第4話
「このゲームはもういいか?」
「はい。次のゲームに行きましょう」
「次は何やるんだ?」
「次はあれをやりたいです!」
そう言って天内が指を差した先にはエアホッケーがあった。
「おけ」
「エアホッケーはやったことありますか?」
「エアホッケーは二人じゃないと遊べないからな。やったことないな」
一人でゲームセンターに来ていたので、二人で遊ぶことが必須なゲームはしたことがなかった。
エアホッケーはその一つだ。
「そうなのですね!」
「なんか嬉しそうだな」
俺がエアホッケーをしたことがないと知った天内は嬉しそうに声を弾ませていた。
「だって、やられたことないんですよね? ということは私と同じということじゃないですか! これなら、神崎さんに勝てるかもしれないということじゃないですか!」
「なんだか、随分となめられてるな。じゃあ、勝負でもするか?」
「しましょう!」
「おけ。負けたらどうする?」
「そうですね。何でも一つだけ神崎さんの言うことを聞きます」
「そんなこと言っていいのか? 負けてから後悔しても知らないぞ? エッチなことをさせるかもしれないぞ?」
「だ、大丈夫です! その代わり、神崎さんが負けたら私の言うことを聞いてもらいますからね!」
「分かった。天内がそれでいいなら、俺は構わない。どうせ勝つのは俺だからな」
「いや、勝つのは私です! 絶対に負けません!」
まさかエッチなことをするかもしれないという冗談で言った提案を了承するとは思ってもいなかった。
それだけ俺に勝つ自信があるということなのか。
俺もエアホッケーをやったことはないから条件は天内と同じだが負ける気は全くしなかった。
今回もお金は天内が出してくれた。
「それではいきますよ」
天内がパックを打ちゲームがスタートした。
どう打ち返せば点を取ることができるのかまだ分からないで、とりあえず天内の方にある穴にめがけて打ち返した。
そう簡単に得点が取れるわけもなく、天内も俺が打ち返したパックを打ち返してきた。
その後も何度かラリーが続き、先に点を取ったのは俺だった。
「次は私が点を取ります」
「いや、このまま天内には一点も取らせることなく俺が勝つ」
お互いに初めて同士らしいラリーを繰り返して点を取り合った。
残念ながら天内に一点も取られないというのは無理だった。
俺が一点目を取ったすぐ後に天内に点を取られた。
そんなこんなでお互いに点を取り合い、ゲームは最終局面を迎えようとしていた。
俺が後一点取れば勝ちだった。
「この一点は絶対に私が取ります」
「いや、俺が点を取って勝ったせてもらう」
天内がパックを打った。
ここまでやって分かったことは、穴に狙いを定めて打つより、ジグザグに打った方が相手のミスを誘うことができて得点する確率が高くなるいうことだった。
当然、そのことは天内も分かっているから、天内はジグザグにパックを打ってきた。
俺はそれを冷静に止めて、天内よりも速いスピードでパックをジグザグに打ち返した。
かなり速いスピードで打ったはずだが天内もしっかりとパックを止めた。
「やるな」
「この一点は取られるわけにはいけませんからね」
「残念だが、次の点は俺が取って俺が勝つから」
「いえ、絶対に私が取ります! それでは、いきます!」
天内が思いっきりパックを打った。
ジグザグな動きをしながら俺の方に向かって来たパックを俺は止めることなくそのまま打ち返した。
止めることなく打ち返したので天内のスピードに上乗せして俺のスピードも加わったパックが天内の方にある穴に向かっていった。
俺の打ち返したパックを天内は止めることができなかった。
パックは穴に吸い込まれるように入っていき、俺の得点となった。
「俺の勝ちだな」
「負けてしまいました。悔しいです」
「約束、覚えてるよな?」
「は、はい。約束はちゃんと守ります。神崎さんの言うことを何でも一つ聞きます。もちろん、え、エッチなことでも構いません」
天内は顔を真っ赤にしてそう言った。
まさか自分からそんなことを言ってくるとは思ってもいなかった。
了承された時も驚いたが、天内が自分からそんなことを言うことにも驚かされた。
俺の中のザ・清楚の天内のイメージ像が崩れていく音がした。
もちろん悪い方にではなく良い方にだ。
「本当に何でもいいのか?」
「もちろんです。負けた私が意見を言える立場ではありませんので」
恥ずかしそうにしながらも、その目にはしっかりとした覚悟が見てとれた。
(どうしたものか?)
もちろんエッチことをするというのは冗談で言ったことなので本当にするつもりはなかった。
なかったけど、覚悟の決まった目を見せられたら、エッチなことをお願いしない方が申し訳なくなってくる。
だから、俺はエッチなことをお願いすることにした。
「じゃ、じゃあ、おっぱいを触らせてほしい・・・・・・です」
俺は童貞感丸出しでそう言った。
すると、天内はくすくすと笑って俺の方に近づいてきた。
「ふふ、神崎さんも男の子なんですね。いいですよ。他の男の子だったら絶対に触らせたりしないんですけど、神崎さんだけは特別です♡ 私のおっぱいを触らせてあげます♡」
天内は俺の耳元でそう囁いた。
そんな天内の余裕な態度になんだか勝負に勝ったのは俺なはずなのに負けた気持ちにさせられた。
「だったら遠慮なく触らせてもらうからな?」
俺が勝ったはずなのに負けた気持ちにさせられたままなのは癪だったので、俺は少し強気にそう言った。
「構いませんよ。ただ、ここでは恥ずかしいので場所を変えてからになりますけど、それでもいいですか?」
「当たり前だろ。俺だってここで触らせてもらおうなんて思ってないから」
「それならよかったです」
天内はニコッと笑った。
「もう俺は天内のことが分からなくなったわ。まさか天内がこんなにエッチなやつだったなんて」
「それは私のセリフです。神崎さんが本当にエッチなお願いをしてくるなんて思っていませんでしたよ?」
「男だったら誰でも触りたいと思うだろ。学年一の美少女のおっぱいを」
「さっきも言いましたけど、私のおっぱいを触っていいのは神崎さんだけです。他の人にはこんなこと言いませんから。そのことをちゃんと分かっていてくださいね?」
「なんで俺にだったら触られてもいいんだ?」
気になったので思わず聞いてしまった。
約束したとはいえ、好きでもないやつからそんなことを言われたら普通は拒否するはずだ。
「それはもちろん秘密です♡ ただ神崎さんにだったら触られてもいいということだけ分かっていてくださればいいです♡」
結局、なぜ俺だったら天内のおっぱいを触っていいのかは、はぐらかされたので分からなかった。
「とりあえず、その件は置いておいて他のゲームをやりに行きましょう! まだまだやりたいゲームはたくさんありますので、神崎さんにはまだまだ付き合ってもらいますからね!」
そう言った天内は俺の腕に抱きついてきた。
分かっていたことだが天内のおっぱいは大きかった。
そして、柔らかい。
服越しでもその大きさと柔らかさを実感することができた。
もはや、これはおっぱいを触らせてもらっていることになるのではないかと思ってしまった。
「あ、天内。当たってる」
「知っています。わざと当てているので。あ、これはさっきの約束ではないので安心してくださいね♡」
安心してくださいね、じゃねぇんだよ!?
おっぱいが腕に密着しているのに冷静でいられる男がどこにいるんだよ!?
できるだけ天内のおっぱいに意識を向けないようにしていても、歩く度にその感触が腕に伝わってきて意識せずにはいられなかった。
そして、抗うこともできなかった。
おっぱいという誘惑に抗えるわけがなかった。
俺はおっぱいという誘惑に抗うことができないまま次の場所へと連れて行かれた。
☆☆☆
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