第7話 離ればなれになる二人

その日

私は車の中で一人で待っていた。

警察署に連れて行かれた元夫が、帰って来ることは分かっていた。

一度目の人生では、何が起こっているのか分からなくて不安でしょうがなかったのを覚えている。

でも彼は、思った通り帰って来た。

本来ならそのまま逮捕されるところなのだが事務所との話で二週間後に出頭するということになったという。


それから、毎日一緒に過ごした。

けれど、ある日元夫は「逃げよう」と言って来た。

それからは知り合いの家を転々をして…

どれくらいの月日が経った頃だろうか

父が心配して警察に捜索願いを出していた。

結局、事務所の人達に見つかってしまい帰ることになった。

それから元夫は出頭した。


罪名は、覚せい剤取締法違反。


これも、すべて分かっていることだった。

自分の中で、大人の私の気持ちと子どもの気持ちが混ざり合ってすごく複雑だった。

くずな人だったけど私は、元夫を愛していた。

だから、私は一度目の人生と同じように一生懸命に元夫に尽くすと決めた。

それがあったから「あの人」に会えたのだから頑張ろう。


こうして、私と元夫は離れ離れになった。

警察署にいる間は、面会できなかったが拘置所に移ってから初めて、面会に行った。

最初は、分からないので事務所の人と一緒に行った。

大きな門の横の小さな門から入りまず、荷物検査がある。

それから受付に向かう。

受付で面会する人の名前を書き自分の名前や住所を記入して提出すると番号札を貰える。

番号札の番号が放送されたら「〇番の部屋に入って下さい」と言われるので部屋に向かう。

部屋に入ると真ん中に仕切りがあって丸の中にブツブツと穴があいていた。

一人だと10分、二人だと20分になる。

面会は、被告人一人に対して1日1回と決まっている。


面会室での彼との再会。

決して触れることのできない部屋。

そして彼の方には刑務官がいて、面会内容をひたすら書いていた。

一緒に行った人がいたから思うように話せなかった…

それでも、久しぶりに会えたことはすごく嬉しかった…


私は、ずっと学校を休んでいたので進級できないと言われ、高校を中退した。

だから…

毎日面会に行った。

最初は午後に面会に行ったが午後は、暴力団関係の人が多く

16歳の私は、ジロジロ見られたり話しかけられたりするので午前中に行くことにした。

私以外の人が面会に行きたい時は連絡を貰って一緒に行く。

暫く、そんな日々が続いた。


そして、裁判の準備のために初めて元夫の父と母に会った。

生きている父と母に会うのは何年ぶりだろう。

複雑だった…

元夫は、若い頃に交通事故を起こしていて執行猶予中だったので

今回の刑に、執行猶予の残りが追加される。

情状酌量の証人として元夫の父と私

そして、出所後の仕事先の社長が出廷することになった。


そして、裁判の日がやってくる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る