#021 カモフラージュと影人形
1回戦、加速術式で強化した魔法弾に対し、俺は遅延魔法で着弾をズラしての絨毯爆撃で勝利したが……。
2回戦、不意打ちをくらってアッサリ負けてしまった。もちろん油断していたつもりは無いが、だからこそと言うか…………じっくり距離をつめてくるエイミに対し長期戦を覚悟したところ、突然<ヘビーストーン>が死角から降ってきたのだ。
「それじゃあ、これが最後だから。準備はいい?」
「いつでもどうぞ」
まぁこの展開は、アイツの能力を聞いた時から予想していた。エイミはサバゲーの勇者であり、射撃能力に加えて"隠密行動"を補助する魔法も使えるのだろう。
「強気ね。まぁいいわ。それじゃあ…………開始って事で」
「…………」
察知されずに接近して、相手の大将を狙撃できる。これが地球なら最凶クラスの能力だっただろうが…………この世界には魔法があり、魔法生物がいる。(禁止されてしまったが)たとえば<サイレントナイト>や結界で広範囲を妨害すれば、その手の繊細な魔法は(多少減速してもかまわない攻撃魔法と違って)簡単に解除できるし、銃弾が貫通した程度で魔物は即死しない。それに……。
「これなら!」
「そこにいたか」
「え!?」
初歩的な闇魔法の応用。立っていた位置に影で作った人形を置いておいたら、まんまと誤認して撃ち抜いてくれた。
「やはり射撃タイミングや、撃った魔法は隠蔽の適応範囲外なんだな」
「ご名答。まさか一発で対応されるなんて」
魔法の基礎を理解していれば、この程度は即興で対処可能。それにこのタイプの魔法はすでに存在しており、専売特許になっていない。そして極めつけの弱点が…………コレで敵陣に斬り込んだとして、本人が弱すぎて生きて帰れないのだ。
「2回戦目で奥の手を引き出せて、助かったよ」
「でも! まだ終わっていないわよ。魔力は温存できているし、さっきのだって、ちゃんと確認したら……」
「フッ。ただの黒いマネキンだ、見破るのは難しくないだろうな」
山なりの弾道の<ヘビーストーン>を使ったのは、魔法を放つ瞬間の隙を遮蔽物ごしに射撃することで補ったのだ。隠蔽魔法が割れてしまった今となれば、死角にこだわらず、中距離からの早打ち勝負に持ち込む選択肢もある。
*
「不味いわね。これが、本気って事?」
仕切り直しての、正真正銘最終戦。私は早々にコウヘーさんを見失っていた。
「こっちにも……」
視線の先の障害物から、わずかにはみ出す黒い影。たぶんダミーだと思うが、だからといって近づくのも怖い。
私の<カモフラージュ>は、言ってしまえば"透明人間"で、静止状態や視界端にうつる程度なら大丈夫なのだが、本格的に注視されると見破られてしまう。そのため1度射線を切ったのだが…………その瞬間、各所にこの影人形をばら撒いたようだ。
「問題は、狙いが"櫓"なのか、それとも私か」
セオリーから言えば占領勝利を狙われる確率が高いのだが…………コウヘーさんの性格を考えると直接私を狙っている気がする。
「あれ、消えた?」
目の前の影人形が消えてしまった。たしかこういった魔法には制限時間があるはずなので、そういう事なんだろうけど…………問題はその制限時間をコントロールできる点だ。
あえて寿命の短い人形をだし、もう居ないと思って飛び出したところをズドンって展開が、容易に想像できる。
「音は…………ダメか」
<サイレントナイト>だったか、音を遮断する魔法もつかえるので、音で位置を探るのは不可能。これでは私の専売特許を奪われたも同然だ。
「ひとまず陣に戻って立て直すか……」
ショートバレルに弾速の早い<ウインドショット>をセットする。曲がり角でお見合いになれば<アクアウイップ>(エアガンでいうところの連射タイプ)が強いものの、中距離を考えるとどうしても<ウインドショット>(単発撃ち)が安定解になる。
「せめて影人形を出す瞬間を、見つけられたら……」
こうしてコウヘーさんとの勝負は、大詰めを迎えていた。
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