第12話 葛藤
私は21歳になっていた。
警察署で事情聴取を受けたり…
養鶏場に連絡をして、兄と一緒に荷物を取りに行ったり…
絶望の中でも、ゆっくりはさせてくれなかった…
警察署にいる間は接見禁止
拘置所に移った元夫は面会に来て欲しいと手紙を出して来た。
面会に行くと…
待って欲しい。もうしない。
今度こそ止めると言う。
手紙にも、それを書いてくる。
ここで離婚すれば…
私は、これからも苦労するであろう人生から解放される。
1回目の人生で、どれほどそれを望んだことか…
長男は、まだ2歳でこれから一人で生きられるのだろうか…
しかし、その選択をすれば未来は変わってしまう…
「あの人」には会えない。
私が過ごしていた未来は今どうなっているのだろう。
私は死んだのかもしれないな…
「あの人」は、今どうしているのだろうか…
「あの人」は、私より6歳年下…
「あの人」はまだ、15歳か…
その頃、どこに住んでいたのかも分からない。
たとえ会いに行ったとしても…
私と「あの人」が愛し合うのは今ではない。
考えても答えは1つしかなかった…
私は、待つという選択をした。
長男を連れて面会に行くのは嫌だったので兄嫁に見て貰い、面会に行った。
裁判で、証人出廷もした。
また「被告人が悪いことをしていたことに気付かなかったあなたが、再犯しないように見ることは出来るんですか」
とキツイことを色々言われたけれど…
耐えるしかなかった。
判決は1年。
それから離婚をした。
母子家庭の手当を貰うには拘禁では、1年過ぎてからしか貰えない。
だから、離婚して内妻で面会に行った。
仕事は、兄嫁と交代で行くことにした。
朝から夕方までは、私が長男と甥っ子を見て夕方からは兄嫁に長男を見て貰って
居酒屋で働いた。
そこで、私は少しだけ恋をする。
16歳の見習いの男の子に誘われて、遊びに行ったりしたが
ただ「あの人」を思いだすだけだった…
彼には彼女もいたけど
年上の私に興味をもっていただけなのだろう…
彼女は店の古株のお姉さんの娘だったし…
それ以上、何もおきなかった。
刑務所は隣の県でも、バスで4時間かかる。
めったに行けないが日帰りで4時間かけて会いに行った。
4時間かけて行っても会えるのはたった30分。
そして、また4時間かけて帰る。
手紙は毎日書いた。
書くことがないから日記のような手紙…
長男の成長の写真を一緒に添えて…
1年後、元夫は出所した。
いきなり、本人から電話があって出所を知った。
今回は、引き受け人なし。
私は実家にいるから引き受け人にはなれなかったのだ。
そんな人のために保護会というものがあり、そこに帰ることが出来る。
ただし、仮出所で出ても満期までは
そこで過ごさなければいけない。
1回目の人生は、嬉しかったのだけれど…
今回は複雑だった。
私の気持ちも大人になりつつあった…
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