前のエピソード――噂１：■■小学校での噂

【２年４組　神崎大翔くん（仮名）の話】

　──あー、はい、あれですよね。あの、女が立ってるってやつ。

　──え？　ああ、一輝に聞いたんですか？

　──いやいや、違います。小学校じゃなくてぇ、中学校です。出るのは。

　──ええ？　一輝が？　僕から３年くらい前に聞いたって言ったんですか？　おっかしいなあ……。

　……ああ、どんな噂か、ですよね。

　えっと、午後の授業中に、ぼんやり窓の外を見てると、門のところに、夏なのにコートを着た女が立っているのが見えることがあるんです。誰でも見れるわけじゃなくて、偶然。偶然見えちゃう、みたいな。

　で、その女を見ると呪われちゃって。死んじゃう、って話です。

　──え？　小学校で聞いた噂と違うんですか？

　うーん……何でですかね……。

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【３年１組　野中夏織さん（仮名）の話】

　──え？　髪の長い女の噂？

　──えー、そんなの知らないです。ってか私、怖い話苦手なんで、やめてくださいよー。

　ねえ結花（仮名）は知ってる？　え、知ってるの？　ヤバい。怖い怖い怖い、やめてよー、聞きたくないから。

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【３年１組　平田結花さん（仮名）の話】

　私、その話知ってます。なんかー、男子が話しててー。

　午後の授業中に、授業聞かないで外見てると、なんか校門のところにコート着た髪の長い女が立ってて。それ見ると呪われて死ぬ、ってやつですよね。

　──えー、いつ聞いたか？　え、わかんない。

　え、なんか、折原先生（仮名）とかそういう作り話しそうじゃない？　授業真面目に聞いてないと呪われるぞ的な。

　え、ヤバい。先生に私が言ってたって言わないで下さいね！

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【折原康介先生（仮名）の話】

　──ええ？　そんなこと言ってた生徒がいたんですか？

　勘弁して欲しいなあ……。いや、確かにオカルトとか嫌いじゃないですけどね。

　その噂は……うーん、私が赴任してきた時にはもうあったと思います。はい。■年前ですね。その当時の生徒から聞いた覚えがあります。

　──えっと、授業中……午後の授業中ですかね。まあけっこう午後の授業って集中力落ちるじゃないですか。それでぼーっと窓の外を見てると、校門のところに、コートを着た髪の長い女が立っているのが見えることがある、と。もしその女を見てしまうと呪いにかかって、やがて衰弱して死んでしまう……って聞きました。私は。

　──え？　実際に死んだ生徒がいるのかって？　いや、まさか……いませんよ。少なくとも私が知ってる限りは……って、いやこんなのねえ、よくある学校の怪談的なやつですから。

　あ……そういえば、■■高校──そうですそうです、あの■■の方にある──あそこでも似たような噂があるって聞きましたよ。私の……知人が、そこで働いてるんで──そうです、教師です。彼から聞いたんですよね。あの、その、ねえ、私がオカルト好きなもので……教えてくれたんですよ。あ、もし取材に行くおつもりなら、私の名前は出さないで下さいね──。