#023 武器開発とタイムリミット

「それで、この子が"ミヤコ"、私はミャー子って呼んでる」

「……ども」

「あぁ」

「「…………」」


 紹介されたのは、見るからにインドア少女のミヤコ。コイツも戦力外認定を受けており、たしか生産系の能力者だったはずだ。


「いちおう私も少しは出来るんだけど…………本格的な加工はミャー子頼みで、私は(銃器の)知識担当って感じなの」

「「………………」」

「あのぉ~、はじめてで緊張するのはわかるけど……」

「気にしていない」

「おなじく」

「えぇ~……」


 工作女子というやつだろうか? 暇さえあれば支給された道具や魔法を駆使して武器防具を改造しているようだ。気まずさが無いと言えば嘘になるが、それでも変に絡んでくるエイミよりはやり易くて助かる。


「それで、魔法銃を調整して貰えるって話だが」

「あぁ、そうだった。とりあえず手のサイズとか、色々見ていくね」


 エイミが持っていた魔法銃をそのまま貰ってもいいのだが、手の大きさや、炸薬量(魔法で射出しているので魔力消費)、あとは弾丸の口径など、色々カスタム要素はあるようだ。


「それで、形はどうする? これ、試作品サンプル

「あぁ、見せてくれ」


 魔法銃の構造はエアガンが近い。薬きょうを排出する機構こそ無いが、水鉄砲と違って弾丸の送りや再装填は必要になる。


「やっぱり、信頼性重視ならリボルバーや、それこそシングルショットかな」

「俺は弾丸に"能力"を付与できる。基本的には1発当たればそれでいいんだが……」


 シングルは、ライフルやグレネードランチャーのような単発撃ち。構造もシンプルで一発入魂な俺の能力とも相性がいいものの、外した時のリスクが大きい。何十発と撃てる必要はないが、リボルバーの6発撃ちや、二連式ショットガンのような方式も良いかもしれない。


「能力?」

「あぁ、俺は呪いの勇者でな、相手を……」

「「プッ!」」

「おい、何で笑う」

「いや、なんか、ゴメン。ちょっと、納得しちゃった」

「…………」


 どこを見て納得したのか、小一時間問い詰めたい気もするが、面倒なのでここは折れておく。


「いちおう、こういうのもある」

「おぉッ」


 正直、驚いたというか、ガラにもなくちょっと男のロマンを感じてしまった。


「そういうの、銃としての観点からは、あまりお勧めできないんだけどね」

「あと、こっちは刀身を飛ばせる」


 出てきたのは剣と銃が一体化したもの。銃にナイフが固定されているだけのものもあれば、銃身に直接刀身がついているもの、あるいは剣の中に弾丸を射出する機能がついているものなど多彩だ。


 二兎を追う者になってしまいそうな気もするが、乱戦や奇襲性を考えると、こういうのもアリなきがする。


「でも、やっぱり銃って魔物と相性悪いらしいから…………力を入れているのは"コッチ"なんだけどね」


 出てきたのは槍。ジャンルとしてはマジックシューターのような武器系の魔道具になるのだろう。先端に魔法術式が仕込まれており、『相手に突き刺して、体内で爆発を起こす』という凶悪な武器のようだ。なかなか強そうではあるが…………前衛はある程度育つと自前で魔法的に強化した斬撃を放てるようになる。それが出来ないなら無理して前にでるな、『邪魔だから後方でマジックシューターでも撃っていろ』って結論に達してしまう。


「姫様が来たら、次はもう第一陣が出る。試行錯誤もいいが…………それまでにあるていど形にしておかないと、それどころではなくなるぞ」

「「………………」」


 俺たちは『試験に合格するまで、ココでじっくり鍛練や武器開発に専念できる』わけではない。勇者なんて大そうな肩書を持っているが、実体はただの"上級傭兵"。待遇も、成果に応じて低下していく。




 こうして俺たちは、来たる日に備えていた。

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