第06話 清潔感って難しい……

 

 春休み。以前は免許でも取ろうかなって考えていたけど、いまは春姫さんの言う『めちゃモテ道』に時間を使っている。

免許は……来年、いや夏には取ろう。

そんなことを考えながら日々のルーティンをこなす僕。 



「あらためてモテるためには、五つの課題を解決する必要があるの『一顔、二お金、三知名度・地位、四身体、五清感』よ」


「顔もお金もない俺、終わったぁぁああー!」


「……んんっ、つまり勇気くんがどんなに頑張って口説いても、ジャニーズや韓流アイドルには勝てないってことよ」


「まぁそこらとは張り合う気がないからなー、あんまり悔しくないな。

でも、ならイケ顔じゃない男はどうすりゃいいのさ?」


「ふふふふ、でも実際イイケメンでなくてもモテる男はいるわよね? 例えば運動部の爽やか男子とか、そこそこ人気のYoutuberとかが可愛い子と付き合っている例はあるわよね?」


「確かに……」


 僕は女性アイドルと結婚したYoutuberや芸人を思い出した。


「つまりイケ顔でなくても他の要素で補えば、よほどのメンクイでもない限りは、問題なく対象の女の子を口説けるってわけね」


「おおおお! 一生付いて行きます!」


 僕は九十度で頭を下げた。


「今日までやって貰った勉強と筋トレは、二のお金と三の知名度・地位、四の身体と五の清感を獲得する上では避けられないものよ」


お金知名度・地位4は納得できるけど5の清潔感ってイマイチピンとこないんんだよな」


「極論だけど実際に清潔であることと、清潔感は全く別問題なのよ」


「……? どういうことだ?」


 僕の顔は宇宙猫のようになっていたことだろう。

 全く理解できなかった。


「汗だくの太ったリーマンと、肌トラブルを抱えた女性どっちが清潔かという話よ」


「なるほど……」


 納得がいった。


「私なりに清潔感を無理やり言語化すると、

『際だった個性がなく、全体的に薄付きで人に不快感を与え辛い恰好』よ。

いいところを評価するプラスではなく、マイナスで考えて百点に近い無難なもの……それこそが清潔感の正体だと思うの」


「……? つまりどういうことだってばよ?」


「例えばロリータやメタル、ヴィジュアル系はプラスなら得点が高い服装で、白いワンピースと麦わら帽子に代表されるいわゆる『清楚』系の服装は、マイナスだと得点が高い服装ってこと、つまりはシンプルイズベストってことよ。」


「なるほど……」


「清潔感の減点ポイント……幾らイケメンで洋服や頭髪にお金をかけていても肌が汚ければ全て駄目。

理論や理由なんて合理的な説明なく人間の本能として不潔だと判断する部分なのよ」


「でもそういうのってメイクで隠せるんじゃないか?」


「そう考えるわよね男の人って……でも肌のコンディションが悪いと化粧も上手くなじまないし、凹凸が隠しにくいのよ。

それでもメイクをしないことが多い男子の方が、肌のコンディションはより重要と言えるわ。まずは肌質を診断しましょう」


 スマホで質問に答えると『脂性肌』と診断結果が出た。


「『脂性肌』ね……肌表面が油ぎってるから、洗顔料を使って質の悪い油を洗い流して保湿をする必要があるの。実際にやってみましょうか?」


 二人揃って脱衣所の洗面台前にたってぬるま湯をだす。

 春姫さん曰く温度は高すぎても低すぎてもいけないらしく理想は約40度程度らしい。


「いままで普通の石鹸でやってるんだけどそれでもいいの?」


「脂性肌なら洗浄力が高い洗顔料でも問題ないと思うけど、心配なら牛乳石鹼などの洗浄成分が弱いものを泡立てネットでキメ細かい泡にすればいいわ。今回は私のを貸してあげるわね」


「ありがとう。汚れは油性だから同じ油性の石鹸に溶けるってわけか……」


 今回は洗顔料も借りることにした。


「その通りよ。角栓や、角栓の表面が酸化して黒ずんだイチゴ鼻の対策には粒……スクラブ入り洗顔料などを使うと効果的ね。

その分ダメージも大きいから使用頻度は抑えめに、間違っても角栓パックなんてやっちゃだめだからね。あれは百害あって一利なしのモノよ。軽いイチゴ鼻になってるから今日はしっかり洗浄しちゃいましょう」


「お、おう……」


 先ずはぬるま湯で二分ほど予洗いしてから、洗顔ジェルで鼻、おでこなどの角栓が溜まりやすい部分を重点的に洗い流した後、泡立てた石鹸を手に取って玉を転がすようにして泡で顔を数十秒ていど洗う。

なお、やりすぎは何事も良くないとのことだ。

 

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