第21話 神林達とプール
プール編、やはりこの話もいつもより長くなりました。
―――――
上条さんとプールに行った次の日は遅くまで寝ていた。結構疲れた。それに少し日焼けしたようだ。
花曇りだったから日焼けは大丈夫だと思ったんだけど。今日の内に冷やしておかないと。明日また日焼けする事になるからな。
神林達とプール、小岩井さんの友達が一人来ると言っていたけど一体誰なんだろう?
神林達とは、午前十時に現地集合になっている。一昨日行っているので所要時間は分かっている。
スポーツバッグを持って遊園地のある駅に降りるとチケット売り場前で神林達が居た。近付いて
「おはよう、神林、小岩井さん。えーっと?」
「そうか東雲君は初めてだね。紹介するわ。こちら私の友達の浅井佳織さん」
「初めましてではないですね。東雲君」
「あっ、でも名前は初めて聞きました」
「あれ、二人共どこかで会っているの?」
「ええ、休みに入る前の放課後、私が花に水を上げていると東雲君がベンチにやって来てお昼を食べ始めました。それが初めて会った時かな」
「お昼?ああ、あの時か」
「武夫、早くチケット買おう」
「そうだな」
四人でチケット買ってゲートに入ると右に折れてプールのゲートを通った。神林はロッカールームの前まで来ると
「ここで待合せな」
「うん」
「分かりました」
女子達と別れて神林と一緒にロッカーで着替えてながら
「東雲、浅井さんはどうだ?」
「どうだと言われても。綺麗な人だなって感じかな」
「そうか、容姿端麗頭脳優秀、心も優しいし。いい子だぞ」
そう言われても、まだ何も分からない人だし、返事のしようがない。神林と着替えてロッカールームの前で待っていると小岩井さんと浅井さんが現れた。
小岩井さんは、可愛い黄色のビキニ。髪の毛をポニーテールにして白のラッシュガードを着ている。神林を見て嬉しそうにしている。
浅井さんは、‥‥長い髪の毛はお団子の様に纏めて有るので顔の輪郭がはっきりして一段と美しさを際立たせている。
そしてだけど、洋服からは分からなかった豊かな胸、すらっとした足だ。オレンジ色のビキニを着て、青のラッシュガードを着ている。少し目のやり場に困った。
「よし、座る所を決めるか。花蓮、浅井さん何処がいい?」
「あそこが四人位座れるスペースがある」
一昨日、上条さんと座った辺りだ。
「よし、そこにするか。東雲良いか?」
「俺は、何処でもいいよ」
「じゃあ、あそこな」
シートを敷くとそれぞれの持ち物を置いた。
「どれから遊ぶ?」
「取敢えず流れるプールにしようよ。香織、浮輪借りに行こう」
「うん」
二人が売店に浮輪を借りに行く姿を見ながら
「神林、小岩井さんと浅井さんってどういう関係?」
「家が近所なんだ。小さい頃から一緒だよ」
「えっ、そうなんだ。だからあんなに親しいんだ」
「そうだな。花蓮は中学時代に俺と知り合って、それから俺は浅井さんと知り合ったんだけど、あれだけの容姿だ、色々告白されては断っているらしい」
「そうなんだ」
二人が浮輪を借りて来ると、小岩井さんはお尻を浮輪の中に入れた。浅井さんは普通に浮輪の中に入った。
俺と神林は二人の浮輪を引いたり、浮輪に掴まってぷかぷかと浮いている。
「東雲君、泳ぎは?」
「多少、泳げる。金槌では無いという所かな」
「へーっ、私も同じ位かな。少し一緒に泳いでみる?」
「まあいいですけど」
浅井さんは、浮輪を抜けて、小岩井さんに渡すと俺と一緒に平泳ぎを始めた。周りにも人が居るからコースの様な泳ぎは出来ないけど、それなりに泳げた。
「東雲君、USボストンのミドルスクールから転入して来たって花蓮から聞いています。後で向こうの生活教えて貰えませんか」
「別に良いですけど、普通の生活ですよ」
「はい、それでも」
俺達の後方、神林と小岩井さんは、
「へーっ、佳織が男の子を誘うなんて」
「そうだな。でも東雲なら彼女の期待に応えてくれるんじゃないか」
「そうだと良いけど」
俺達は、今度は流れに逆らって元いた所に戻ろうとしたけど、前に進まない。
「進みませんね」
「そうですね。神林達ももうすぐこっちに来るし、待っていますか」
「はい」
小岩井さんは浮輪に乗って神林は浅井さんの浮輪を引っ張ってここまでやって来た。
「仲良さそうだな」
「ええ、楽しいです」
「へーっ。香織が男の子と遊んでそんな事言うの初めて聞いた」
「そんな事無いですよ」
「さて、流れるプールもこれで良いだろう。あれやろうぜ」
神林が指差したのは、ウォータースライダー。一昨日の事が蘇ったが、このメンバーじゃ、あんな事しないだろう。
浮輪を売店に戻してから四人でプールサイドを歩く様に向かうと
-すっげぇ、美人だな。
-ああ、スタイルもいいし。
-でも一緒に居る男、敵わねぇ。
-俺もだ。
好きな事を言っているけど佳織さんに関しては事実だな。
ウォータースライダーに着くと並びながら
「東雲、俺と花蓮は一緒に滑るけどお前、浅井さんと一緒に滑るか」
「い、いやいや。そんな失礼な事出来ないよ。一人ずつで滑る。浅井さんもそうですよね」
「え、ええ」
ちょっと楽しみだったんだけど。
一回目は、俺と浅井さんが先に一人ずつ滑った。その後、神林と小岩井さんがぴったりくっついて楽しそうに滑り降りて来た。
やっぱり楽しそうですね。でも東雲君、受けてくれるかな?
「もう良いかやるか」
「うん」
また四人でスタート台迄の階段を登って行くと
「あの、東雲君。一緒に滑りません?」
「「「えっ?!」」」
「佳織、いいの?」
「はい、花蓮達が楽しそうなので」
「いいの、東雲君?」
「俺は…」
浅井さんが俺を見てくる。
「東雲、一緒に滑ってやれよ」
「分かった。でも俺でいいのですか?」
「はい」
今度は神林達が先に滑った。その後、スタート位置に座ったのだけど
「彼女さん、それでは途中で別れて危険です。もっと彼氏さんのお腹に手を回してしっかりと両手を握って下さい」
「こうですか」
初めて男性に体を押し付けてしまいました。胸が彼の背中に密着しています。恥ずかしい。
「はい、では行ってらっしゃーい」
始め少し真直ぐでしたが、右に二回転、左に二回転する間に私の胸は東雲君の背中に擦り付けられています。うーっ、恥ずかしい。でも何か気持ちいい様な。
私達が、滑り終えると
「あははっ、佳織の顔が真っ赤」
「東雲の顔もだ。面白い。もう一回やろうぜ」
「「えっ?!」」
「じゃあ、別々で」
「東雲、駄目だよ。男は責任取らなきゃ」
どういう意味だ。
三回目はさっき以上に浅井さんは体をしっかり付けて来た顔も俺の背中に付けている。良いのかな?
ふふっ、東雲君の背中ってこんなに大きいんですね。安心感があります。それにお胸がさっきより心地いいのは何故かしら?
滑り降りると
「あれ、顔が赤いのは東雲君だけだ。香織大丈夫だったの」
「はい、二回目でしたから」
「二回目でしたからって」
これって、意外かも。
「おっと、もう午前十二時を過ぎたな。お昼にするか。俺と花蓮で先に買って来るから」
「分かった」
二人でシートに座りながら俺は浅井さんの顔が見れない。上条さんとは全く違う感覚だった。こっちが何故か恥ずかしい。
「東雲君、どうしたんですか」
「いえ、何でも」
思ったより恥ずかしがり屋の様ですね。少しだけ私にいたずら心が生まれました。
ラッシュガードを取る振りをして、彼の背中から手を伸ばすと、当然私の体は彼にピッタリとくっ付く訳でして。
「えっ、ちょ、ちょっと。浅井さん」
「済みません。ラッシュガードを取ろうとして」
「言ってくれたら取りますから」
「でも、申し訳ないので」
「それより背中から離れてくれると」
「あら、私とした事が」
その頃、俺達の事を後ろで見ていた神林達は
「武夫、あんな佳織見た事無い。どう見ても今の自発的でしょ」
「ああ、これは予想以上かも知れないな」
「佳織は間違いないけど、東雲君がどう思うか。彼は既に二人から心の傷受けているし」
「そうだな。それは浅井さん次第だろうな」
「買って来たぞ。東雲達も行って来てくれ」
「分かった」
「あの二人なら文句なしのお似合いなんだけどね」
「だけど、世の中美男美女が結ばれる事ってあんまりないだろう」
「痛い!」
「私達がいるでしょう」
「そ、その通りです。だからそろそろ抓るの止めて」
「ふふっ、良いわよう。その代り明日は良いよね」
「は、はい」
花蓮、見かけによらずあっちが好きな子。
「武夫、今変な事考えていなかった?」
「考えていません」
「それならいいんだけど」
俺達が売店から戻りながら神林と小岩井さんを見ると
「あれ、神林、小岩井さんにやり込められている」
「ふふっ、あの二人は昔からそうです。花蓮は可愛くて優しいですけど彼に対しては、はっきりと自分の意思を出す子です。二人の関係が羨ましいです」
「浅井さんなら引手数多でしょう」
「頭数居ても意味ないです」
俺達はゆっくりとお昼を食べた。浅井さんが向こうでの生活を色々聞いて来たので丁寧に教えてあげた。随分驚いていたけど。
それから、例の波の出るプールに行った。一昨日の様な事は無かったけど、浅井さんは随分俺にくっ付いて来た。この人見掛けに寄らないのかな。一歩引いた方が良いかも。
そして、午後三時に上がって、シャワー室で体を洗った後、ロッカールームに入った。
「東雲、浅井さんに随分気に入られたみたいだな」
「見掛けと違って、随分積極的な人だな。ちょっと驚いてる」
「良いじゃないか、あんな美人に気に入られたんだぞ」
「いや、美人だからっていい訳じゃないよ」
「そういえば東雲、何処に住んでいるんだ?」
「学校からSC方向に四つ目だ」
「奇遇だな。俺は学校から渋山方向に四つ目だ。ちなみに花蓮と浅井さんは同じ駅で学校から俺と同じ方向に二つ目だ。帰りは一緒だな」
「ああ、嬉しいよ」
それから四人で電車で渋山迄行って俺達の路線に乗り換えた。乗り換えながら浅井さんが
「東雲君、休み中にもっと会えるかな?」
「それは構わないですけど」
「では、連絡しますね」
「俺の連絡先知っているの?」
「はい、このプールのグルチャに入っているじゃないですか」
「そうですね」
もしかして神林グルチャを作る目的はこれが狙いか。
―――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます