第20話 久しぶりの家族生活

元夫は帰って来た。

始めた仕事は、元夫の知り合いの運送会社で下請けで宅配の仕事をする。

私は、地図を見るのが得意だったので

パートを辞め、一緒に配達をした。

繁忙期は、朝から夜遅くまで働いた。

休みもなく、長男には寂しい思いをさせた。

一緒に働くのは嫌ではなかったが、よくケンカもした。

繁忙期は結構良い収入になるが

それ以外の時にはほとんど仕事がなく…

私は、長男が中学生になると同時にパートで働いた。


結局、元夫は運送会社の社長と喧嘩をしてしまい、辞めてしまった。

それからは、たまに知り合いの所に仕事に行く程度で、前にも増して出歩くようになり…

怪しい行動ばかり見られるようになった。


そんな頃、元夫から

いつか、私がスポーツセンターで会った

捜査員の人とばったり会ったと聞いた。

それからは、たまにその人から連絡が入るようになり、はっきりは分からないが…

情報提供をしていたのではないかと思う。

自分に何かあったら、その人に連絡をするようにと電話番号を教えてもらっていた。


それからしばらくして…

私は自分の身体の異変に気が付いた。

妊娠したのだ…

1度目の人生では、産むかどうか

すごく悩んだ…

でも、ずっとできなかったし…

もうできないと思っていたから嬉しくもあった。

もしかしたら、これで元夫が

変わってくれるかもしれない…

これは、神様が与えてくれた命だ…と思った。

でも、今回の人生も同じ考えだ。

結果はどうなっても、二男に会えないという選択をするわけない。

私は産むと決めた。

そして、仕事も辞めた…


生活保護の担当に妊娠したと言ったら

生活が大変なのに

なぜ、避妊しなかったのか…

みたいなことを言われた。

その担当は女性だった…

確かにそうかもしれないが

せっかく授かった命に対して、

そんな言い方はひどいのでは…と思った。


妊娠したことは元夫も、すごく嬉しかったようで、お腹に話しかけたりしていた。

7か月頃に、病院の先生に

男か女か聞いたら、見えないから女の子かも?と言われて、元夫は、喜んでそのつもりで話しかけていた。


しかし、9か月の時に、もう一度確認をしたら男の子だと言われた…

私は男の子が生まれると知っていたが、

元夫は女の子が欲しかったようでショックを受けていた。

長男も歳の離れた兄弟ができることに

戸惑いながらも、楽しみだったみたいで

名前も一緒に考えて…

その時は、家族みんなが生まれるのを、心待ちにしていた。


生まれる時には、夜中に陣痛が来たので

元夫も一緒に病院に行き付いていてくれ…

13年ぶりの出産は初産と一緒と言われていたけれど思ったよりは早く、無事に大きな男の子が生まれた。


それが、二男。

二男にも会うことができた。

これまで、辛抱して良かった…

本当に本当に…嬉しかった。


長男は、中学2年生になる前だった。

本当に歳の離れた兄弟…

二男の名前は、長男の考えた名前となった。


私32歳。元夫39歳。

長男13歳。二男0歳。


私は幸せの中にいた…


その頃「あの人」も父親になっていた。

会えるまで、あと7年…

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