第2話探索

俺が目を覚ますとそこは小さな小屋の中だった。

小屋の中はシンプルで俺が寝ていたベッドと一人用の机しかない。


ちなみに今の俺の体は十歳位だ。

持ち物は小屋に置いてあった二、三日分の保存食、三着の服が入ったリュックと何の変哲も無い鉄製の剣のみ。

なんか、もう少し欲しい。

この世界の説明とかこのあたりの地図とか。

これだとどこかのゲームの勇者と同じじゃないか。

魔王を倒せと言うのが王様か神様かの違いはあるけど。

いや、あのゲームの方が情報が多かったと思う。

情報って大事だと思うんだよね。

とりあえず一旦小屋の外に出てみることにした。


久しぶりに浴びたように感じる日の光に思わず目を細める。

まだ太陽が昇りきってない所を見るにまだ朝と呼べる時間帯だろう。

周りを見渡せば背の高い木々が生えている。

まあ、十歳の体なので高く感じるだけなのかもしれない。


近くに村か町がないかともう一度よく辺りを見てみるがそれらしきものは見つからない。

というよりも周りの木々が邪魔であまり遠くまで見渡せない。

荷物はもう持っているのですぐにここを出ることは出来る。

しかし、当てもなく彷徨ったところでどこかでのたれ死ぬだけだ。

かと言って小屋にいても食糧が二、三日分しか無い。


少し考えた後今すぐにここを出ることにする。

やはり、時間的にここを出るならすぐにしたほうが良いと考えたからだ。

まだこの世界の情報が魔王がいるということしか無いのがとても不安だ。


数時間後。

ある程度歩いてはいるが村や町の気配は無い。

太陽はもうほぼ真上にあるため昼位なのだろう。

この道中襲われる事は無かったのでこの森は安全ではあるのだろう。

運が良かっただけなのかもしれないが……………

そういえば、今の強さが分からないな。

試しに技を一個撃ってみようかな。

幸いここには木という無数の的があるので試し斬りしよう。

「ラザード流 三 突龍」

この技は相手が剣の間合いの外にいても当てられる技。

名の通り剣で突くのだがその後龍の頭を模した気が一直線上に放たれる。

気というのは体中に溢れている力の源。

人間はそれを気づかない内に使っているが、それを意識して最高効率で使うのが技で用いる気だ。

イメージとしてはゲームの攻撃のエフェクトに近い。


それを当てた木はバキッという音をたてながら倒れてきそうになる。

しかし、ここは森であるため他の木々に遮られて完全に倒れる事はなかった。

ここまで考慮してなかったので一瞬ひやりとしたのは内緒だ。

中身約五十歳でそこまで考え至らなかったのが恥ずかしい。


それからまたしばらく歩き、日の光が赤くなってきて夕方になっていることを伝えてくる。

今日はもう野宿になりそうだと野宿出来る場所を探し始めたとき、

「きゃーー」

女性の悲鳴が前方から聞こえた。

人を見つければ近くの村や町の位置を知ることが出来るし、何より放っておけない。

もし、これが命の危機だった場合、見殺しにしたことになる。

そう思い立つ頃には自然と体が動いていた。



走った先には馬車と男五人組がいた。

五人組は服装などから盗賊のように見える。

いや、人を見た目で判断してはいけないか。

先入観があるのかもしれない。

さっきの悲鳴は明らかに女性の声だったので一応気配を消して男達に近づく。


「思いのほかいい女が手に入ったな」

「そうだな」

「それはそうと速くここから離れねぇか?」

「こんな森に誰が来るんだよ?」

「魔物が出ねぇから来たとしても村人だろ」

「違いねぇ」


どうやらこの男達は人攫いらしい。

うん、見た目通りだな。

まあ、女性の悲鳴、男の集団、馬車の組み合わせでなんとなく想像していたけど。

とりあえず気絶させとこうか。

技を使うか迷ったが少しミスれば気絶どころではなくなるので鞘付の剣で打撃を与えることにする。


まず、一人目は気配を消したままジャンプし背後から首に一撃。

二人目もそれに気づく前に同じように首に一撃。

三人目以降はさすがに間に合わず気づかれてしまう。

ただこれは想定内だ。

色々な大声をあげながら攻撃してくる三人。

その攻撃のどれもが単調で容易に見切る事が出来る。

カウンターなども織り交ぜつつ男達を気絶させることに成功した。


一仕事終えた達成感を感じたが、それはまだ早いと気を引き締め直す。

そして馬車の中に入る。

その中にはさっきの男達の仲間はいないようだった。

いたのは先程の悲鳴の主出あろう少女。

年は今の俺と同じくらい。

両手両足を縛られたうえに猿轡をかまされている。

急いで拘束を解除してあげる。

そうして顔を見たのだが……………

純白と言えるような真っ白な髪を肩までのばし、目は少し大きめで垂れ目、鼻はシュッとしてている顔立ちが整った美少女だった。

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