第8話 姉妹喧嘩
夕食を食べ終わると若菜はお風呂に入り始め、玲奈は食べ過ぎた分運動しないとまずいかなと言いリビングで運動し始めた。
残された遥斗と葉月で片づけを始めた。
遥斗が洗った食器を葉月が食器を拭き進めていく。
半分くらい洗い終わったところで、遥斗は疑問を投げかけた
「この家の食器って、樹脂製か木製でグラスとか陶器はないんだな」
「え~と、それは……、グラスとか陶器だと私が割ってしまうからで……」
葉月が食器を拭く手をとめて、恥ずかしそうに下を向いた。
「わたしって結構ドジで、食器割る以外にも、料理を作るときも料理酒とお酢を間違えたり、大さじと小さじ間違えたりして、悲惨な料理になることが多くて、だからあんまり料理してなかったんです」
「そうなんだ」
ドジで不器用。丁寧な心理描写と伏線が緻密に張り巡らされた小説を書く葉月のイメージとはかけ離れたものだった
「まあ、人間得手不得手があるからな。それに、ちょっとくらい欠点がある方が親しみやすくて良いよ」
「遥斗さんって、優しい」
葉月は顔を少し傾けて遥斗の肩にのせた。
先ほどの脱衣所でのこともあって、大人しい顔で葉月は意外と積極的に迫ってくる。
「ちょっと、葉月!抜け駆けはなしって言ってるでしょ!」
玲奈がスクワットをしながら、葉月に鋭い視線を向けた。
「だったら、玲奈姉ちゃんもお皿洗い手伝えばいいじゃん!」
「私はモデルよ。洗剤で手が荒れたらどうするの?」
「ゴム手袋すればいいじゃん!」
遥斗は葉月と玲奈の姉妹喧嘩に呆れながらも、つい二人のやり取りに笑みがこぼれてしまう
夕ご飯の片付けが終わりソファに腰掛けた時、お風呂から上がった若菜がリビングに姿を現した。
遥斗がいるのを知っているにもかかわらず、若菜が身に付けているのは黒のスポーツブラと揃いのショーツだけだ。
「ちょっと、若菜。その格好は!?」
「いつも風呂上りはこの格好だよ。やっぱり、遥兄ぃも男なんだね。気になっちゃう?」
恥ずかしがる遥斗をおちょくるかのように、若菜は遥斗の目の前で様々なポーズをとってをとり誘惑し始めた。
興味がないと言えば嘘になる。
遥斗は顔を背けながらも、若菜の滑らかな肌と揺れる胸元に目を奪われ、思わず息を呑んだ。
鍛え抜かれたたくましい体に、豊満な胸とふっくらしたお尻。
それに母親譲りのきれいな肌。
すべてが魅力的で、理性を保つのも時間の問題だった。
「ちょっと、若菜!からかうのもいい加減にして!」
「色仕掛けは禁止だよ」
「そんなルールいつ決めた?」
「たった今よ!」
ストップをかけた玲奈と葉月に、若菜が反論して姉妹喧嘩がまた勃発した。
居心地が悪くなった遥斗は、先にお風呂いただくねと言いリビングから逃げ出した。
お風呂から上がりと準備されてあったピンク色のパジャマに着替え、リビングに戻ると玲奈が近づいてきた。
「似合ってるよ」
玲奈は遥斗の胸を撫でまわし、ブラジャーを点けていることを確認した。
「ブラジャーって、夜も付けるんですか?」
「当たり前よ。付けないと、胸が崩れるでしょ」
「崩れる胸ないんですけど」
「意識の問題よ。24時間、自分は女って意識してないとボロが出るでしょ。じゃ、次は私がお風呂入るね」
遥斗の背中をポンと叩くと、玲奈はお風呂場へと向かっていった。
◇ ◇ ◇
10時半、全員お風呂に入り終わった後、リビングでは再び三姉妹の戦いが勃発していた。
「遥斗は、私と寝るの!スキンケアのやり方とかコーデの基本とか教えなきゃいけないこといっぱいあるんだから」
「いいや、寝るのはわたし!本のこと、夜通し語明かすんだから」
「アタシだって、新しい寝技の研究につきあってもらうんだから」
遥斗と一緒に寝るのが誰かで揉めている。
遥斗がどこで寝たらいいかを葉月に尋ねたのが、事の発端だった。
「美和さん、お母さんはどこで寝てたの?書斎に布団敷いてた?」
「お母さん、日替わりで3人のベッドで寝てたよ。遥斗さんも、そうしよう」
「一緒に寝るの?いいの?」
「うん。姉妹なんだから、気にしないで」
葉月は遥斗の手を引き自分の部屋に連れ込もうとすると、他の二人から待ったがかかった。
「ちょっと、葉月、勝手に決めないでよ」
「そうよ、今日一緒に寝るのは、葉月姉ちゃんじゃなくてアタシよ」
3人のにらみ合う視線がぶつかり、姉妹喧嘩が始まった。
嫌悪な雰囲気のリビングを抜け出した遥斗は、お風呂掃除をしながら喧嘩が終わるのを待つことにした。
洗剤をつけたスポンジで浴槽を磨いていると、おもわずため息と独り言が漏れた。
「思ってたのとちょっと違う」
顔合わせの時に三姉妹とは好感触だとは思っていたが、思ってた以上に三姉妹は遥斗に惚れていた。
ハーレムと言えばハーレムだが、誰か一人を選ぶということは残り二人を敵に回すことになる。
4人での共同生活はまだしばらく続きそうだし、平和主義者の遥斗はなるべく波風を立てたくない。
お風呂掃除が終わり、そろそろ喧嘩は落ち着いていることを期待してリビングに戻ると、緊迫した雰囲気が漂っていた。
玲奈が二人の妹に言い聞かせるように、冷静な口調で話しかけている。
「いい?誰が勝っても恨みっこなしよ。じゃんけん1回勝負ね」
「うん」
どうやら遥斗と誰が寝るかについて話し合っても決まらずに、じゃんけんで決めることになったようだ。
「せ~の、じゃんけんポン!」
玲奈はパーを出した。一方、葉月と若菜はグ―だ。
一瞬の沈黙の後、玲奈が雄たけびをあげる。
「やったー!」
悔しがる葉月と若菜に見せつけるかのように、玲奈が遥斗に抱きついた。
「さあ遥斗、一緒に寝よ!」
2位争いをしている葉月と若菜をリビングに残し、太陽のように眩しい笑顔を浮かべる玲奈に手を引かれ玲奈の部屋に向かった。
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