第16話 何故か近付く女の子
体育祭が終わった翌土曜日は午前中だけ授業が有る。朝、教室に入るといきなり須藤さんから
「おはよう東雲君。今日、昨日の体育祭の打上があるんだけど行かない?」
「おはよう須藤さん、止めておきます」
文化祭後の打上を思い出すととても行く気にならない。
「そんな事言わないで行こうよ」
「駄目です。遠慮しておきます」
「須藤さん、この前の打上の事も有るし、東雲君は無理だよ」
ナイスフォロー、早瀬さん。
「だからさ、私達とだけで行こう?」
ナイス取り消しです。早瀬さん。
「何と言われても行かないので。皆さんで楽しんで来て下さい」
「えーっ、詰まんなーい」
とても行く気になれない。疲れるだけだ。
午前中の授業が終わり、購買に行った。部活とかやる生徒もいるので購買と学食は午後二時まで開いている。
須藤さん達やクラスの子に最後まで誘われたけど断った。行っても碌な事がなさそうだ。
俺は購買で買って来た菓子パンを教室で食べ終わると図書室に行った。いつもの席に行こうとすると最近いつも一緒に座る女子上条佐那さんが先に座っていた。
彼女の隣はちょっと刺激が強いので、別の席に座って教科書を取出して勉強を始めた。
東雲君が来た。いつもなら私の隣の席が定位置なのに他の席に座った。やっぱり、まだ女子には抵抗があるようだ。
仕方ないよね。如月さんの事があった後、追い打ちを掛ける様に八頭さんの事が有ったから。
ここは、変に絡まずにこのままにしよう。彼にはいい印象を持って欲しいし。
午後三時になり下校を知らせる予鈴が鳴った。いつもなら午後五時半だけど、今日は土曜日午前中授業だからこの時間までだ。
教科書とノートをバッグに仕舞って図書室を出ようとしたところで上条さんが声を掛けて来た。
「東雲君、駅まで一緒に帰ってもいいですか?」
「えっ、俺と?」
「うん」
「別に構わないですけど」
昇降口で履き替えると上条さんと一緒に校舎を出た。
「東雲君、昨日の体育祭で思い切り目立っていたね」
「あれは、大失敗です。もう遅いですけど」
「大失敗?」
「はい、あまり目立ちたくないので」
「東雲君。君、鏡見た事有るの?それだけの容姿をしていて成績順位一位だよ。昨日の事が無く立って君は歩いているだけで目立つんだよ」
「そうなんですか?」
「自覚無さすぎ。昨日だってモテモテだったじゃない」
「あれは競技で成績良かったから」
「分かっていないなぁ。あれが他の男子だったらあんなに騒がないよ。君だからああなったの」
「それは…」
「もっと自覚する事」
「はい」
なんか立場ないんだけど。
「いい方法が一つあるよ」
「えっ、いい方法?」
「あっ、もう駅だからまた今度ね。バイバイ」
上条さんは手を振って改札の中に入って行った。
なんだ、いい方法って?
六月に入っても俺は、放課後は図書室で過ごした。
体育祭の後、陸上部の堀川が入部して欲しいと何回も言って来て、最後には部長まで来て頼まれたけど、丁寧に断った。部活はちょっと苦手だ。
授業が終わり、いつもの様に図書室に行こうとすると
「和樹」
「なに如月さん?」
「話がしたい」
「俺は話す事無いから。ごめん、急ぐから」
「お願い、少しだけでもいいから」
須藤さんと早瀬さんそれに加藤さんが若菜の事を睨んでいる。他の生徒もこっちを見ている。嫌だな。
「俺、図書室に行くから」
「終わるまで待っている」
「……………」
今更、何の話が有るって言うんだ。後藤と別れたらしいけどそんな事関係無い。彼氏がいるならいるって最初から言ってくれていれば、それなりの付き合い方も出来ただろうに。
体の関係が有ろうがなかろうが俺には関係なかった。彼氏を無視するような言い方をして結局は拗れてしまったんだ。
言いたい事なんて見えている。だから話す気にはならない。
俺は若菜を無視してそのまま図書室に行った。いつもの席に上条さんはいなかった。
だから俺はいつもの席に座って教科書を取り出して勉強を始めると静かに隣に座られた。何処から現れたんだ?
でも何も言わないで自分の勉強をしている。話しかけても来ないなら別に構わない。そして予鈴が鳴って帰ろうとすると
「また、駅まで一緒に行っていいですか」
一人だと若菜が声を掛けてくる。丁度いいや。
「良いですよ。一緒に帰りましょうか」
「うん」
和樹の傍に居るのは上条沙耶。なんであの子が和樹と一緒に帰るの?
俺は、図書室に居た若菜を無視して上条さんと一緒に昇降口に行き、校舎を出た。
これがきっかけか知らないけど、何故か毎日図書室が閉まると一緒に駅まで帰る様になった。
七月に入って直ぐに一学期末考査が有った。結果は今回も一位だった。
「東雲、凄いな。中間に続き、学期末もかよ。これはまぐれじゃないな」
「神林、まぐれは二度続くよ」
「よく言うぜ。しかし俺も頑張らないとな」
「そうだよ、武夫。私達も頑張らないと」
「しかし、仲良いなぁ。羨ましいよ」
「じゃあ、女の子紹介するか?」
「いや、それは…」
和樹が今回も一位だ。私も頑張っているけど二十位。やっぱり頭の出来が違う。
ふふっ、東雲君が今回も一位。嬉しい。毎日駅まで一緒に帰っている。距離感も大分近くなった。もうすぐ夏休み。仕掛け時かな?
俺は、教室に戻ると須藤さんが話しかけて来た。
「ねえ、東雲君。夏休みの計画って入っている?」
「いえ、何も」
「そう、それなら…」
「須藤さん、東雲君の独占は駄目だって言っているでしょう。誘うなら皆一緒」
「えっ、でも」
騒いでいる内に担任の琴吹先生が入って来た。良かった。
一限目が終わった中休み、神林が寄って来て
「東雲、夏休み、俺達と遊ばないか?」
「神林達とならいいけど。何するんだ?」
「プールだ。俺と花蓮、それに花蓮の友達でどうだ」
「それならいいよ」
「ねえ、神林君、それに私達も入れてよ」
須藤さんが割込んで来た。
「須藤さん、悪いけど俺達だけで行く」
「ええーっ!」
夏休みか、去年は帰国したばかりだったから何も出来なかったけど、今年は何かしたいな。そういえばお父さんやお母さんに聞いてみようかな。
次の中休みも須藤さんが言って来たけど、他の女子から阻止された。でも下手すると結構な人数で行く事にもなりかねない。何とか先手打てないかな。
―――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします
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