第5話

「もしもし。。。」


「お世話になります、キーホールの渡会ですぅ。今お時間よろしいですか?」


「ええ、構いませんが、本当に渡会さんですか?」


「え?そうですよ、キーホール株式会社営業担当の渡会です。

 どうされたんですか?」


「いや、こちらの事情です。電話どうしました?」


「はい、この前の見積もりについて担当者が変更になる旨メールをいただきましたが、どなたになるか確認したく。」


「あーすいません、課長に判断を任せているので私からは回答できません。」


「そうですかあ、すいませんお時間頂戴してしまって。不躾で申し訳ないのですが、今回の見積もりの品って前回も注文頂いておりましたよね?」


確かにそうだ、うちの工場で使用していた炉は海外製のため部品も海外から取り寄せとなる。そのため、突発的な故障の時に炉が緊急停止する可能性があったのだ。

そのため、日本製で代替ができないか渡会さんに相談し入れてみたのである。


「確かにそうですね、ただ購入したバーナーはなんだか出力が強いのか炉の温度が上がりすぎてしまってコントロールが難しかったんですよね」


「燃料の混合弁が故障しているのかと思って新しいものの見積もりをお願いしていた次第です。」


「なるほど、、、ちなみになんですが現状炉はどんな状態ですか?」


「すいません、どうやら熱中症で倒れてしまったらしくいま工場にいないんですよ。」


「工場にいない・・・、差し支えなければ病院ですか?」


「病院ではないんですが、なんと言ったらちょっと説明が難しいところにいます。」


「・・・・すいません、変なこと言うようですがいつもと全く違った場所にいたりしませんか?


「え。います。」


「あーやっぱりかあ。」


「えっと、渡会さんはもしかして私が今いるところがわかるんですか?」


「おそらく・・・、十五坂さん、ちなみに周りには何が見えますか?」


「木や、草、あー森の中と言ったらいいかな。」


「森の中・・・それ以外には何か見えますか?例えば山とか」


「山??、いや、山は見えないかな、丘のようなものはあちこちにあるけれど」


「丘?・・・そして山は見えない・・・えーーーそしたらどこだ。あの辺で山と言ったらト月山しかないけれど、あれだけ高い山が見えないわけないんだけどな。」


「トツキヤマ?それは日本なのか?」


「いやあ、なんとも説明しずらいですね。そもそもなぜ十五坂さんがそちらの世界にいらっしゃるのかわかりません。」


「あ、いや待てよ。この前購入いただいたバーナーって確か。」


「あのバーナーが何かあるんですか・・・」


「すいません、もしかしたら十五坂さんがどこにいるかわかるかもしれないのですが、これは機密事項なため本当にばしょが合っているかわからないとお話できないんですよ。恐れ入りますが、少し周辺の調査をしていただけますか。森の中だけではなんとも言えないので。」


「腑に落ちないところはあるがとりあえず分かった。ほかにできることもないし電話もつながるわけではないからとりあえず言う通りにします。ちなみになんですが、さっき言っていた山が見えればいいんですか?山の特徴とかあるとわかりやすいんだが」


「ああ、それくらいなら、えっとですね。とりあえず高い山なんですよ、ただし日本人が高い山として想像する富士山みたいに独立峰ではありません。14の山々が連なって見えます。」


「立山連峰みたいなものか・・・わかりました。ちょっと探してみます。」


「お願いします。何かわかりましたらまた連絡をいただけると幸いです。では。」


高い山がそもそも見えていないのに歩いたら見えるもんだろうかと電話を切ってから思ったがとりあえずできることがないため周囲を歩いてみることにした。


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