第13話

「かい様どれにします〜?」


 クレープ屋に到着した。

 どうやらここのクレープ屋は人気店らしく注文をするまでに三十分以上も待った。

 

「泉原のオススメは?」

「え~私のオススメですか~? そうですね~」


 泉原はメニューを見ながら悩んでいた。

 

「もしかして、泉原もここのお店は初めてか?」

「はい」

「じゃあ、泉原が食べたいやつを選べよ」

「そんな! むしろ、かい様が食べたいやつを選んでください! 私は何でもいいので!」

「泉原が選べって」

「いいえ、かい様が選んでください!」


 お互いに譲り合わないので押し問答だった。

(泉原は折れなそうだな)

 つまり、俺が折れるしかないということだ。


「分かったよ。本当に俺が選んでいいんだな?」

「はい!」

「じゃあ……すみません。チョコいちごクレープと抹茶ブリュレクレープをお願いします」


 俺は店員にクレープを注文した。

 そして、俺たちはクレープが出来上がるのを待った。

 クレープは十分くらいで出来上がり、俺たちは店を後にして近くの公園に移動した。

 空いているベンチを探しながら公園内をブラブラと歩き、俺たちはベンチに座った。


「そういえば、天内から連絡は返って来たのか?」

「返ってきましたよ~。大丈夫だそうです! もう少ししたら合流することになってます」

「来るのか?」

「って、言ってましたよ」

「そうなのか」

「なので、それまでかい様との二人っきりの時間を堪能するつもりです♡」


 そう言って泉原は俺の腕に抱き着いてきた。


「おい。クレープが落ちるって」

「大丈夫ですよ~。ちゃんと落ちないようにしてますから」

「いや、食べにくいから食べる時くらいは離れてくれ」

「嫌です~。絶対に離れません♡」


 クレープだからまだ片手で食べれるからいいけど、他の物だったら無理やりにでも離れているところだった。

(まぁ、どうせ無理やり離れても泉原ならくっついてくるんだろうけど)

 だから、無駄な抵抗はやめて大人しく受け入れることにした。


「食べにくいなら私が食べさせてあげますよ♡ ほら、口を開けてください♡ あ〜ん♡」


 泉原はチョコいちごのクレープを俺に食べさせようと口元に持ってきた。

 拒む理由は特にないので俺は泉原のチョコいちごクレープに齧りついた。

 これでもかというくらい甘いチョコレートと少し酸味の聞いたいちごが絶妙にマッチしていた。


「かい様。お口にチョコレートがついてますよ」


 そう言って泉原は俺の口元についていた?チョコレートをペロッと舐め取った。

 

「ごちそうさまです♡ かい様のお口についたチョコレートは格別な味がしますね♡」

「何変な事言ってるんだよ」

「かい様は食べさせてくれないのですか?」

「食べさせてほしいのか?」

「食べさせてほしいに決まってるじゃないですか♡」

「そういうことなら、ほら」


 俺は泉原の口元に抹茶ブリュレのクレープを近づけた。

 泉原は大きな口を開けてパクっと抹茶ブリュレのクレープに齧りついた。

 

「美味しいか?」

「かい様に食べさせてもらったので最高に美味しいです♡」

「だから何だよそれ。誰が食べさせても味は変わらないだろ」

「そんなことありませんよ! 大好きなかい様が食べさせてくれた物は何でも最高に美味しく感じるんもんなんです♡」

「そういうもんなのか?」

「かい様が私のことを好きになってくれたら、そのうち分かると思いますよ♡」

「俺が泉原を好きになる前提なんだな」

「前提というか確定事項です♡ だって、絶対に私のことを好きにさせますから♡」


 自信満々に言い切った泉原の口の周りには抹茶がついていた。

 俺が取ってくれるのを待っているのか、泉原は俺のことをジーっと見つめている。

 

「取ってほしいのか?」

「気づいてるなら取ってくださいよ!」

「泉原と同じ方法で?」

「はい♡」


 泉原は満面の笑みを浮かべて頷いた。

 本人がいいと言っているので俺は泉原と同じ方法で泉原の口の周りについていた抹茶を舐め取った。

 

「はぁ~♡ 幸せ♡」


 泉原は顔をこれでもかというくらい、とろけさせていた。

 

「かい様♡ もう一回お願いします♡」

「いや、もう口に何もついてないだろ」

「じゃあ、つけますから!」

 

 そう言って泉原は自分の持っていたチョコいちごパフェを口にチョコレートがつくように食べて、口の周りにたっぷりとチョコレートをつけた。

 

「これでもう一回してくれますよね?」 

「分かったよ」


 俺はもう一度、泉原の口の周りについていたチョコレートを舐め取った。

 そして、そのまま泉原とキスをした。


☆☆☆

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