第13話 2回目の出所後

元夫は、満期まで保護会にいなければいけない。

その間、元夫はそこから仕事に行き休みの前の日に会いに来た。

会いに来たら一緒にどこかに行き、安い宿に泊まる。

そして駅で別れる。

長男には、元夫がいない間も

「この人がお父さんよ」と写真を見せていたので、すぐ馴染んだ。

だから、帰る時になったら

「お父ちゃん~帰らないで~」と毎回、泣いていた。

それを見ると…

待っていて良かったと思えた。


満期までお金を貯めて、一緒に暮らしてやり直そうと話し合った。

そして、満期を迎え家族揃って生活することになった。

元夫は近くの工場に働きに行った。

出かける時は、ベランダから

「お父ちゃん、行ってらっしゃい」

と声を掛けていた。

幸せな日々…


しかし、長くは続かなかった。

元夫は、腰が痛いなど体調を理由に仕事を休み…

ついには行かなくなった。

そして、刑務所で一緒だった人達と、つるむようになっていった。

刑務所で一緒だった人と、どうやって連絡を取るのかと不思議だったけれど…

小さい紙に連絡先を小さい字で書き、それをシャーペンの中にしのばせていたのだ。

私は…

その努力を違うことに使えよ

と思うようになっていた。

そんな生活でも、長男は元夫が帰って来ると

「お父ちゃん、お帰り~」と嬉しそうにしている。

そんな長男の気持ちも知らずに

元夫は、毎日コソコソ何かをしていた。

そして、長男の4歳の誕生日会を実家で開いてくれた日も、来ることはなかった。


これから起きる大きなことを知りもしないで、元夫はどんどん悪の道に進む。

私は、これからの事実を元夫に伝えるかどうか悩んだ。

でも、なんて言う?

「あんた、もうすぐ捕まるからじっとしていて」

そんなの信じるわけない。

しかも、打ち明けるメリットは私にはない。


そうまでして、助けたって

元夫は…


悩んでいるうちに

その日は、やって来た。

いつかは分からなかったから日々、過ごすしかなかった。


元夫は、刑務所仲間と出かけて行った。

数時間たってから、家の電話がなった。

これかもしれない…

と思いながら電話に出る。

刑務所仲間からだった。

「元夫と質屋に行ったけど戻って来ない。捕まったのかも」

やっぱりね…

元夫は、免許書を偽造していた。

「知ってる」と思いながら警察からの電話を待つ。

やはり、警察から電話がかかって来た。

公文書偽造同行使

覚せい剤使用

車の窃盗にも関与していた。


またも私は絶望する。

テレビや新聞でも報道される事件となった…

私は、慌てて荷物をまとめて実家に帰らせて貰った。


分かっていても

辛いものは辛い…


私は、23歳になっていた。

「あの人」に会えるまで

あと、16年…

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