#017 射撃武器と再生

「珍しいわね、コウヘーさん。貴方が"ココ"に来るなんて」

「……そうかもな」


 射撃演習場に顔を出したら、そうそうにエイミにつかまった。ここでは結構な頻度で戦力外の連中が訓練をしており、今回はそこで使われているアイテムを体験しに来た。


「すでに魔法杖を使いこなしているんだから必要ないと思うけど…………まぁ、たしかにコレはコレで便利なのよね。ハイ」


 受け取ったのはマジックシューターと呼ばれる"魔道具"。通常の魔法杖は魔法を補助する武器であり、タブレットを使っていても使用者に調整の余地がある。対してマジックシューターは(基本的に)射撃系魔法専用で、形状はライフル銃。なにより魔道具として、極力調整の余地を省いた設計になっている。


「管理人みたいだな」

「ハハッ。じっさいココの常連だからね。ささ、とりあえず撃ってみて」

「……まぁいいが」


 マジックシューターは軍事兵器の側面が強く、コレを使えば誰でも簡単に特定の魔法を無詠唱で射撃でき、威力も一定。そのかわり威力は低めに設定されており、ようするに魔力量に応じて射撃可能回数が前後するわけだ。


 細かい調整ができないので臨機応変な対応が求められる戦闘では使えないが、国境を守る防衛線などでは『雑多な兵士を魔法使いにかえてくれる』魔道具として重宝される。


「おぉ、すごいすごい、行き成り命中だよ!」

「ヨイショはやめろ。俺はそういうの、されてムカつくタイプだ」

「そうなんだ。でも…………これだって最低限の魔力操作ができないと撃てないし、的に当てるのも、出来ない人は結構いるんだよ?」

「それは、そうかもな」


 調子が狂う。見た目の年齢は同じだが、たぶん年上。それも子持ちか、あるいは学校の先生とかかも。


「せっかくだし、コッチも撃ってみる?」

「あ、あぁ」


 受け取ったのはボウガン。要するに弓で、魔法だけでなく矢も実戦では使われる。


「やっぱり、スジがいいね。一発目から当てちゃうなんて」

「こんなもの……」

「矢をカケられない子だっているし、狙いだって……」

「それは分ったが、底辺したと比べるのはやめろ! 俺は魔族と戦うためにココに来たのであって、傷の舐め合いがしたいわけじゃない」


 ちなみに魔法を射出する銃やボウガンはあるのに、火薬式の銃は普及していない。いちおう火薬はあるらしいのだが、無かったとしても『魔法で弾丸を射出する武器』があってもいいところ。しかしそれが無いのには、とある大きな理由があった。


「そうね。……私、サバゲーが趣味で、適性が銃全般なの」

「そうか」


 地球では遠距離から急所を貫ける銃が発達したが、魔物の体は100%物質的に繋がっているわけではない。例えるなら液体生物だろうか? 剣による切断などは有効だが、弾丸による"点"の攻撃はすぐさま魔力で塞がれてしまう。


 それは矢も同じに思えるが、矢には矢じり(先端部分)だけでなくシャフトがある。そのため矢を取り除くまで再生を阻止してくれる…………つまりヒュドラの首を焼くような効果があるわけだ。


「ねぇ、私と勝負しない?」

「はぁ?」

「私が勝ったら、私たちの活動に協力してもらう」

「それで、受けるメリットは?」

「コウヘーさんが勝ったら、"コレ"をあげる」

「それは!」




 エイミが取り出したのは、まさに地球のハンドガンだった。

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