第30話 狂愛のじかん

 本当に何が起こったのかわからない。


 部屋に入るや否や電気を消され、背後からやって来た式乃にいきなり目と口を塞がれた。


「っ……! っっっ……! っっーっ……!」


「うふふふっ。ごめんね……ごめんね……お兄ちゃん……? もう私……こうするしかないんだぁ……」


 動く手足で目元に付けられた何かを取ろうとするも、式乃がグイグイ口の中に布のようなものを突っ込んでくるので、上手く抵抗できない。


 体もおかしかった。


 徐々に力が抜け、意識が朦朧としてくる。


 恐らく口内に入れられたものが原因だ。


 きつい薬品の匂いがする。


 何を使用しているのかはまるでわからないが、その匂いだけで危ないものだということが推測できた。


「っ……っ……」


「あははっ……抵抗する力も弱くなってきた……♡ そうだよ……お兄ちゃん……♡ 体の力抜いて……全部……ぜーんぶ式乃にゆだねてくれていいからね……♡」


「…………っ…………」


「お兄ちゃんは…………」


 ……式乃のモノだから……。






●〇●〇●〇●






 どことなく変な匂いがする。


 その匂いに導かれるように、途切れていた意識が薄っすらながら回復した。


 自然と目を開けようとするが、どうも上手くいかない。


 目元には未だ何かを付けられたままらしかった。


 体の感覚もおかしい。


 どこかビリビリと甘い痺れが残ってるようなのと、ひどい倦怠感のせいでスムーズに体が動かせなかった。


 いや、違う。


 動かせないのは痺れとか倦怠感のせいだけじゃない。


 首、胴、脚、と何かロープのようなもので縛り付けられている。


 主にそれらのせいで俺は体の自由を完全に失っていた。


「……っ……っっっ……」


 感覚的に、服も脱がされている。


 実際に目にすることができないからどうなっているのかはまったくわからないが、上半身はカッターシャツがはだけさせられ、下半身の方は何もかも脱がされている。パンツすら脱がされているようで、完全に肌が空気に触れていた。


 式乃はなんでこんなことを……。


 妹のことを思い浮かべていると、向こうの方からガチャリと音がする。


 扉が開けられた音だった。


「…………あ……♡ お兄ちゃん……意識戻ったんだね……♡」


「っ……」


 ゾクッとする。


 普段聞く式乃の声とは何か違う異質な感じ。


 俺の肌を舐めまわすような、ねっとりとした声音に背が凍った。


 何をされるかわからない。


 恐怖を抱いていた。


 好きだったはずの妹に。


「一応ね……パパとママには言ってきたよ……♡ お兄ちゃん……今すごく落ち込んでて学校に行ける状態じゃない……式乃の部屋に閉じこもっちゃってるからなるべく刺激しないであげて……って……♡」


「……!?」


「お世話は全部式乃がするって言った……♡ だって……式乃の部屋にいるから……♡ 式乃の部屋には……式乃しか入れないもんね……♡」


「っぅ……! っっっ……!」


「うふふふっ……♡ うーうー言ってるお兄ちゃん……可愛い……えぁぁ~……♡」


「――ッッッ!?」


 頬にぬるっとした感触のモノが当てられる。


 それはにゅるにゅると動き、式乃の吐息と共に動いていた。


 舐められてる。


 俺は今、式乃に頬を舐められてる。


「……ふふふっ……はぁ~……♡ こうやってお兄ちゃん味を味わえるのも全部式乃だけ……♡ 式乃だけなんだよ……お兄ちゃん……♡」


「っっ……」


「買ってたゴムもね……ぜーんぶ使っちゃった……♡ お兄ちゃん……すごいね……意識失ってても出ちゃうんだもん……♡ おかげで式乃……ここが今ヒリヒリしてる……♡ お兄ちゃんので……徹底的に屈服させられちゃった……♡」


「っ……」


「でも……あれだけヤっても……お兄ちゃんのはまだまだ元気そうだね……♡」


「っっっ……!」


 体がビクッと跳ねてしまう。


 熱く怒張した箇所に、式乃の華奢な指がいじらしく触れてくる。


 裏の部分を指先でなぞるように触られて、俺の腰は跳ね上げた。


 式乃は恍惚の声音でクスクス笑う。


「きもちー……? おにーちゃん……? きもちーよね……♡ まだこんなに硬いんだもん……♡」


「ぅっっっ……! っっっ……!」


「あはははっ……♡ すっごい反応してる……♡ ここも……こーやって……カリカリ……♡」


「ぅぐっっ……! っっっーっ……! っっっっ~……!」


「あぁぁぁぁ……♡ またぬるぬるしてきたぁ……♡ すごぉい……♡ おにーちゃん……すごいよぉぉ……♡」


「ふーっ……! ふーっ……! ふーっ……!」


「いいんだよ……いっぱい……いっぱい……式乃で気持ちよくなって……お兄ちゃん……♡」


「っっ……」


「それで……式乃以外の女の子と会話できなくなるくらい……私に堕ちよ……? 頭の中……ぜんぶ……ぜーんぶ式乃にするの……♡」


「っぐ……」


「まずね……そのための第一段階……♡」


「……?」


「これをずっと耳に付けててもらうね……♡」


 甘い快楽の波とシャットアウトされている全身の感覚。


 その中で唯一自由にされていた部分。聴覚が遂に支配されてしまった。


 式乃は俺の耳にイヤホンのようなものを付けてくる。


「じゃあ、スイッチオン……♡」


「――っ!?」






『お兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好きお兄ちゃん好き』






「っっっ! ぅぐあっっっ!!!」


 耳を這うような式乃の声の連続。


 それがそこそこの音量で永遠に続く。


 脳がさらに痺れ、耳が震える。


 その耳を式乃はさらに甘噛みしてきた。


「……徹底的に改造してあげる……私仕様のお兄ちゃんに……」


 ――二度と他の女が近付けないレベルで……。


 狂気をも感じる式乃の声と共に、俺は自分が一つ一つ壊されていくような、そんな感覚に陥っていた。











【作者コメ】

切に願う。運営殿。BANしないでください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る