第3話久しぶりの会話

あまりの可愛さに見とれてしまう俺。

ダメだ。このままではロリコンだと思われてしまう。

体は十歳でも中身は約50歳。

自分にそう言い聞かせなんとか平静を装う。

……………

何て話しかけるのが正解なんだろう。

いきなり名前を聞くのも違うし、かと言って他に言葉が出てこない。


そういえば俺、人と話すの久しぶりだ。

最後に話したのは神様は除外だとして、魔王かな。

いや、魔王は魔族なので人とは言えないか。

となると最後に話したのは……………途中で泊まった宿屋の女将だったか。

それも交わした言葉は二、三個位。

そういうのを除くと剣の師匠であるアッシュになる。


「……………えっと、ありがとうございます」

困っていたところ女の子の方から話しかけてくれた。

「どう致しまして。怪我は無い?」

「はい、大丈夫です」

意外とすんなり言葉が出てきたと思えばまた何と話せば良いか分からなくなる。

少しの間沈黙が流れる。

「……………あのこの後予定はありますか?」

「無いよ。この辺りをさまよってただけだから」

「では、私が住んでる村に来ませんか?」

これはラッキーだ。

これで村に行くことが出来る。

人助けをしたら返ってくるもんだね。


こうして村に向かう事になった俺達はその道中で色々話すことになる。


「改めてありがとうございました。私はシーター=サイリスといいます」

「全然良いよ。町か村を探す手間が省けたしね。俺は……………」

そういえばこの世界での名前を考えてなかった。

地球にいたときの名前だと不自然になるので却下。

ケルバイアスにいたときは名乗ったことがないので論外。

どうしようか。

こんな状況中々無いから流石に参考になるものは……………

そういえば何処かの名探偵は近くの本からとって名乗ってたっけ。

この場に本がないので参考には出来ないけど。

どうしようか。

全く思い浮かばない。

ここはあれを使おう。

「俺は記憶喪失みたいで言葉とかは分かるんだけど名前とかは覚えてないんだ」

俺にしてはしっかり嘘をつけたのではないだろうか。

「そうだったんですね。思い出せると良いですね」

そう言ってシーターは笑いかけてくる。

それを見た俺の心は罪悪感というものが先程のしっかりとした嘘をつけた喜びを塗り消すと同時に純粋というのも恐いものだと思うのであった。

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