第19話 なぜ別れられないのだろう

私は…

「あの人」と会うために

今回の人生では、忠実に生きると決めた。

そのためなら、どんな我慢でもする。

でも、1回目の人生ではなぜ元夫と

別れることが出来なかったのだろう。

子どものため…

元夫のため…

色々あったとは思うが、私は私が分からない…

自分がなぜここまで出来たのか…

今の私には

ただ…バカだったとしか…言えない。


今回の事件の弁護士は、私選弁護士に頼んだ。

元夫の友達の奥さんとその仲間が、お金を出してくれたのだ。

何か言われては困ることでもあったのか…

それは分からなかった。


弁護士さんは、元夫から

「嫁と子どもが心配でたまらない」

と言われたという。

「そんなに大事なら何で悪いことをするのか」

と言ったそうだ。

分かっていても、それが出来ないのが覚醒剤の怖さなのだろう。


私は、今回も証人出廷した。

検事に

「何度も何度も同じことをしているのにあなたに更生させる自信はあるのですか?」と言われた。

最もな意見だ…

私だって、分かってるよ。無理なことは…

と思いながら、

「自信はあります」と言った。

弁護士さんの活躍もあって

求刑2年半

判決は2年だった。


今回、初めて私の住んでる市の刑務所に移送になった。

私は、パートに行き

面会は、早退させて貰って自転車で行った。

暴力団関係の人も多く

怖かったけど…

すぐ会いに行けるのは楽だったから怖いのは我慢できた。


長男は新しい学校でバスケットボールを始めた。

長男と友達とスポーツセンターに行ったり、3on3の試合を観に行ったり…

あっちこっちに連れて行った。

それくらいしか、してやれなかったから…


元夫は、借金を残して行ったし

働いたお金を生活保護に申請すると、全部ではなく1部は免除されて、生活保護から引かれる。

借金を返すと、僅かしか残らない。

質素な食事しか与えてやれなかった。

月に一度だけの外食は「吉野家」それでも長男は喜んでくれた。


スポーツセンターにバスケをしに行った時に、見たことがある人に会った。

その人は、元夫を逮捕したことがある捜査員の人だった。

お互いに子どもも一緒だったし、知らんふりをしたが…

後に、この人は私の支えとなる。

だが、1度目の人生の私は

この時は、まだ知らなかった。


少しずつ「待つ」生活にも慣れ、ゆっくりと日々は流れていった。

元夫が逮捕されてから1年8ヶ月後、元夫が帰って来る日が決まった。


1度目の人生では

帰って来ることが決まった時は嬉しい反面、怖かった。

元夫は、私がいなくなったら

もっと酷いことになると思っていた。

しかし、そのことにも疑いを持ち始めていたから…

それでも、私は元夫が更生すると信じたかった。

誰のせいでもない…

私が納得したかっただけなのかもしれない。

だから別れられなかった…


でも、今はそんな理由ではない。

元夫と別れる日に向かって

ひたすら、時が経つのを待つだけ…


私は30歳になっていた…


「あの人」は、別の人と結婚していた…時代。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る