第11話
次の日の朝は電話の音で起きた。
「おはようございます。渡会です、そろそろ起きたころかと思いまして連絡差し上げました。」
「あ、おはようございます。もう朝なんですね。」
「そうですね、地球では4週間経ちました、そろそろ朝食の起床と朝食のころかと思いまして、転送しますね?」
なるほどそんなに地球では時間がたっているのか、体感ではあるが8時間くらい寝ただろうか。何せ石の上で寝たことはない。いくら寝袋があるとはいえ寝心地は悪い。
土の上で寝ることも考えたが、漫画やアニメのイメージで岩の上で寝たほうが良いかなという意味の分からないバイアスがかかった次第だ。
「はい、じゃあお願いします。」
と答えると目の前にコンビニの袋が現れた。今日はシーチキンと鮭おにぎりのようだ。昨日は割と渋めのチョイスだったが今日は意外と無難である。ただなんだろう、あんまりおなかはすいていない。
「十五坂さん、こちらの世界では1か月がたとうとしておりますので検討結果をお伝えいたします。朝ご飯を食べながらで構いませんのでそのまま聞いていただけますか?」
「わかりました」
携帯をスピーカーモードにしてコンビニからおにぎりを取りだす。余談だが、昨日はセブンだが、今日はミニストらしい。
「結論から申しますと十五坂さんをこちらの世界に戻すのは現状不可能です。」
「そしてまことに申し訳ない話ですが、上に状況を話したところ、 もみ消せとの指示が出てしまいまして・・・」
「もみけす!?そんなどうして・・・」
「地球では十五坂さんはすでに死んだことになっております。そして今起こっている話をほかの人に話したところで誰も信じてくれません。
つまり、ここで弊社が十五坂さんを見捨てたとしても何も損が出ないとの判断です。」
「いやちょっと待ってくれよ。確かにそうなんだが、慈悲はないのか。いくら何でも勝手すぎるだろ。」
「はい、私自身夢見が悪いです。」
「そうでしょう、なんとかならないんですか。」
「はい、そこでですね私なりに考えてみたのですが、そちらへの転送を続けた場合、十中八九で十五坂さんに連絡を取り続けていることがばれます。ですが、メールと電話であればそんなことはありません。つまり物体は送ることができませんが、情報は供給し続けることができます。」
「それが何になるというんだ」
「はい、つまり自炊してもらいます。」
「自炊?」
「はい、そちらの世界で生きていけるように情報提供だけ致します。」
それは自炊というのだろうか渡会さん。
つまりは何かをするための技術情報は提供してやるから自分で習得して何とかしろとのことである。こんな森の中で、一人で、一からどうやってそんなことができるだろうか。いくら情報があったとしてもそんなにうまくいくものだろうか。
「ちなみにもう一つ耳寄りな情報をお伝えしておきます。」
「耳より?」
「実はそちらのことに詳しい方がおりまして、その方の話では、こちらの世界とそちらの世界では時間の流れが違うため十五坂さん本人に関わる時間の流れも変化しているそうです。」
ほう、まあそれはそうだ。実際問題そちらでは1か月がたとうとしているのにこちらでは12時間程度しかたっていない。であれば時間の流れがゆっくりになっているのか?
「簡単に言うととても長生きできるそうです。」
「本当に簡単ですね、理屈がわからないんですが。」
「今更理屈とかいいますか、まあざっくり言えばこちらの時間で24時間×7日=168時間をそちらの時間で2時間で割ると84倍時間のずれが生じます。それだけ十五坂さんは長生きできるわけです。」
「全然わからないんだが・・・その計算だとこっちで80年生きるとして経過する時間は6720年分になるんですか?」
「まあそういうことになります。」
「いや、そんなことはないでしょう、実際に体感している時間は地球にいたころと一緒ですよ?」
「そうなんでしょうけれど、違うそうなんです、詳しい方の話ですとそもそも時間の流れが違っているのはエネルギー差が関係しているそうなんです。それで、地球の人間は地球の時間で男の人であれば80年で放出しきるだけのエネルギー量を持っているそうです。これをウーデクセンに直すと6720年となるそうです。」
そんなことがあるのだろうか、まあ通常の人間として持っていた80年寿命がこちらの世界計算で6720年分あるということなんだろう。そもそも1年の感覚が違うのかもしれない。いわれてみれば昨日ご飯を食べてから全然おなかはすいていない。もらった朝ごはんもまだ手を付けていなかった。
「とりあえず分かりました。では手始めにサバイバル生活ができる情報をください。」
「そうですね、とりあえずあらゆる分野の本をPDFで送ります。読んで習得してみてください。加えてこちらの方が文明の進むスピードが速いのでどんどん新しい知識もそちらに送りたいと思います。」
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