第2話 再会した幼馴染


 俺が席に座ろうとすると前に座っている幼馴染によく似た女子から声を掛けられた。

「和樹」

「やっぱり若菜か」



「あら、東雲君と如月さんは知合いなの?」

「はい、幼馴染です」

「そうなの?それなら良かったわ。東雲君、如月さんに校内を案内して貰って」

「分かりました」


―如月さん。東雲君と幼馴染だったんだ。

-でも如月さんって…。

-しっ!


 担任の御子柴先生が教室を出て行くとしばらくして一限目の先生が入って来た。



 授業の中休みは彼の周りに生徒が集まって来て質問の山だった。

 ボストンの事、言葉の事、USと日本の学校の違いとか、生活はどうだとか、色んな質問をされていたけど、彼は丁寧に答えていた。


 午前中の授業が終わり、昼休みになると私は後ろを振り向いて

「和樹、案内してあげる」

「分かった」


 二人で席を立つと何となく周りからちょっと嫉妬の様な視線を感じたけど初日だからと思って無視した。


「お昼だから最初に学食行こうか」

「若菜に任せる」


 学食の傍まで行くとコンビニの前で人だかりになっている。

「あれは購買と言って、お昼だけコンビニが生徒の為にパンとかおにぎりとか売っているのよ。コンビニは学用品とか一杯売っているわ」

「そうか、後で見てみよう」


 それから学食の入口まで来ると生徒が一杯並んでいた。

「みんな、学食のチケットを販売機で買っているの。傍のガラスケースにサンプルが乗っているからそれを見て」

「分かった」


 色々な意味で仕組みが違う。向こうでは毎日お弁当持ってカフェテリアで食べていた。勿論ランチサービスも有ったけど。


 購買とか言うシステムは無いし、学校内に外部業者が入っているなんてセキュリティ上ありえない。


 授業も自分の選択科目毎に教室を移動した。だから他のクラスの子達と一緒になる。一日中同じ場所で同じ生徒達と授業を受けるなんて無い。ちょっとストレスだけど早く慣れないと。


 俺は、チケット自販機をジッと見るとガラスケースにボリュームのあるB定食というのが有ったのでコインを入れてチケットを買った。


 それから学食の中に入ると生徒が並んでいる後ろについてカウンタでB定食を受け取ると若菜と一緒に空いているテーブルに座った。


「和樹、話したい事が一杯ある」

「俺もだ」

「今どこに住んでいるの。前の家には全然知らない人が引越して来た」

「郊外にあるマンションだ。両親と一緒に住んでいる」

「そうなんだ」

「若菜は前のままか」

「うん、家は変わらないよ」


「何でこの高校にしたの?」

「お父さんがここが良いって言ったから」

「編入試験難しかったんじゃないの?」

「そうでもなかった。一応、準備もしてあったし。なあ、帰国が延長になってから連絡が遠のいたけど…」

「それは後で説明する。食べたら校内を案内するから。今日の放課後も使うよ」

「分かった」



 学食で食べ終わった後、若菜に図書室とか理科室とか案内して貰った。廊下を歩いているとジロジロ見られたけど転入生なんてこんなものだろう。



 授業が終わり放課後になったので、若菜がまた校内を案内してくれると思ったら教室の後ろのドアから

「若菜、帰るぞ」


 いきなり知らない男子が若菜を名前呼びした。

「あっ、孝之」


 若菜もその男子を名前呼びした。

「ちょっと待って和樹」

「ああ、いいよ」


 若菜は急いで声を掛けた男子を廊下に連れ出すと何か言っている。男子の方が不満顔の様だけど彼女から離れて行った。

「ごめん、和樹。行こうか」

「おう」



 その後、最初に体育館に行った。男女のバスケットボール、男女バレーボールの練習をしていた。俺の姿を見るとぎょっとした顔をしていたけど。


 武道場に行って剣道や柔道の稽古も見た。用具倉庫に行ったり、グラウンドで練習しているベースボール、男女テニスも見た。何故か俺を見ると一様に驚いている。まあ初日だから仕方ない。


 最後に校舎裏に行って花壇の説明もしてくれた。水やりをしている子がいたけど。


「これで一通りかな。じゃあ帰ろうか」

「そうだな」


 俺達は校門を出ると

「若菜、さっき放課後になった時、声を掛けた男子って?」

「ああ、あいつ。後藤孝之(ごとうたかゆき)といって私の友達。ちょっと仲良いかなって感じ」

「彼氏なのか?」

「そんな関係じゃない」

「そうか」


 本当は…。


 駅まで行くと

「若菜はどっちなんだ」

「こっちのホーム」

「そうか、残念だな。俺は反対方向だ」

「ねえ、今度の土曜日、午前中授業があるじゃない。その後話せないかな」

「いいぞ、俺もそうしたかった」

「うん、じゃあ、また明日」


 私は家に戻ると孝之に和樹の相手をしないといけないから当分一緒に帰れないと連絡した。

 凄く面白くないって言っていたけど。少しだけ昔の事情も説明して納得して貰った。


 和樹が戻って来るって分かっていたのに。残りの一年が我慢出来なかった。でもまだ間に合うかもしれない。


―――――

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