第10話
コンビニのおにぎりをたべる。具は昆布とおかかのようだ。渡会さん意外と渋いチョイスなんだな。
改めて自分がどこにいるかは確認できた。といっても知らない土地のため特に思うこともないんだが。どうせなら転生してなにかスーパーな能力を授かるとかそんなことがよかったなあ。
とりあえずおなかは満たされた。渡会さんが忘れていなければ食料は何とかなるみたいだからとりあえずこちらの世界で暮らせるように周りを整える必要があるだろう。
でも、周りは木と岩しかない。
「とりあえず歩けるだけ歩いてみるか。今まで動物にも合わなかったし。鳥の声は聞こえるから全く何もいないわけではないんだろうけれど。渡会さんも動物に気をつけろとも言われなかったし散策を続けよう。」
なんとなくだが、自分のいるところは崖によって囲まれている円形の形状だと考えていた。ただどこまで行っても自分の足跡に合流しないのでまだ一周指定何のであろう。つまり、まだ未開の地があるはず。
崖に沿って歩いてみる。どうやらここに生えている木の種類はあまり多くなく、ほとんどが高山植物のような見た目をしている。ただし、背丈は人間よりもはるかに高く日の光さえぎっていた。
「もしかしてだけれど、ここって高い場所なのかな。専門家ではないけれど、町場で見かける植物じゃないんだよな、これ。いや、地球と植生が同じかどうかはわからないが。」
1時間ほど歩いてみる。全然景色が変わらない。相変わらず崖に沿って植物が生えているだけでほかの他に真新しいものがない。
「どのくらい歩いたのかなあ、全然森を抜ける感じもないし。人工物もない。
まあ、崖が反り立っていてぽっかり穴が開いているのならだれも降りようとは思わないだろうな。」
疲れた。どこまで行っても景色が変わらない。歩いているだけなのに息がよく切れる。やはりここは高地なのかもしれない。運動不足だとは思っていたが歩いているだけでここまで息が切れるとは思えない。
「もういいや、とりあえずどこまで行っても何もないのであればここで拠点作りを始めたほうがいいかもしれない。日があるうちにせめて寝れる場所は確保したいしな。」
「あれ?というか寝袋とかって送ってもらえるのかな。電話してみるか。」
相変わらずの会社携帯を取り出し、着信履歴から渡会さんの番号を呼び出す。
呼び出し音はなる、どうやらつながるはつながるらしい。でも渡会さんは電話に出なかった。
「もしかしたら社外にいるのかもしれないな、社内に特殊な部屋があるとか言ってたし。まあ、向こうのほうが時間の進みが早いみたいだしすぐにおりかえしが、っと噂をすれば」
「もしもし、十五坂さん、電話いただいてましたか?そちらからも電話で切るんですね。」
「そうみたいです、ちなみにどのくらいでかけなおしていただきました?」
「すいません。社外にいましたので電話に出れませんでした、というよりも時間の制御ができないので電話をとってもすぐに切れてしまうんです。いま、会社に戻ってまいりましたので折り返した次第です。」
「やっぱりそうですか、いや時間は気にしないでください。こちらの時間はとても進むのが遅いらしいのでなんならすぐに折り返していただいた体感です。」
「あーそういえばそうでしたね、わかりました。ちなみにどんな御用ですか?」
「寝袋とか生活用品って送ることできますか?
「あーなるほどそちらはやっと1日が経過しそうなところなんですね。」
「そんな感じです、できれば寝るための品があるといいのですが。」
「わかりました、準備してそちらに転送いたします。ちなみに渡会さんの現在地を教えてくれますか?森が深いのでわかりにくいんですよね。」
「前回でんわしたところから少し進んだところだな、えーと、崖に沿って岩が落ちているところがあるからそこに登ってみます。」
「はい、どこだあ、ああ確認できました。では、そのあたりに転送しますのであまり動かないでもらっていいですか」
「わかりました、お願いします。」
「では」
電話が切れると同時に段ボールが現れた。
さすがキーホール、こんなときでもすぐに配送してくれるんだな。まあ、時間差があるからだろうけれど。
段ボールを開けると、寝袋と替えのジャージ一式、そしてコンビニ弁当が入っていた。
「おーありがたい、これでとりあえず明日まで過ごせそうだ。」
よくよく考えてみると向こうからすると世話するのは簡単なのだ。1週間に一度気にしておけばとりあえず飯の心配はない。おそらく1か月くらい気にしなくても何とかなるのだろう。忘れられなければいいけれど・・・
気づくと少しだけ日が傾いてきたようだ。先ほどの岩の上が思いのほか広かったため、そこに寝袋を広げ弁当を食べた。何もすることがないためその日は早く就寝することにしようとしたが、周囲でガサガサという音が聞こえるたびにびくびくしてしまうためよく眠れなかった。
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