第8話
「それで?どうしようか、俺はどうすればいいのか」
「そうですね、とりあえずこちらのミスで十五坂さんにはご迷惑をおかけしておりますのでできるだけ対応策を考えさせていただきます。そちらに行けたのですからカエルの方法もあると思います。」
「あれ?そうだよな、もしかしてそのシートライト?だっけ?それがあればそちらの世界に戻れるんじゃないか?」
「はい、そう思われると思うのですが、実は同じシートライトでも必要な出力がかなり異なります。」
「出力?」
「はい、実は地球とウーデクセンはエネルギーの量が違います。」
「量?それが違うとなんでできないんだ?」
「難しいとは思いますが、流体と考えてください、世界のエネルギーは全体で保存されております。その中では、エネルギーが高いところからエネルギーが低いところに向けて流れが生まれます。そして地球とウーデクセンの関係は地球>ウーデクセンです。つまり、地球からウーデクセンにエネルギーは送りやすくてもそちらから地球へ何かを送ることはより高いエネルギーが必要になるんです。」
「宇宙ってエネルギー保存則なりたつのかよ、まあ、言わんとすることはわかった。
要するにこの前のシートライトでは動力源として出力が足りないということなんだな。」
「はい、おっしゃる通りです。加えて、人間を送るということが聞いたことがないのでこちらからそちらは成功しましたが、逆が本当にできるのかわかりません。この辺りは私どものほうで検討したいと思います。」
納得するしかないんだろうな、しかしこれからどうするか。状況は確認できたが、森の中で過ごせるかどうかは別物だ。
(というか渡会さん下っ端だからという割にはいろいろ詳しいような気がするんだが。)
「そういえば、渡会さんはなんで森の中と崖というだけでこちらの世界を特定できたんですか?」
「あーそれは簡単です。見えるんです。」
「は?みえる?なにがですか?」
「十五坂さんがです」
ちょっと言っている意味が分からない。
「あ、そうかすいません、そちらの話を普通の地球の方としたことがなかったので説明していませんでした。」
「我々がエネルギーを転送するための装置を維持しており、地球で維持費を稼ぐために物を売っています。それは、実はそちらの世界から物を輸入して売っております。」
「え?物?送れてるじゃん・・・」
「はい、まあそうなんですが、例えばねじとか、バルブとかありますよね?
それらのものはそちらの世界ではエネルギーが低いものに当たります。」
「低いものは遅れるのか?」
「そうなんです、すごいアバウトに答えますね。基本的に熱を放出しきったと判定されたものはエネルギーが低い状態にあります。」
エネルギーが低いものを動かすほうがよっぽど難しい気がするんだがそこんところ違うのだろうか。いまいちわからない、重さの概念というよりは本当に熱?を保持できるのかだけで判断しているのか?
「続けますね、そして、そちらの世界で低いものだけはこちらに転送することができます。そのため、そちらで作ったものをこちらの世界に転送し販売しているんです。」
「原理は本当によくわからないが、とりあえず製造元がウーデクセンの世界で、しかも運送コストも安い、何なら独自ルートだから他社からの影響もうけず、わざわざ地球でものつくりをして売らなくてもよいということなのかな?」
「はい、そうです。そして、私のスマホからそちらの世界の衛星カメラのようなものにアクセスができ、どこからでも物体を転送することができるんです。つまり、カメラで十五坂さんが今どこにいるかわかったということですね。」
ふと、空を見上げてみる。衛星というからにはこの空のさらに上空を飛んでいるのだろう。なんとなく、手を振ってみる。子供のころに上空を飛んでいる飛行機に合図を送ってみているようだ。
しかし、飛行機はこちらを見ることができないが衛星のカメラからはこちらが見えているらしい。
「あー手を振られてますね。ちゃあんとみえてますよ。」
「一応聞いておくが、その装置で俺を転送しようとしてもそれはできないんだな。」
「はい、憶測ですが、出力が足りないので地球に到達することなく宇宙に放り出されると思います。」
そんなことはご免である。
「あ、そうだ、転送ってこちらのものもエネルギーが低ければおくれるんですよ。差し当たって食料をそちらに送りますね。」
電話の向こうの渡会さんがそういうと、目の前が光り輝き、某密林の段ボールがそこに現れた。
「おおおお、これはすごい。そして中身は、コンビニのおにぎり・・・」
「あ、はい。それは私のお昼ご飯だったもので。とりあえずそれで耐えしのいでください。幸い、時間の進み方がそちらとこちらでは違います。また、おなかがすくころに食料を転送いたします。」
「わかりました、とりあえず食料が何とかなることがわかってホッとしました。ただ、時間がずれるのであればなんで渡会さんと私は今話せてるんだ?」
「それは企業秘密ですね、社内に精神と時の部屋があると思ってください。」
そんな馬鹿なと思うが、もういろいろ突っ込んでもしょうがないんだよな。
とりあえず食料は何とかなったがこれからどうしたものか。
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