第9話 待つ
確定すると面会は月に1回になる。
確定したのが、月の中頃だったのでその月は、もう一度面会することが出来た。
時間も30分になる。
受刑者になると家族しか面会できない。
私は家族ではないが、「内妻」として元夫が登録していたので面会することが出来た。
面会の申し込み表に関係を書く欄があり、今までは友人と書いていたのだが
「内妻」と書く。
それだけでも嬉しかった。
面会に行くと
今までは普段着だった元夫の姿は作業着に変わっていた…
翌月も面会に行った。
たった30分の面会。
帰りは本当に寂しくなる。
私は、寂しさを埋めるためとお金を稼ぐため近くのスーパーの中の靴屋さんでアルバイトを始めた。
その翌月、バイトが休みの時に面会に行き、いつも通り受付で名前を書いて出すと
少しして受付の人に呼ばれた。
「もう刑務所に移ったらしい」
「何処に行ったんですか」
「それは、教えることは出来ないんだよ」
毎日面会に行っていたから受付の人とは仲良くなっていたので頼み込んでみた。
そしたら、「内緒だけど隣の県に行ったよ」と教えてくれた。
たまたま、その日は田舎から戻っていた親友と面会に行っていたので
その足で一緒に行くことにした。
電車で隣の県まで行った。
まず、場所が分からない…
本当は知っているんだけど…
親友の手前、知らない振りをした。
スマホがあれば、行きかたなんてすぐわかるのに…
と思ったが、この時代にそんな物はない。
駅を降りて
すぐそばにある派出所に行った。
「〇〇刑務所はどうやったら行けるのですか」
恥ずかしかったけど…
丁寧に教えてくれた。
そして…
辿り着いた2度目の人生、初めての刑務所。
親友には入口の待合室で待って貰い私だけ中に入った。
受付をして暫くして名前を呼ばれ面会室に入るとそこは小さな部屋に
机と椅子があるだけ
拘置所みたいに真ん中に遮る物がなかった。
そばには、やっぱり刑務官の人がいるけれど話をしながら手を握ることもできる。
古い刑務所だからだろう。
本来なら、本人が手紙を出して移ったことを知らせるようになっていたので
元夫は驚いていた。
たった30分の面会なのだが
その日は親友に話を聞いて貰い、ウキウキして帰った。
それから、バイトが休みの日に月に1回、面会に行く生活が始まった。
手紙もできるだけ書いて出した。
ある日、面会に行って
刑務官の人に「時間だぞ」と言われて、立った瞬間元夫がキスして来た。
びっくりしたけど…
嬉しくて一人でニヤニヤしながら帰った…
その時は、元夫を愛していたから1度目の人生の時もすごく嬉しかったのを覚えている。
その日はバレなかったけど次の面会の時には見つかってしまい
後で、刑務官の人にめちゃくちゃ怒られたって言ってたな…
もうするなと注意されたと…
普通なら懲罰ものだけど許して貰ったと言っていたことを思い出した。
その後、級があがると面会は月2回になり…
真面目につとめていた元夫は外の養豚場に作業に行くようになったので
平日の面会が出来なくったとして異例だが、日曜が面会時間となった。
日曜日もバイトがあったので午前中休みを貰い、面会をした後で
バイトに出るという生活を続け数か月した頃…
元夫の父から連絡があった。
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