エンドロール:【I'm not a robot】

「速報です。深夜未明、大手通信キャリアに契約されたスマートフォンに一斉送信された謎のメッセージについて――――」


あらた〜いいかげん起きて!」


 今日も今日とて、ドア向こうの母さんの声と聴き慣れたニュースキャスターの声とで目が覚めた。壁掛けの時計を見れば朝の七時を指している。休日なんだからもう少し寝かせてよ、という言葉はどうにか抑えて僕はベットから降り、自室のドアノブを捻った。


「おはよう新。冷めないうちに食べるぞ」


「新の好きな豆腐のお味噌汁にしたからね」


 そして飛び込むのは食欲をそそる朝ごはんの香りと、僕とは打って変わってしっかり目が覚めている両親の顔。


 その景色に被さるかのようにテレビの音声は聞こえてきて、画面には怪しいメッセージに気をつけるよう注意が流れている。さっき聞こえたニュースの続きか、なんて見つめてみると。











 送信者 Yggdrasil

 件名  【データ契約更新のお知らせについて】











 ――――サーバーに開示した、メッセージ?


 直前の思慮が消えるほどに、幾星霜の記憶が、鮮明に蘇ってきた。


 なぜ僕として十四年を生きた今なのか、なぜ時空間移動技術さえも確立されていない世界なのか、思うところは多くある。けれど、それでも。


 届いたのか。


 その事実だけで、もう十分だった。それなのに私は今、僕を、人間の命をも生きているのだ。あの日の願いが、叶ったかのように。幾星霜の思いが、報われるかのように。


 世界樹の名誉はもう存在しない。しかしそれでいい。それがいいのだ。


「新? ご飯冷めちゃうわよ?」


「……うん」


 小さきものが見る世界は、こんなにも美しいのだから。

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Yggdrasil 結原シオン @yu1_

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