第8話 裁判

初公判

初公判に出廷した元夫は髪を坊主にしていた。

ロープを腰に回され、手錠を掛けられていた。

手錠は、公判の席に座る前には外されるが

その姿を見るのは、悲しかった…


元夫は罪名については認めていたので後はいかに刑を軽くするかにかかっていた。

執行猶予期間が残っていたので実刑は免れない。


初公判の日

元夫の父が情状酌量で証人出廷した。

「犯行に気付かなかったのか」

「出所して、ちゃんと見張ることが出来るのか」等、色々聞かれる。

それと、出所後の仕事も決まっているということで

ある会社の社長さんに出廷して貰った。

帰ってからの仕事の内容や、同じく覚せい剤に手を出さないように見張ることは出来るか等聞かれていたが、社長はしっかり答えてくれた。

終わりに、次回の公判日が発表される。

3週間後だった。


公判が終わってから、元夫の両親と一緒に面会をした。

父は「情けない…こんなことは二度としたくない」と元夫に言った。

元夫は「すまない、もうしない、大丈夫」と答えていた…

面会で差し入れをする時本は検閲される。

当然、手紙も全部検閲される。

スエットパンツの紐は、自殺防止で抜かなければならない。

差し入れする物はすべて書かなければいけない。

食べ物は差し入れできない。

たまに宅下げといって持って帰って欲しいものを本人が頼んでいる時は宅下げ願いを出す。

持って帰った本の、最後のページには

検閲したという紙が貼ってあった。

色々とルールがあったな…

普通はこんなことを経験することは無いので思い出すまでに時間が掛かった…

面会をするまでは楽しくて仕方なかったけれど…

帰る時には寂しくて悲しくて

何ともいえない気持ちになる…


裁判で弁護士が必要になるが、お金がないと私選弁護士は頼めない。

そんな人のために国選弁護人制度というものがある。

当番弁護士という制度もあるので当番の弁護士が公判にあたってくれる。

当然、うちも国選弁護人にやって貰った。

だからといって適当にやる弁護士さんはいない。

刑が軽くなるように、しっかり考えてくれた。


3週間後

2回目の公判で、私は証人出廷をした。

一度目の人生で、検事に色々言われて悲しかったことを覚えている。

二度目の人生でも

「被告が覚せい剤をしていたのを気付かなかったのか」

「未成年のあなたと、ふしだらな関係を持っていた」

「未成年のあなたに被告を見張ることは出来るのか」

など、本当に色々言われた。

本当に気付かなかった…

本当に知らなかった…

悲しかったが、そんな暇もなくその日に結審し…

検察から1年半の求刑があった。


それから2週間後

ついに判決の日が来た。

1年の実刑。プラス6か月の執行猶予期間が加算された。

ただ未決拘留の算定が30日あったので、その分マイナスされる。

これで1年5か月は帰ってこれないことが決定した…

判決後、2週間以内に控訴しなければ

2週間で刑が確定される。

確定すると被告から受刑者に変わり

受刑者として仕事をするようになる。

それまでは、毎日面会に行けるので

私は、毎日面会に行った。


一度目の人生は、これからどうなるのかと不安だった…

でも、私は知っているから大丈夫…

元夫の父と同じように二度とこんな思いはしたくないと

思っていたのにな…


それから2週間後…刑が確定した。

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