最強剣士~コマンドで魔法を使う~
空里
第1話転生
見覚えのある白い空間。
俺がここに来るのは二度目だ。
そして、今二度目の人生の転機を迎えている。
進学?就職?転職?
全て違う。
俺の転機とは転生だ。
それも二度目の。
軽くこれまでの経緯を語らせて貰おう。
俺が初めに生まれたのは日本という国。
地球にあるその国は平和だった。
そこで普通の人生を送っていた。
よく言えば安定した、悪く言えば平凡な人生だった。
それが終わりを告げたのは突然の事だった。
会社でも中堅位になった頃、急な出張に行く事になる。
本当に急だったため夜行バスを利用することになるのだが、ちょうど乗ったバスが事故を起こし俺は死んだ。
そして初めて俺が今いる場所に来ることになる。
そこにいたのは地球の神を名のる老人。
整えられ、立派な白いひげを生やし人の良さそうな笑顔を向けるその老人は悪人には見えず取りあえず話を聞くことになった。
その内容は今でも覚えている。
簡潔にすると、
1.君は死んだ。
2.それは手違いだった。
3.そのお詫びに願いを一つ叶える。
こんな感じだ。
俺は意外にもあっさりその事を受け入れ願いを考える。
そこで思い浮かんだのが異世界転生だ。
それを地球の神に伝えると、それなら二回転生する権利を与えると言われた。
なぜ一回ではないのか、それは転生者が欲しいという異世界が二つあったからに他ならない。
会社の求人みたいだと思いつつアニメ、ラノベ大好きな俺にとってはご褒美にも感じられる内容だった。
それを承諾し、二つの世界のどちらから行くかを決めるため依頼の内容を確認する。
世界名:ケルバイアス
依頼内容:魔王を倒す
報酬:剣術の指導者(前払い)
依頼達成後:地球の神の元に戻される(即時)
世界名:ラザイール
依頼内容:魔王を倒す
報酬:この世界に住む権利
依頼達成後:この世界に住むか地球の神の元に戻るか選べる。
こんな感じだった。
やっぱり異世界といえば魔王なのね。
誰でもそう思う内容だと思う。
一目見た時点で順番が決まった。
そうして転生した世界はケルバイアス。
目が覚めるとベッドで寝ていた。
体を確認すると5歳くらいの体になっていた。
そして、話がついていたみたいでドアがノックされ入っていたのは俺の剣術の指導者になる人物だった。
名前はアッシュ=ベラーズ。
白髪の50代の男性だがその体は衰えを感じさせないほど引き締まっている。
神が用意してくれた指導者なので本当に強かった。
その世界の剣術の流派を全てマスターしておりこれなら魔王を倒せるんじゃ無いの?
って思うほどだった。
10年間その人との二人暮らしで食事、睡眠以外はほぼ剣術の指導だった。
その人から流派を全て教わり結果的に全てマスター出来た。
最後に手合わせすることになったのだが、同じ技のぶつかり合いで結局引き分けになった。
周りは本当に凄いことになっていたけど。
森林の中でやっていたのだが、本当に森林だったのかと思うほど周りの木々は吹き飛んで無くなってしまう。
地面は至る所にクレーターができている。
そんな状態だった。
それで認められ魔王討伐の旅に出ることになる。
しかし、魔王討伐を果たすとこの世界にはいられなくなるのが分かっていたため極力人と関わらないように旅を続け魔王の元にたどり着く。
そこでアッシュではその魔王を倒すことが出来ない理由が分かった。
この魔王は相手の年齢が高いほど強くなるのだ。
それだけなら良いのだが元が相当強いのだ。
だからこそ転生者が必要だったのだろう。
この情報は僕が若くて魔王が油断していたために聞き出せたものだ。
魔王は自分の弱点が若い人なのは知っていた。
しかし、そんな若い人が自分を倒せる実力を持っているはずがないと思っていたのだ。
まあ、普通ならそうかもしれないが俺は転生者。
戦闘は次第に激しくなっていき一日が経とうとしたときその戦闘は終わった。
結果は相打ち。
どちらもが同時に致命傷を受け魔王はそのまま死に、俺は今地球の神の所に戻ってきたところだ。
こうなることが分かってなければ相打ちなんてしたくなかったけどね。
いや、分かっていてもしたくは無かった。
ただ、あれ以上続けていれば明らかに不利になるのはこちら側だった。
なのでしょうがなく相打ちにしたのだ。
と、ここまで話せば大分状況が分かったかな?
後は地球の神が現れてラザイールに転生するはずだ。
そう考えていると地球の神は見知らぬ老婆を連れてやってきた。
白髪で顔にはいくつもしわがある。
背中も少し丸まっている。
「えっと、どちら様?」
「世話になったね。私はケルバイアスの神じゃ」
あれ?何でケルバイアスの神が来たの?
「急ですまんのぉ。こいつが会わせろというので連れて来たのじゃ」
俺の疑問を地球の神が察し答えてくれる。
「改めてありがとうね。あの魔王は本当に厄介だったからねぇ。どうしても転生者に頼らざるおえなかったんだ。」
「いえ、俺も報酬は貰いましたから」
「万が一に備えて魔王を倒したらここに戻るようにしといたのも正解だったねぇ。あそこで死んでいたら二回目の転生は出来なかったかもしれないからねぇ」
少しドヤ顔しているところを見る限り別に魔王との戦闘中に死ぬと転生できないのだろう。
相打ちの場合は微妙なのでどうかは分からないが依頼達成後地球の神の元に戻るようになっていたため無事だったと考えても良いだろう。
「ありがとうございます」
「いや、お礼を言うのはこっちの方だよ。あんたがあまり人と関わらなかったおかげで後処理が楽に終わったからねぇ。ああ、その事で話があるんだよ」
「なんでしょう?」
雰囲気的に悪いことではないのだろうけど何の話か見当がつかない。
「思ったより後処理に力を使わなくて良かったからねぇ。その余った力でお前さんに力を授けようと思うてな」
「どのような?」
「それを決めるのはお前さんじゃ」
「そうじゃ。この婆さんが「誰が婆さんだって?」こんなことをすることはそうそうないから受け取った方が良いぞ」
途中で地球の神がケルバイアスの神の地雷を踏んだのは分かった。
俺も踏まないように気をつけよう。
といっても力か。
そういえば魔法を一切使ってなかったな。
「魔法はどうですか?」
「そんなもので良いなら出来るぞ。なんならお前さんの脳内のイメージ通りの魔法にしてやろう」
「ありがとうございます」
「良いんだよ。こっちが助かったんだからね。相応の報酬を出すよ」
なるほど、人と関わらなくて良かったな。
おかげで来世は魔法が楽しめそうだ。
「じゃあこれが最後の転生になるじゃろう。悔いの残らぬようにな」
こうして俺はラザイールに転生するのだった。
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