第17話 夏休みの予定


 来週月曜日は海の日で三連休。そして金曜日が終業式。もうすぐ夏休みだ。俺は家に帰ると両親に


「お父さん、お母さん。今年の夏は何処か旅行とか行かないの?」

「お父さんは、会社規定で七月から九月の間に夏休みを九日間連続で取得しないといけないという決まりがあるから取れるけど仕事の調整も必要になるからどこかに行きたいなら早く言ってくれるといい」


「私は、そんなに長くは取れないなぁ。数日だったら撮影の合間を鳥居マネージャに言って調整して貰えば何とかなると思うけど。

 でも何処に行きたいの?今からホテルの予約はきついんじゃない。それにセキュリティを考えると場所が固定されるわね。海外だったら問題ないんじゃない」


「海外?当分いい」

「和樹の気持ちは分かる。国内でどこか行きたいところないのか?」

「それが…。全然知らない。お母さん、海は駄目でしょう」

「それは流石に駄目だわ。行くなら湖か山ね」

「会社の枠で取っているホテルが思井沢にある。そこを拠点に動けばいいんじゃないか」


「場所はそことしてもいつ行けるの?」

「そうだな。お父さんは、今からだと八月の後半かな」

「お母さんは鳥居に聞かないと。八月後半なら調整して貰えるかな」

「分かった。八月二十日以降で三泊四日」

「じゃあ、会社の総務に聞いてみるか」



 これで両親と一緒に旅行に行く事が出来る。七月中は夏休みの宿題をしないといけないから八月一日から二十日までだな。神林達のプールいつ行くか聞いてなかったな。



 三連休が明けて学校に行くと早速神林達に

「おはよう、神林。プールの件だけどいつ行くんだ?」

「それな。八月五日にしようと思っているんだけど都合つくか?」

「そこならいいよ」

「じゃあ、決まりだ。花蓮、佳織ちゃんにも伝えておいて」

「了解」


 佳織ちゃんって誰だろう?まさか…。


-不味いわね。

-浅井佳織(あさいかおり)。学年一いや学院一の美少女。

-あの子が東雲君と一緒にプール。不味いよー。



 あの三人がまたなんか言っている。


 今日から三日間午前の授業だけだ。そして金曜日は終業式。何となく嬉しい気分だ。



 午前中の授業も終り、購買で菓子パンを買って教室で食べた後、図書室に行くつもりだったのだが、購買から教室に戻って来ると

「和樹」

「如月さん」

「お願いです。話をして下さい」

「断ります。今更何だって言うんですか」


 和樹がバッグを持って教室を出て行ってしまった。もう元に戻る方法はないんだろうか。話もしてくれないのでは、どうにもならない。何とかしたい。


-如月さん、未練タラタラね。

-あんなに仲の良かった後藤君を東雲君が現れた途端に態度を変えて。あんな形で振っておいて、別れたから付き合いましょうは無いわよね。

-女でも引くわよ。


 好きに言われているけど、事実だ。でも、でも、何とかしたい。



 俺は、教室で食べるつもりだったが、仕方ないので校舎裏のベンチに行く事にした。言ってみると女の子が花壇に水やりをしている。

「あの、このベンチ使っても良いですか?」


 その子は振り向くと

「そのベンチの使用は自由ですよ」


 と言ってニコッと笑った。とても可愛いというか美人というか、背は百六十センチ位だけど、綺麗に切り揃えらた腰まで有る黒く輝くような艶やかな髪の毛、大きな切れ長の目にスッとした鼻可愛い唇それを引き立たせる綺麗な顔の輪郭。ちょっと見てしまった。


「如何しました?」

「い、いえ」


 俺は購買から買って来た菓子パンを食べながらその子の水やりを見ていた。色白で目を奪われる感じだ。


 菓子パンを食べ終わりペットボトルのジュースも飲み終わると

「邪魔して済みませんでした」

「いえ」


 東雲和樹。この学院一目立つ子。話した事無いから人となりは分からないけど、前に流れていた噂はいい加減過ぎて信じなかった。今の感じは悪くないけど。



 俺はさっき花壇の水やりをしていた女の子を頭に浮かべながら図書室に向かった。あんなに綺麗な子、2Aにはいない。

 何処のクラスなんだろう。見た事がなかった。明日もあそこでお昼食べようかな。でも居るとは限らないか。


 図書室に入ると上条さんは来ていた。また少しだけ離れた所に座った。そしてそのまま、今日の復習をした。来たのが遅かったので時間はあっという間に経った。


 俺は教科書をバッグに仕舞って図書室を出ようとすると上条さんんが近付いて来て

「東雲君、今日も一緒に良いかな」

「良いですよ」



 私は昇降口で履き替えると彼のそばに寄った。そして一緒に校門を出ると

「東雲君、夏休みどう過ごすの?」

「えっ、まあ適当に」

「ねえ、一緒にどこか遊びに行かない?」

「上条さんとですか?」

「うん、どうかな?」

「でも二人だけというのはちょっと」

「なんで?なんでいけないの?」

 うん?どこかで聞いたフレーズだが。


「いやぁ、友達でもない女の子と二人だけで一緒に出掛けるのは、駄目ですよね」

「友達ならいいの?」

「えっ?まあ」

「じゃあ、今から友達になって」

 どう考えても言い方間違えたな。


「いいでしょう。友達なら」

「うーん」

 男子なら直ぐにでもいいんだけど。俺この子の事何も知らないし。


「じゃあ、友達になる為のプレお出かけはどうかな?」

「なにそれ?」

「うん、簡単なお買物と食事」

「いやいや、そっちのがよっぽどカップルでしょう。駄目です」

「ねえ、お願い。一日だけでもいいからぁ」


「あっ、もう駅だ」

「駄目、離さない」

 いきなり手を掴んで来た。周りの人が驚いて見ている。うち学校の制服を着ている子もいる。この前みたいに目立ちたくない。


「分かった。行きましょう」

「ほんと?」

「ほんと」

「やったぁ、細かい事は明日ね」


 あっという間に改札の向こうに消えて行った。


 翌日放課後俺は上条さんと何故かプールに行く事になってしまった。これならプレお出かけにしとけばよかった。それも八月三日。なんて事だ。五日に神林達と行くというのに。


―――――

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします

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