第10話 話の続き

不破さんと別れて教室へと戻った。


戻るのが遅かった俺を不思議に持った八浪ゆうじんがいろいろと質問をしてきたが、なあなあしてに躱して午後の授業を受ける。


授業を受けている間、俺は砂を掃除したときのことを思い出していた。


いや全く素晴らしい連携だった...お互い初対面とは思えない一体感だった...。


やはり不破さんも、「日常生活を超能力で便利にしたい」とか考えたりしてたんだろうか。


なんてことをボーっと考えながら授業を受けていたら、放課後になった。


俺は再び空き教室へと向かうべく、荷物を片付ける。


すると八浪が声をかけてきた。


「おーいかい!良かったら放課後カラオケ行かねー?」


「悪いけど放課後はちょっと用事があるんだ。また誘ってくれ。」


俺が遊びの誘いを断ると、八浪は唇を尖らせて不満を漏らす。


「なんだよー、昼休み終わってからもずっとボーっとしてるしよー。あっ...もしや...」


八浪は何かに気づいたようで、ニヤニヤ笑いながら言う。


「お前も不破さんを見ちゃったんだな?そうだろー綺麗だったろー?昼休みに見かけて一目惚れちゃったんだろー?だから帰ってくんの遅かったし授業中もボーっとしてたんだろー?「放課後に告っちゃおう!」みたいなこと考えてんだろー?俺、ついてっちゃおうかなー?」


ちげーよついてくんな。」


「恥ずかしがんなって!ちゃんとフラれるとこは見届けてやるから!」


フラれる前提かい...まぁそうだろうけど...。


まずいな...このまま八浪に絡まれると長い...不破さんを待たせてしまうし、最悪八浪が空き教室までついてきそうだ。


どうしようか迷っていると、耳元で突然、美しい声が囁く。


「図書室の隣、資料室まで来なさい。を開けておくわ。」


不破さんだ。どうやら空き教室から俺の耳元に小さなを開け、そこに向かってしゃべっているようだ。


凄いな、ワープは応用すれば即席のトランシーバーにもなるのか。


突然聞こえた声に少しビクッとしながらも、怪しまれないように何とか平静を保つ。


「分かりました」


と、八浪に聞こえないように応じる。八浪の方を向き


「違うんだって、資料室に用があるだけだ。時間があったらカラオケにも顔出すから、さっさと帰れよ。」


と言い放ち、そのまま急いで教室を出る。


「頑張って来いよー!!結果は絶対聞かせろよなー!!」


八浪は勘違いしたまま、俺に声をかけた。無視して資料室へ向かう。


歩きながら時々後ろを振り返ると、慌てて物陰に隠れる人間が、八浪を含め2,3人見えた。


八浪との会話を、何人かのクラスメイトに聞かれたようだ。出歯亀どもめ...。足早に資料室へ向かう。


資料室に入ると正面に、不破さんのが現れた。


ドアを閉めて、廊下から資料室の様子が見えないようにし、急いでへ飛び込む。


を抜けると、正面に不破さんが机の上に足を組んで座っていた。


不破さんはからかうように笑って言う。


「破廉恥な友人がいるのね。」


「助かりました、このままだと友人がついてきそうだったんで。」


「私の”声かけ”もよかったでしょう?あなたがビクッとした所、中々面白かったわ。」


どうやらから口だけでなく目も繋げていたようだ。


「声を上げなかっただけでも褒めてほしいですね。」


そう言って俺は入ってきたが消えていくのを眺める。


八浪達は今頃、資料室にいるはずの俺が居ないのに気付いて困惑しているだろう。


明日どうやって言い訳しようかな...。


「さて」と言って不破さんは机から降り、俺の方に向き直る。


「話の続きをしましょうか。」








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