第14話 3度目の逮捕〜

今回は、共犯者もいたので警察にいる期間は長かった。

私は実家に戻り、また兄に手伝って貰い

住んでいたアパートをコソコソと引き払った。

兄には嫌な思いもさせられたけど

お世話になりっぱなしだ…


今回の裁判は、長くかかった。

私は、証人出廷したが

やはり検事に

「なんで一緒にいて全く気付かなかったのですか」と言われた。

気付かなかったと言ったが

1回目の人生でも薄々気付いていたのだ。

私は、元夫の様子がおかしいと感じると

こっそり鞄の中を見ていた。

鞄の中に注射器を見つけたこともある。

でも、その度に元夫は言い訳をしていた。


元夫は私に覚せい剤を勧めたことはなかった。

だいたいは夫婦ですることが多いらしい。

なぜか、元夫は私には絶対にしなかった。

警察に事情聴取に行くと

たいていの奥さんは、尿検査をしろと言われるらしい。

私は、それを言われたとはない。

警察の人も、私はやっていないと分かるのだろう。

女の人が覚せい剤をすると

持っている男を渡り歩くようになるらしい。

くずな男だったけれど、それだけは救いだった…


元夫は、またも待って欲しいと泣きながら言う。

私が必要だと…

私は、なんとかこの人を立ち直らせたかった。

この人は、私がいなくなったら

どうなるか分からないと思い込んでいた。

しかし、今回は罪状も沢山あり何年になるか分からない…

1度目の人生の私は

待つ自信がなかったのを覚えている。


私は、実家の近くにアパートを借りた。

長男が入れる保育園を探し、その近くに仕事を見つけた。

当時は、土曜日も面会出来たので

月2回の土曜日の休みに面会に行った。

裁判の日は休ませて貰い傍聴に行った。


判決は3年6か月


元夫は、長くなる懲役を延期させる目的も兼ねて控訴したが、結果は棄却

その分、未決拘留の算定は少なくなった。


それから、つまらない毎日が始まった。

長男を保育園に連れて行き仕事に行く。

仕事が終わると長男を迎えに行き一緒に帰る。

長男が寝ると手紙を書く。

そして、翌朝ポストに投函する。

そんな毎日…


唯一、楽しみだったのは長男が保育園の散歩で私の会社の前を通る時に

「おかあさーん」と叫ぶ

窓を開けて手を振ると

「おかあさん、仕事頑張ってねー」

と言ってくれた。

会社の人も容認してくれていて

長男が叫ぶと

「来たぞ」と言ってくれていた。


私は、週末になると実家に帰っていた。

でも、兄家族の幸せそうな姿を見るのは

正直、辛かった…

そして、1年が過ぎた頃

私のことが原因で、父と兄が大喧嘩をしてしまった。

兄は怒り、家を出ると言い私に実家に戻るように言った。

私は、アパートを引き払い実家に戻り、父と暮らすことになった。

それからの生活は

私の唯一の青春の日々となった。 


私は、25歳になっていた…

「あの人」は、まだ19歳。

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