第14話緊急事態
扉を開け中に入るとすぐさま手で目隠しをされた。
手なので隙間から多少見えるのだがあえて目を閉じ見ないようにする。
一瞬見えたシーターの服は俺が買ってきたものになっていた気がしたからだ。
後ろで扉が閉まる音が聞こえる。その後、そっと手が離れていった。見ても良い合図だと思い目を開ける。
するとそこにはやはり俺が買ってきた服に着替えているシーターの姿があった。
黒いワンピースにより純白の髪が映え、落ち着きのある黒色の服から大人の女性という雰囲気を醸し出している。これを手に取っていたシーターのファッションセンスは高いと言わざる終えない。
そう断言できるほど似合っており、言葉を失った。
「どう・・・ですか?」
「か、かわいい」
考えるより先に口が動いていた。惚れてしまうのはダメなのに意識してしまう。
この体の年齢はともかく精神年齢的に年の差が大きすぎる。
「あ、ありがとうございます」
頬を赤らめてそう言うシーターにまたもやドキッとしてしまう。
「よ、喜んでもらえて良かったよ。それじゃあ僕は部屋に戻るから」
俺はとっさにその場から離れることしかできなかった。
◆
部屋に取り残されたシーターはおもむろにベッドに寝転び丸くなった。
「かわいいって言われた・・・・・・」
その嬉しさの余韻に浸っていた。
◆
夕食時。当然のように皆が集まってくるが全員の視線の先にはシーターがいた。
シーターが着替えていることに気づいたのである。そもそもシーターの服ってこれまで明るい色のものが多く、黒色なんて見たことがなかったから余計に気づかれやすかったのかもしれない。
というか何故か時々こちらにまで視線が飛んできている。ちなみに俺は着替えていないから違う理由だろう。
そう思ってると女性陣がシーターを取り囲みコソコソと話し始めた。
少し経ち今度はこちらに来た。
「やるわね」
「やるじゃない」
「やったね」
イリーさん、レイシーさん、イーリアちゃんの順にそう言われた。
3人ともなんの話をしているんだ?そして、何故シーターの顔が真っ赤になっているんだ?
これはシーターから何か聞いたのか?まあ、着替えているのを見て集まっていたからそういうことなのだろうと察した。となると前二つは褒め言葉だがイーリアちゃんのはどう捉えたら良いんだ?
「よくやった」
何故かガイズドさんまで乗ってきた。何のことかわかっているのか?
「あ、ありがとうございます」
とりあえずそう返した。
そうしないとこの取り囲まれている状態を打開できなかったからだ。
結局寝る直前までその話で持ちきりであり、すごく居づらかった。
◆
翌日。今日もガイズドさんについて森に来ている。
魔物については俺に任せてもらっている。理由はコマンドのレベルの上げ方を調べるためだ。
それと剣の調子を確かめることもかねている。多分だが認められなかった場合何かしらの影響で使えなくなるのだろう。昨日一度使ったため若干不安はあったが、まだ使うことができた。切れ味もまだまだ抜群だ。
◆
相変わらずその日もコマンドのレベルが上がることはなく終わった。
そして、帰る頃にはオレンジ色の光が辺りを照らしていた。
その日は何事もなく終わるのだと思っていた。
それは深夜になった頃にそれはおこった。
◆
「この大陸に住む者に告ぐ。魔王をお迎えするためこの大陸は魔族が占拠させてもらう。手始めに辺境の村だ」
突如として響いたその声で目が覚める。寝起きの頭だったがここがその辺境の村に当たるのではないかと思いあたる。部屋の片隅に立て掛けていた剣を取り、外に出る。
「起きたか?」
ガイズドさんも出ていた。
「はい。あの言葉は・・・・・・」
「本当だろうな。何百年も前になるがこの大陸には魔族が住んでいたと言われている。取り返しに来たと考えれば」
ドゴーーン
ガイズドさんの声を遮るように隕石が落ちたかのような音が響いた。
「どうやらここにも来たようだな。お前は」
「何が起こってるの?」
次はイリーさんがガイズドさんの言葉を遮った。
と同時に全員が出てきた。
「早く家に帰れ!」
ガイズドさんがそう言うとその雰囲気からか素直に帰っていった。
「レイ君も」
「僕は大丈夫ですよ」
「ダメだ」
そう言われたがもう遅かった。魔族がこちらに飛んできて目の前に降りてきた。
「お前がここで一番強いな?お前を潰せばこの村は楽勝だな」
その言葉にガイズドさんが一歩前に出る。
「お前じゃない」
そう言いながらその魔族は魔法を放つ。
「ラザード流 二 降龍」
この技はシンプルに縦に切る技だ。しかし、あらゆる物を切るとして教えられた技だ。
ラザード流の技は気による遠隔攻撃もできるためその対策として産み出された技らしい。
同じ流派内にその対抗策があることに驚いたものだ。
気に対応できるのなら魔法もいけるだろうとやってみたら出来た。
出来なくても奥の手があったのだが・・・・・・
こうして俺が戦わなければならない感じになり、剣を構えるのだった。
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