第15話 25歳の青春

私の父は、兄たちと暮らしている時も

時々、飲みに連れて行ってくれた。

長男は兄嫁に見てくれるようにと父から頼んでくれていた。

兄嫁も父から言われると断れなかったようだ。

父と暮らすようになってからは

「長男を見てやるから遊びに行ってこい」と言ってくれて…

それからは、月に何度か

友達と飲みに行ったりした。


私は、みんなが車の免許を取って遊んでいる頃、長男が生まれていたので

一緒に遊ぶことが出来なかった。

だからか…

その頃はそれが楽しくて仕方なかった。


父は、毎朝私と長男を保育園まで送ってくれて、帰りも私が長男を迎えに行った後で近くの駅まで迎えに来てくれていた。


土曜日は、父が長男を迎えに行ってくれて、昼で終わる私の仕事場に迎えに来てくれて温泉に行ったり

冬には、一緒にスキーにも行った。

この頃が人生で一番父と過ごした日々だった。


そんなある日

元夫の兄から元夫の父が亡くなったと連絡が入った。

元夫にはすぐ手紙で知らせたが…

服役中に父親が亡くなるって

どんな気持ちなんだろう…

葬式にも行けず…辛いんだろうな

そう思いつつも、その頃から私は

元夫が帰って来る日が近づくたびに不安に襲われていた。

また戻って来たら、また私は

毎日、元夫を疑い鞄の中を見たりするのか…

そんな自分もすごく嫌に思えた。

手紙も、どんどん書けなくなっていた。


「あの人」はどうしているのだろう?

今なら、結婚する前に住んでいた家にいるかもしれない

そう思って、家の近くまで行ってみた。

家も分かっていてもピンポンなんて押せるわけがない。

今、会ったって過去が変わるだけだし

私たちが出会うのは今ではない…

そう分かっていたけれど

一目会いたいと思い暫く近くにいたが

会えなかった…


それから、私は会社で一人の青年と出会った。

彼は仕入先の配達の人で

その受け取りをしていた私は倉庫でよく話をした。

彼はまだ19歳だった…

「あの人」と同じ19歳。

彼とは誕生日が1日違いで、すぐ26歳と20歳になった。

友達カップルと長男と彼と私で遊びに行ってからは、もっと距離が近くなっていて…気付いたら好きになっていた。

彼に彼女がいると聞いた時には、もう遅かった…

分かっているはずなのに…

気持ちは止められないんだな。


それから、週末の夜になると彼が迎えに来て遊びに行く。

長男は父に頼んで…

毎日が楽しかった。

彼は、彼女と別れると言った。

私も、籍は入ってないとはいえ元夫がいる身だったので

彼女と別れることは強要していなかったけれど…

私も元夫と別れる決意をした。


まず、父と兄に言った。

そうすれば、気持ちが揺るがないと思ったからだ…

父と兄は、すごく喜んでくれた。

私は、元夫に


「別れて欲しい」と手紙を書いて出した。


手紙を書きながら分かっていてもなぜか、涙が溢れた…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る