな。何処でどう知り合ったか知らないがあの学院一の美少女が和樹に手を出そうとしている。早く何とかしないと。



 東雲君と駅で別れたけど、これではどうしようもない。夏休みの間はきっかけが有ったから会えたけど、学校が始まると彼との接点がまるでない。クラスが違うというのも大きい。

 文化祭できっかけ掴みたいけど方法がない。どうすれば。考えないと。



 翌日からの放課後は浅井さんに声を掛けられる事も無かった。図書室に行き、隅っこの方の席で一人で座っている。そして上条さんが横に座るというパターンだ。

 彼女とは、何気に帰りも一緒に帰っている。図書室からの流れだ。


「上条さん。来週は文化祭の準備で色々有るから図書室にはいけないと思う」

「うん、いいよ。私ものクラスの飾りつけ作るから」

 丁度良かったみたいだ。


「そう言えば2Bは何をするの?」

「教室で喫茶店。それも普通の。もっと工夫すればいいのにね」

「でも手間掛けないならそれで良いんじゃない。去年の1Aは同じだったから」

「1Aはねぇ、東雲君が居るからいいんだよ。うちは客寄せ無いからなぁ」


 浅井さんとか十分にお客を引けるとか思うんだけど。でもあの人が首からプラカードをぶら下げる姿の想像が出来ないな。




 翌週から飾りつけの制作に入ったが、テントの前の吊り広告や建付け看板の制作。それに例の首から付けるプラカード作りだ。そして何故かここが最後尾とか書いてある団扇の様な物まで作った。


 明日から文化祭だ。体調は悪くなりそうにないな。仕方ない参加するか。 


―――――

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします

 

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