俺を裏切らない彼女が欲しい

@kana_01

第1話 プロローグ


プロローグ


新作始めました。読んで頂けると嬉しいです。


―――――


 俺、東雲和樹(しののめかずき)。俺には可愛い幼馴染、如月若菜(きさらぎわかな)がいる。


 俺と同じ病院の同じ日の同じ時間に生まれたけど、五分早くお母さんのお腹から出たと自慢してお姉さんを気取っている。


 幼稚園、小学校とずっと一緒で中学校も当然一緒だった。いつも傍に若菜が居た。

 

 そんな大切な幼馴染に

「若菜、お父さんがUSに転勤になるって」

「……………」

「それでね、USに二年間行く事になった」

「……………」


「だから、若菜とは…」

「そんな事聞きたくない。和樹はずっと一緒でしょ。和樹の両親がUSに行ったって私の家に居ればいいじゃない。ヤダよ和樹と離れるなんて」

「……………」


 そんな中学に入ったばかりの子供の言葉なんて聞いてくれなかった。

「和樹、嫌だよ。私を忘れないでね」

「忘れる訳ないじゃないか。たった二年だよ」

「思いっきり二年だよ」



 私も和樹もこれ以上の涙が出ないんじゃないかと思う位泣いた後、彼は両親と一緒に成田から旅立った。


「行っちゃった」




 幼稚園、小学校と一緒で中学も同じ学校に入った。ところが入学して直ぐにお父さんから

「和樹。お父さんのUSへ転勤が決まった。二年間だ。八月に出発する。だから今からでも遅くない英会話学校に入りなさい。向こうの日本人学校もいいが、せっかくのチャンスだ。今からなら九月からの入学に間に合う」

「えっ、それって中止になったんじゃないの?」

「会社の都合だ仕方ない」

「どうしても行かないといけないの?」

「和樹、一緒に来てくれ」

「…分かった」




 寂しさを感じる暇もないままに俺は両親と共にUSボストンに行った。たった四か月の英語力ではどうにもならないだろうと思っていたけど、入学したミドルスクールでは、日本人が結構いて学校生活だけでなく日常の生活でも随分世話になった。


 ロブスターの食い放題競争で勝った時は、皆でお祝いしてくれたけど、それ以上お腹には入らなかった。


 そして二年間も終わろうとした時、お父さんから

「和樹、仕事の都合で、後一年こちらに居なくてはならなくなった」

「えっ、なんで?二年で帰る約束だったよね」

「和樹には申し訳ないけど決まった事だ」

「そんなぁ」


 若菜にももう一年こちらに居る事を伝えると嘘つきと言われた。それでも少しの間は、通話をしてくれたのだけど、いつの間にか通話にも出なくなった。俺はショックだったけど、自分が悪いと思い、若菜との会話は諦めた。



 結局、もう一年こちらにいる事になった。当然、日本人の友達は勿論、アメリカの男の子や女の子の友達も出来た。


 彼女達曰く、カズキは顔がとても綺麗で背が高く成績もいいし心が優しいからと歯が浮くような事を言われたけど三割程度が事実だろう位に思っていた。



 

 ミドルスクールは六月末に卒業した。皆からは日本に行ったら案内してよと言われたので当然だよと返事をしておいた。こちらに来てからもう三年近くが過ぎていた。


 若菜とは連絡が途絶えていたけど、日本への帰国が決まった日に彼女にチャットアプリで連絡を入れた。八月には帰るからって。でも返信は無かった。



 そして、八月に日本に帰国した。お父さんは七月前から日本の不動産屋と話をしていて都心から少し離れた郊外のマンションに住む事になった。


 前の家は人に貸す事も出来たけど売却している。だから若菜の元に戻れなくなったけど仕方ない。もう彼女も俺を忘れているかもしれない。


 俺はマンションから近く都内でも有数の進学校、私立菅原学院高校が有ると言う事で、オンラインで編入試験を受けて無事に合格した。



 成田に到着した時、日本がこんなに暑くて蒸し蒸ししているとは思っていなかった。向こうの最高気温がこっちの最低気温なんて知らなかったよ。



 日本に帰国したその日は都内のホテルに家族で泊ったけど、お父さんはその日のうちに不動産屋と鍵の受け渡しや部屋の状況について聞いてくれたので、翌日からはマンションに住む事が出来る様になった。


 ボストンでの荷物もマンションに来た当日に到着した。翌日からは荷解きや部屋の掃除、周りを覚える為の散策や、学校までの道を覚えるとか色々とあった。




 九月も近くなって、学校からは教科書も全て送られて来ているし、必要な書類も送られて来ている。私学なので制服は無いかと思ったけど有るらしい。向こうでは無かったのに。



 転入日の当日、俺はお母さんと一緒に一度職員室に行って先生達と挨拶したのだけど、職員室に入ったとたんに先生方が目を丸くした。


 直ぐに頭が禿げ上がった男の人が来て

「君が東雲和樹君か。写真では見ていたけど、凄い美男子だな」

「……………」


 そんなピントの外れた挨拶をされるとお母さんが

「教頭先生、今日から和樹の事を宜しくお願いします」


 お母さんの顔をジッと見る教頭と呼ばれた男の人が

「あの、お母さんは女優の北川塔子(きたがわとうこ)さんですよね」

「随分、ブランクがありますけど。そうです」


 お母さんは日本にいた時まで女優をしていた。北川塔子と言うのはお母さんの芸名、本名は東雲景子(しののめけいこ)だ。

「これはこれは、とてもお美しい」


 そんな訳の分からない雰囲気の中で

「教頭。私を紹介して下さい」

 なんか強気の先生だな。眼鏡を掛けた美人の先生だ。


「ああ、紹介する。こちらが東雲和樹君のクラス担任、御子柴紀子(みこしばのりこ)先生だ」

「御子柴です宜しくね。東雲君」



 その後、お母さんは帰って、少し説明を受けて待っているとチャイムが鳴った。御子柴先生の後について廊下を歩いて行くと1Aと書かれたクラスプレートの前で止まる。

「東雲君、呼んだら入って来てね」

「分かりました」


 御子柴先生が教室の中に入って、少し話をすると俺の方を見て

「東雲君、入って来なさい」


 その言葉に教室に入ると


―えーっ!

―嘘でしょう。

ーなんて綺麗なの。


―背が高いなぁ。

―凄い綺麗な顔しているな。

―友達になりてぇ。



 色々言われている。



「皆さん、静かに。東雲君自己紹介して」

「はい、東雲和樹です。父親の仕事の都合で三年間、ボストンのミドルスクールで学びました。勝手が全然分からないので、色々教えてくれると嬉しいです」

「東雲君の身長って?」

「百八十二センチです」

「それなら一番後ろがいいわね。如月さんの後ろが空いています。そこに座って下さい」


 俺は、言われた席に行こうとしたけど、俺の席の前に座っているのは、記憶が正しければ俺の幼馴染だ。でも何も声を掛けてくれない。




 私は、今日転入して来た男子を見て、言葉を失った。見間違う事の無い私の幼馴染。東雲和樹だった。


 彼は中学一年の一学期にUSボストンに行った。二年の約束だった。二年経ったら戻って来るという思い、期待だけでずっと彼を待ち続けていた。勿論、チャットアプリを使って連絡も取っていた。


 そして帰国直前になって一年間帰国が延びた。私の気持ちの我慢もそこまでだった。


 もしかしたらずっと帰って来ないかも知れない。

 帰って来るとしても何年も先かも知れない。

 もしかしたらもう会えないかも知れない。

 彼女が出来ているかもしれない。


 そんな事ばかりが頭に浮かんだ。だから彼との連絡は段々遠のいて行った。


 六月位に和樹からチャットアプリで帰国の知らせが来たけど、もう会えることも無いと思い無視をした。


 それがまさか、同じ高校の同じクラスに転入してくるなんて。


 私がこの高校に入学した事なんて話していない。全くの偶然だ。遅いよ、遅すぎだよ。和樹。


―――――

投稿初めは皆様のご評価☆☆☆を頂くと投稿意欲が湧きます。

宜しくお願いします。

感想や、誤字脱字のご指摘も待っています。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る