第15話力
「お、やる気になったか、人間」
そう言い笑う魔族。
俺は魔族の動きに警戒しながら剣を鞘に収め立ち位置を調整する。
「何だ、逃げるつもりか。逃がすと思うな!」
魔族は何の警戒もせずに飛び込んできた。
「カイザード流 三 反」
抜剣技しかないカイザード流。
その技の一つが今まさに使っているこの技だ。奇襲を受けたときや何かしらの技で剣を鞘に戻した直後に攻撃を受けるなどの時に使える技だ。
剣を即座に出して後は相手の勢いを利用するだけ。簡単だと感じるかもしれないが実は相当難しかったりする。俺もこの技の習得には苦労した記憶がある。
この技で重要なのはタイミングと脱力である。タイミングはまず発動のタイミング、力を入れるタイミングだ。
それをジャストタイミングから±0.05秒以内にしなければならない。
感覚と反射神経が大事である。
相手が当たる瞬間に力を入れるのは至難の業だが、失敗すれば大変な事になる。
力を入れるのが早かった場合最低でも腕は骨折する。遅かった場合は相手の攻撃をもろに受ける。
また、その段階に至るまでも大変だ。なにせ脱力した状態で素早く剣を構えなければならない。
その際余計な力が少しでも入っていた場合間に合わなくなる。
完全に習得してない人が使うと諸刃の剣なわけだ。
しかし、マスターしている人が使うといかなる技でも的が突っ込んでくる限り確実に反撃できる。
上手いこと突っ込んできてくれたため助かった。正直どうすれば良いかわからなかったから逆に選択肢が一つになって迷いがなくなった。
人間だったらこれで終わりだが、相手は魔族。
「こりゃたまげた。ここまで深手を負うのは久しぶりだ」
血塗れになってはいるが体に損傷は見られない。
即座に再生したのだろう。
「どうやら、分が悪そうだ」
そういうと魔族はあらぬ方向に魔法を放った。その先を見ると腰を抜かしている人がいた。
さすがに剣では間に合わない。そのためコマンドを開く。
ウォーターを選択しその放たれた魔法に対して打つ。
すると俺の意思を読み取ったように変な軌道をとり人と放たれた魔法の間に入った。凄い衝撃が生じたものの腰を抜かしていた人は無事だったようだ。
「お見事。でも、これで動けないでしょう?」
少し目を離した隙に魔族はシーターを抱えていた。
さすがに人質をとられた時用の技はない。
「私のことは気にしないでください!」
そう言われても俺にそんなことは出来ない。両手をあげた。
「やはり恋人だったか。お前は危険だ。こいつは人質として貰い受ける。じゃあな」
そう言って飛び去っていく魔族。
もう奥の手を出さないと間に合わない。
『力が欲しいか』
奥の手を出そうと瞬間その言葉が聞こえその奥の手さえも届かぬ距離に離れてしまった。
その時点で答えは決まっていた。
「欲しい」
『力の解放許可を受諾。期間、対象の死亡確認まで。代償はその期間の体の使用権。スタート』
その言葉を最後に意識が遠退いていった。
◆
「久しぶりに体を動かせるな。今回は体をほぐす程度にするか。この宿主を見ているのは面白いからな」
レイの口から発せられた言葉だが当然これはレイのものではない。
「さて、」
そう言った直後彼の体はその場には無かった。
◆
シーターは自分の不用意さを悔やんでいた。家に帰った後レイも入ってくるものだと思っていた。
それが中々帰ってこないため玄関で待っていたのだ。その結果、急に入ってきた魔族に捕まってしまった。
もう逃げることが出来ないことを悟り、諦めていた。
しかし、次の瞬間、
「ぐおっ!」
突如魔族が声をあげた。何事かと思ったが魔族の手が離れ落ちていく感覚を覚えるがそれもすぐになくなった。レイが受け止めてくれたのである。その時色々不自然なことに気づく。
まず、レイ自身が浮いていること。そして、何よりいつもと雰囲気が違うことに。
「だ、誰ですか?」
「む?バレたか。何者かとだけ名乗っておこう」
とにかくレイではないということはわかった。
「この宿主は面白いから敵対したくない。よってお前は助けてやる」
その瞬間謎の力によって村にまで飛ばされていった。
◆
「さあ、なまった感覚を戻そうか」
そう言うレイ?の前には先程の魔族が血を下に垂らしていた。
「その圧倒的な力。ま、まさか・・・・・・」
「魔王とでも言いたげだな。お前達が待ち望んでいる魔王ではない。教えた代わりに楽しませてくれよ」
そこからは見てられないものだった。
魔族はギリギリ再生できる程度でずっと半殺しの状態が続いているのに対してレイ?の方は汗一つかいていない。
圧倒的な力差があったのだ。
「肩慣らしにもならんな。飽きたからもう用済みだ」
その一言と共に放たれた一撃で魔族は事切れた。
『期間終了。10秒後に代償の効果が解除』
「しょうがない、元の場所に戻っておいてやるか」
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