第3話 高校1年 初めての会話・ボイパを知る編

緑斗「ごめん・・・」

 いったん反省してるようにつくろって声をかけても、紅黄は突っ伏したままで反応してくれない。

緑斗「ほんと、申し訳ない・・・えっと、秋間くん?」

 咄嗟とっさに名前を呼んでみても返事がない。

緑斗「・・・死んだ?」

紅黄「死んどらんわ!」

 うぅん、キレのあるツッコミ。死んでいるわけではなかった。

緑斗「お、反応した!」

と笑いかけると、紅黄はしまったと言わんばかりの表情で、

紅黄「急に『死んだ?』(声真似)とか言われてまともに返せる奴がおるかよ!」

と、怒っているのか楽しんでいるのかわからない声色で嘆いた。

緑斗(これはいい流れじゃないか?ボイパマンってアカウントで何をやってるのか気になるし、聞いてみるいい機会でしょ!)

 この勢いに乗せて、緑斗が紅黄に問いかけた。

緑斗「それはそうだ!ところで秋間、ボイパマンって何やってるアカウントなの?」

紅黄「いきなり呼び捨てかよ。」

呆れた様子で言う。

緑斗「いいじゃんいいじゃん。」

紅黄「てか、ボイパ知らんの?」

緑斗「ボイパって物の名前だっけ?」

紅黄「本当に何も知らないのな。口から音を出してする遊びみたいな奴だよ。ほら、ぶっつっかっつって。」

緑斗「あ、聞いたことあるかも!有名ミーファナーのピカキーンがよくやってるやつ!」


ミーファナー(MeFuner)。全世界で使われている動画配信サイト、ミーファン(MeFun)にて、動画投稿をする活動者のことを指す。

ピカキーンは、日本で1番の子供人気を誇る、35歳のミーファナー。独特な顔芸とたくさんの効果音によって、華やかな動画を作っている。


紅黄「そうそう、やっぱピカキーンのボイパはレベル高いよな〜」

緑斗「いや、とりあえず知ってる人をあげただけでボイパの上手さはあんまりわかんないんだけどさ。」

紅黄「あぁそっか。」

緑斗(なんで初対面でこんなに会話弾んじゃうの?というか、口から音楽でいうビートみたいな音が出せるってすごいな。)

緑斗「あぁそうだ秋間、秋間もボイパマンとしてボイパを使った活動してるんだったよな?どんな活動してるんだ?」

紅黄「そんな大したことはしてねぇよ。ただ、即興そっきょうで音を組み合わせて、ビートを完成させて投稿してるだけ。いわば、フリースタイルだな。」

緑斗「フリースタイル?!カッケー!ラップみたい!え、それって今できる?!」

紅黄「今はちょっと・・・ほら、休み時間終わりそうだしさ・・・」

緑斗「え〜今聞きたいよ〜」

少し粘ってみたが、休み時間終わりそうの一点張り。そう言ってる間にチャイムが鳴り・・・

緑斗「じゃあ後で聞かせてくれよ!」

と言って、緑斗は紅黄とRIMUを交換してから自分の席について授業を受けた。


四時間後・・・


緑斗「遅すぎるだろいくらなんでもー!俺はあれから全ての休み時間お前がボイパを聴かせてくれるのを待ってたんだぞ!ずっと!待ってたんだぞ!!」

帰りのホームルームが終わり、紅黄が帰路に着こうとしたその時、緑斗は紅黄に啖呵たんかを切った。

緑斗「挙句あげくの果てにお前のアカウントをTwiposで探し始めたんだぞ!なんで出てこないんだボイパマン!」


Twipos。世界中で様々な人が使っている匿名SNSで、posという機能を使って、140文字までの情報発信ができるミニブログアプリ。


紅黄「それは検索の仕方が悪いと思・・・」

紅黄が言い終わるまで待たず緑斗。

緑斗「うるっせぇ!もう俺は秋間がボイパ聴かせてくれるまで帰らないし秋間も帰らせないもんね〜だ!!」

小さい子のように駄々をこねる緑斗。

紅黄「わーかったわかった、もういいから、やってやるから・・・」

仕方ないという様子で、口周りを揉み始める紅黄。

緑斗「秋間、モニョモニョってお前、急に口周り触り出して何やってんだ?」

紅黄は口周りを揉むのをやめず答えた。

紅黄「う、くちまむぁりぬぉまっすぁーみ。」

緑斗「ぜんっぜん聞き取れん」

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