第18話 忘れられない光景

元夫は、自分は警察に内定されているとか、マンションの入り口にレンタカーに乗ったまま停まっている車がいるとか…

おかしいことばかり言っていた。

私は薬でボケているんだろうと思っていた。

そんな中…

元夫は、よく行っている友達の奥さんの知り合いで、入院中の人の家に隠れると言い出した。

私も一緒に行ってくれと言う。

長男も学校を休ませ、一緒に行った。

よくいう薬を抜くということだ…


10日くらいして家に戻って数日たったころ警察が来て、元夫は連れて行かれた。

元夫が話していたことは本当だったんだ…と驚いたが…

1度目の人生の時は、帰って来たはず…


元夫は、やはり帰って来た。

検査で覚せい剤が出なかったのだ。

それから少しして、元夫の母が危篤という連絡が入った。

家族みんなで四国に渡った。

無事に母にも会え

翌日、母は亡くなった。

母の死に目には会えて良かった…

翌日、葬儀の日

テレビをつけると阪神淡路大震災の光景がずっと流れていた。

四国は揺れもほとんどなく

みんな無事だったが…

あの光景は忘れない。

葬儀も済ませ落ち着いてから帰った。


それからは、いつもの生活に戻った…

その頃、長男は喘息がひどくなり夜中になると苦しくなり、病院に連れて行くという生活が続いており、学校も休みがちだった。


母の葬儀から半年くらい経ったある日の朝、長男はまた夜中に苦しくなって病院に行くほどではなかったが学校は休ませた。


私が、ゴミを出しに行こうと玄関の扉を開けた瞬間…

大きく扉が開いて

すごい人数の人達が入って来てガサ状を見せられた。

警察ではなく国の機関、麻薬取締官

通称「麻薬Gメン」「麻取り」だ。

家の家宅捜索が行われ、トイレから注射器が出て来た。

そして、その場で簡易的な検査が行われ

注射器から覚せい剤の反応が出た。

元夫は、二人の捜査員の人に抱えられ

連れて行かれた…


その、光景は

私にとって忘れられない光景となった。


元夫、4度目の逮捕…

まただ…

いつかこの日が来ると分かってはいたけど…

絶望する気持ちは止められないんだ…


麻取りは留置場がないので、すぐ拘置所に移送される。

拘置所で取り調べをするのだ。


元夫は、またも「待って欲しい」と言う。

私に、選択肢はない。

まだ、「あの人」に会う時ではないから…


新聞に載ったりすることはなかったが、安い所に引っ越すため

長男の環境を変えるため

親友の家の近くに引っ越しをした。

暑い中、父に手伝って貰った…

その光景も忘れられない。


9月に入り、長男は転校した。

学校に行った初日、家で心配していたが

長男は初日から友達を沢山連れて帰って来たので安心した…


引っ越したマンションは拘置所も自転車で通える距離だったのでいつも通り、面会に行き手紙を書き…という毎日。


生活保護も受けることができた。


私は28歳になっていた。

元夫は35歳、長男は9歳。


「あの人」に会えるまであと11年…

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